色のエッセイ №1 「今こそカラフルに」2012年02月02日


この冬ほど、春の待たれる年はありませんね。
春を呼び寄せたくて、一足先にブログの衣替え。
春らしくない? 
私は秋の色が好きなもので……。カラーセラピストにも、春夏秋冬の色の中では、迷わず「秋色です!」と診断されました。
「北欧モダン」という名のこのデザイン、春の息吹きを感じませんか。

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   今こそカラフルに

 
 私の母は、スープの冷めない距離に住んでいる。昨年の春、米寿を迎えた。
 趣味は編み物。ピンク、藤色、空色、淡いグリーン、ラメの混じったベージュ……。黒や茶色のような地味な色は好まない。
 母の娘時代は、おしゃれどころか、地味な着物をほどいてモンペを作って履いていたのである。戦争一色だった。黒い布を電灯にかぶせたように、世の中は暗く覆われていた。
 そのころを取り戻すかのように、今こそ母は、おしゃれを楽しんでいるのだ。

 最近、私はジェルネイルという爪のおしゃれを始めた。ラメやクリスタルなどを取り入れて、マニキュアより華やかで長持ちする。ごつい指を人目にさらすのが嫌だったが、あまり気にならなくなった。
 きれいでしょ、と母に見せると、
「私もやってもらおうかしら」と言いだした。が、すぐに「でも、こんなおばあさんじゃねえ……」と撤回する。
 翌日も同じ会話を繰り返した。本当は試してみたいのだろう。
 思い切って母をネイリストのところへ連れていった。あまり派手なのは恥ずかしい、と言うので、桜貝のようなピンク色に、小花をあしらってもらった。
 数日たってから、反響はいかが?と聞いてみた。

「だれも気がついてくれない。気づいても、こんなおばあさんのしわくちゃの手なのに……って思われてるのかも」
「だからこそ明るい色を差して、きれいにしたらいいのよ」
 それは、母への気休めではなく、老いへ向かう私自身の気持ちでもある。
「でもね、編み物してると、楽しいわ」
 ちょうど、えんじ色のカーディガンを編んでいる。指先のリズミカルな動きでネイルがきらめき、ピンクとえんじ、二つの同系色の色合いがとてもきれいだという。
 だれかに見せるためではなく、自分が楽しめればそれが一番。色の消えた若いころを埋め合わせるように、母の人生のフィナーレを、今年もカラフルに彩ってあげようと思った。

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今月13日、母は89歳の誕生日を迎えます。

それではここで、母のネイルをこっそり初公開……!
(シールの上でクリックしてください)
母のネイル



エッセイクラスin銀座「文章術のセミナー」のお知らせ2012年02月03日


先月の「ブログの書き方」セミナーで、現代表記における漢字の書き方を説明したら、受講者の皆さんに「それは知らなった。ためになった」と好評でした。
ほかにも、カギかっこの使い方、句読点の打ち方……などなど。
皆さん、ちゃんと書けている自信がありますか。

2月、5月の銀座デンマーク・ザ・ロイヤルカフェのエッセイクラスでは、エッセイやブログの文章をテキストにして、現代日本語の基本的なルールをわかりやすく解説していきます。いわば、文章術のセミナーです。
クラスの後は、とっておきのおいしいランチをご一緒しながら、おしゃべりタイムを楽しみましょう。

★日時:2012年2月28日(火)10:10~11:45
    2012年5月8日(火)10:10~11:45
     どちらか1回だけでも、2回でも、ご都合に合わせてどうぞ。
★場所:銀座三越1階 デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ
★参加費:4000円(教材費・ランチ代を含む)
★定員は7名です。
★お申し込みの締め切りは、各回の2週間前
   2月14日(火)、4月24日(火)とさせていただきます。
★詳細・お申込みは   hitomi3kawasaki@gmail.com まで。

文は人なり。
文章を磨けば、ブランディングの表現力も高まります。
ご興味のある方、書いたことがないという方ももちろん、ぜひご参加ください。
お待ちしています。



モトのエッセイ№1「息子の手をとって」2012年02月07日

  息子の手をとって

 わが家の長男モトは、今年25歳。3年前から公民館の中にある喫茶室で働き始めた。障害者が働く職場である。彼は、大相撲とスーパーマリオとサザンオールスターズが大好きな、明るい自閉症者なのだ。
 お金の計算ができること、家では毎日欠かさず食器洗いや掃除の手伝いをしていることが決め手となって、おおぜいの希望者の中から採用してもらった。
 予想どおり、レジの扱いもすぐ覚え、お金の計算も正確だという。でも、人との会話がうまくできないので、接客は苦手。最初のころ、コーヒーをトレイに載せてお客さんのところまで運び、テーブルに置かずに手渡ししようとして、お客さんをびっくりさせたこともある。
 だから、見知らぬお客さんに応対するレジ係より、食器洗いをやりたがる。自分だけの世界に浸れるからだ。ていねいな仕事ぶりは、「皿洗いの達人」と異名をとるほどになった。
 ある晩のこと、お風呂上がりの息子が、「しもやけか?」と、自分の手を見ている。外遊びをする子どもじゃあるまいし、平気平気、とそのときは取り合わなかった。
 翌日、お店のチーフから電話があった。
「手が痒いと言うのですが、ゴム手袋をしてもらいましょうか」
 そこでハッと気がついた。洗い物からくる「主婦湿疹」ではないだろうか。
 メガネをかけて、息子の手をとってよく見てみる。たしかに、右手の指の関節や付け根のあたり、赤いプツプツが痒そうだ。塗り薬を少しずつすり込んでやる。
「しみる!」と息子。
♪母さんのーあかぎれ痛いー、生みーそをすり込むー♪
と、古い歌を口ずさんで、思わず苦笑い。
「モト君のーあかぎれ痛いー」だよね。
 現代の主婦は、食器洗いも洗濯もみんな機械がやってくれる。伸ばした爪にネイルアートがきらきら光り、手荒れもなくなった。息子の手は、だいぶごつくなってはきたけれど、相変わらずすべすべ。これじゃ強い洗剤には負けてしまうよね……。

 息子はがんばっているのだ。その手をさすりながら、ちょっとだけ、いとおしく思った。
モトの手

エッセイクラス in 銀座 について2012年02月12日

先日、2月3日に、
【エッセイクラスin銀座「文章術のセミナー」のお知らせ】
という記事を掲載しました。
その参加費について、訂正があります。
当初、4000円 としましたが、諸事情により、
★参加費:5000円(添削付き) とさせていただきます。
すでにお申込みくださった方々には、ご迷惑をおかけしますが、どうぞご了承ください。

ご興味をお持ちの方のために、再度ご案内します。
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2月、5月の銀座デンマーク・ザ・ロイヤルカフェのエッセイクラスでは、エッセイやブログの文章をテキストにして、現代日本語の基本的なルールをわかりやすく解説していきます。いわば、文章術のセミナーです。
クラスの後は、とっておきのおいしいランチをご一緒しながら、おしゃべりタイムを楽しみましょう。ランチはデザートが付き、セミナーの疲れも吹き飛ぶ美味しさです!
さらに、今回からの特典として、1週間以内に作品をご提出くだされば、
添削してコメントを添えてお返しいたします。

★日時:2012年2月28日(火)10:10~11:45
    2012年5月8日(火)10:10~11:45
     どちらか1回だけでも、2回でも、ご都合に合わせてどうぞ。
★場所:銀座三越1階 デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ
★参加費:5000円(教材費・ランチ代・添削料を含む)
★定員は7名です。
★お申し込みの締め切りは、各回の2週間前
   2月14日(火)、4月24日(火)とさせていただきます。
★詳細・お申込みは  hitomi3kawasaki@gmail.com まで。

文は人なり。
文章を磨けば、ブランディングの表現力も高まります。
文章の書き方にご興味のある方、書いたことがないという方ももちろん、ぜひご参加ください。
お待ちしています。



エッセイの書き方のコツ(4)「結びは大事」2012年02月15日

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友人に、こんなメールをくれる人がいます。
メッセージの最後にかならず、
「素敵な1日を!」
「楽しい週末をね!」
という言葉を書いてくれるのです。
どんなにその日の朝の星占いがワースト1でも、彼女のメールを読んだだけで、気分は上向き。本当にいい日になりそうな気がしてくる。

同じことがエッセイにも言えるのです。
文章の最後、つまり結びがとても大事です。明るく終わっていれば、読み手の読後感も明るくなって、気分がいいですね。
エッセイ仲間のある女性は、夫が難病になり、その闘病記を書き続けています。
入院して治療を受けても、病状は一進一退。恐怖すら覚える様子をつづります。
それでも最後は、

「年末に、初めて外泊許可が出て帰ってくる夫を、せめて笑顔で迎えよう」
と結んでいます。
それだけで、何の根拠もないけれど、きっと大丈夫!という気持ちになれました。
がんばって!と応援したくなりました。


先日、ある団体からコンサートのお知らせのメールが来ました。
その結びは、「未就学のお子様の入場はお断りいたします」。
また、別のところから、お食事会のお知らせも届きました。
その結びは、「セールス目的の方は固くお断りいたします」。
たしかにどちらも大切な情報として、書かないわけにはいきません。
でも、お知らせをもらった側としては、どうでしょうか。別に、連れていきたくとも小さな子どもはいないし、売り付けたい商品もありません。それでも、なんとなく冷めた気分になりはしないでしょうか。
マイナーな情報で終わらせないで、せめて最後にもう一文、
「皆様の大人の時間を優雅にお過ごしください」
「家庭も仕事も忘れて、おしゃべりの楽しいひとときをご一緒に!」
などなど、何か書いてあったらよかったのに、と思いました。


文章の最後は、大いに気を遣いましょう。

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この話の続きは、また明日。




エッセイの書き方のコツ(5)「結びは結ばない!?」2012年02月16日


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昨日に引き続き、文章の結びについて、考えてみましょう。

子どもたちの書く作文には、
「遠足はとても楽しかったです」
なんていう結びの文が、たいてい付いています。
エッセイは、いわば大人の作文。子どもの作文とは一線を画したいところです。
たとえば、紀行文。きれいな景色に感動したことや、おいしい郷土料理に舌鼓を打った話、あるいは一緒に行った仲間との珍道中……。いろいろと書いたあとで、最後に、
「とても楽しい旅行だった」と書きますか。
「忘れられない旅行になった」と結びますか。
どちらも書かなくていいのです。
楽しかったことを具体的に書いた後で、総まとめのように「楽しかった」と書くのは、よけいですね。つまり、蛇足。
忘れられないからこそ、書き残したくて、あるいはだれかに伝えたくて、そのエッセイを書いたのではありませんか。これも蛇足です。
学術論文ではないのですから、結論やまとめはいりません。
それを書かなくてとも、読み手は十分に作者の思いを感じ取ることができるはずです。
たとえば、「おみやげをたくさん抱えて帰った」と書いてあったら、楽しかったんだな、と感じられませんか。
「今でも春が来るたびに思い出す」と書いてあれば、忘れられない旅行だったことが伝わるでしょう。
まとめを書くより、余韻を残すこと。
それはつまり、読み手に文章を味わう余裕を与えること、といえるかもしれません。

書いた後で、文章の結びをもう一度チェックしてみてください。
なくてもいいことを、わざわざ書き足していませんか。


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ボランティア初日に思う2012年02月20日

今月初め、東京・恵比寿にある「メディア・サーカス」を訪ねました。
人と人との間をつなぎ、メディアを通して社会的な活動を興していく会社で、出版関連事業も行っています。
社長の作間さんは、とてもエネルギッシュで、いつもお仕事で飛び回っているのに、穏やかな笑みを絶やさない女性。お会いして、いっぺんでファンになりました。
東日本大震災の一月後には現地石巻に出向いたとか。以来、現地の人々とつながりながら、復興支援の活動を続けています。

先週の土曜にも、彼女の関わる復興応援プロジェクトに参加させてもらい、銀座で東松島市の物産展のお手伝いをしてきました。
写真中央の銀色のパンツの男性はご存じ俳優の津川雅彦さん。その向かって左側に顔を出しているのが作間さんです。

震災復興応援プロジェクト チーム東松島と津川雅彦さん。

歩道の出店。前を行く人に声をかけます。

北風の冷たい一日でしたが、歩道の出店で、海苔や塩辛、お菓子にお酒、手作りの品などを販売しました。売り子なら得意です。
数寄屋橋の交差点で、物産展のチラシを配ったときには、北風同様、行きかう人の冷たさがちょっぴり身に沁みました。
無関心にならないで。まだまだ終わっていませんよ。

私に何ができるだろう。
あの日からずっと、それを思い続けてきました。
わずかな義援金を送って、それで終わりではなく……。
私が障害児を育てるとき、どれほどたくさんの温かい支えをいただいたことだろう。
いまこそ、必要とする人々の支えになりたいと思う。
作間さんのような行動力もなく、若者たちのように被災地でボランティアをする体力もない。
できるのは、こうして書くことだけ。言葉の力。
どうやったら生かすことができるのだろうか。

それを考えるきっかけになったボランティア初日でした。

長距離ランナーのように2012年02月23日

ふたたび、「メディア・サーカス」のお話です。
プロデューサーの飯嶋さんは、私の故郷茅ケ崎の出身と聞いて、妹のような親しみを感じました。(いや、娘のような、と言わないと失礼かな……)

彼女も交えて、いろいろな講座についての話をしていました。
私のエッセイクラスでは、互いに読み合う合評形式をとっています。自分の作品が人からどう読まれているのかが、わかってくるからです。
スピーチクラスでも同様に、自分の話す姿を録画して、客観的に自分を観察するのだそうです。上達の手段です。
スピーチも書くことも同じですか、という問いに、飯嶋さんは、こう答えました。
「種類が違いますね。短距離走と長距離走のように」
……うまい! 座布団3枚!
とは、声にこそ出しませんでしたが、なんと言いえて妙。

たしかに、作品が完成するまで、構成や言葉を何度も吟味して、時間をかけて書く作業は、見えない先のゴールを目指して、体調を整えながら、策を練り、ひたすら走っていく長距離走と似ています。
瞬発力よりも持久力、集中力よりも忍耐力が必要といえるでしょうか。

『歌おうか、モト君。』

ところでその日、私は拙著『歌おうか、モト君。』を、名刺代わりに渡してきました。
すると飯嶋さんは、さっそく10日後には会社のスタッフのブログで、本を紹介してくれたのです。
まずは読んでみてください。

http://ameblo.jp/mediacircus-staff/entry-11167892513.html

いかがでしたか。
私には最高の紹介文だと思えました。
お褒めの言葉をいただいたから、というわけではありません。
彼女は、私がこの本に込めたハートの鼓動をきちんと感じ取り、みずから共鳴し、それを言葉で表してくれた。すぐれた書き手であると同時に、すばらしい読み手でもありました。


飯嶋さんの紹介を書くのに、毎日考え続けて、何日もかかりました。
長距離ランナーというより、イソップ童話のカメのよう。てくてくとゴールを目指して歩きます。
でも、ゴールにたどり着いた達成感といったら! 
これがあるから、やめられないのです。同じですね。



モトのエッセイ№2「震災の日から」2012年02月26日


 その日は朝から頭痛がした。昼食後、少し眠ってもまだふらふらする。しつこい二日酔い……と思ったが、そうではない。恐怖が走った。
 地震だ!
 ベッドから飛び降りた。揺れはどんどん強くなる。ベランダのガラス戸を開け、サッシにつかまりながら、しゃがみこむ。木々や電線が激しく揺れている。ガラスの降り注ぐビル街、地下鉄の大災害、逃げ惑う人々……、映画で見たような映像が頭をよぎる。
「お願い、もうダメ。収まって、お願い!」
 ひとり声に出して叫んだ。
 東日本大震災の瞬間だった。
 テレビの画面には、東北地方の津波がリアルタイムで映し出される。信じられない光景。だが、これは映画ではないのだ。
 地元川崎市のニュースはほとんどなく、交通機関の「運転見合わせ」や「停電」の文字情報だけ。東北の被害に比べたら、この辺りは何でもなかったということだ。
 子どもたちは、どうしているだろう。わが家の長男は自閉症で、障害者雇用の職場に勤めている。公民館内の喫茶室で、新しくできた超高層ビルの一階にある。この程度の揺れなら、何の問題もなく営業を続けているだろう。でも、彼はパニックを起こしていないだろうか。ふだんから神経が過敏なのである。ところが、職場の電話もスタッフの携帯電話も一向につながらない。
 高校生の次男は、電車で小1時間、町田市の友人宅に遊びにいっている。彼からの連絡も気がかりで、私が自宅を離れるわけにはいかない。そのうちに長男が利用するJR南武線も動いて、なんとか帰宅できるだろう。もう少し待ってみようと思った。
 6時を回って、やっと次男から電話があった。友人の家ではなく、カラオケで遊んでいたという。親の心子知らず。地震以後ものんきに歌い続けていたらしい。
 JRが終日復旧しないと知り、ようやく車で長男を迎えに出たときは、午後7時を過ぎていた。少し走ると、信号が消えている。辺り一帯が停電しているのだ。街路灯も消えて、コンビニも真っ暗。暗闇の中、車列のライトだけが、ぞろぞろと歩いている人々を照らしだす。
 いつもなら30分もかからない距離なのに、1時間以上かかって長男の職場に到着。最新鋭のビルも真っ暗で、くろぐろと不気味にそびえ立っていた。まさかこのビルまでも停電が起きていたとは。
 ビルの玄関に入っていき、「石渡です!」と名乗ると、寄りそうような2人の人影が近づいてきた。息子と女性の店長だった。思わず3人で抱き合った。
 地震発生と同時に、息子は机の下にもぐり、震えながら店長の手を握って耐えたという。小学校のときから続けてきた避難訓練が生きたのだろう。最初の揺れの直後に全館停電となり、営業はストップ。ほかの従業員は次々と家族が迎えに来て帰っていった。日没後は懐中電灯をともし、営業用のドーナツやおにぎりを食べながら、店長と2人、ずっと私の迎えを待っていたのだった。

 地震当日から、首都圏は混乱状態に陥った。南武線の運行も見通しが立たず、計画停電があるのかないのかさえもよくわからない。息子の職場も、営業時間や勤務体制が日々変わる。さらには、彼が楽しみにしているテレビ番組もことごとく中止。かならず発売日に買っている雑誌も、予告もなく発売延期になったりした。
 自閉症者は、予期せぬ出来事が大の苦手である。カレンダーのように変更のないものを好み、予定がわかれば安心して暮らせる。それがこの異常な事態。息子の精神状態は大丈夫だろうか。
 しかも、彼は音の刺激にも過敏だというのに、テレビからは緊急地震速報、携帯からはエリアメールの音が、文字どおり四六時中鳴り響く。たえず不安と刺激にさらされ続けている。
 しかし、長男は何の不満も口にしなかった。テレビやインターネットからの情報をよく理解して、自分の生活のやむをえない変化も納得しているらしい。いつもと変わらぬ表情で過ごしていた。しかも、「節電しよう」と言っては自分から不要な電気を消し、エアコンもつけずに過ごしているのだ。見習わなくては、と思った。
 ある日、職場でこう話したという。
「被災地の人は大変だけど、僕は僕の仕事をがんばります」
 震災以降、私は日常生活の混乱に振り回され、さまざまな情報に一喜一憂していた。ところが長男は、環境の変化にも揺るがない強さをいつのまにか身につけていたのである。
 社会人となって5年目、大きく成長した長男がいた。



本日のエッセイクラスin銀座2012年02月28日


今日は、ひさしぶりに銀座のデンマーク・ザ・ロイヤルカフェでエッセイクラスを開催しました。
今回ご参加の7名の皆さんは40代が中心でしょうか。エッセイは初めてという方ばかりです。
「娘の学校の機関紙に載せるため、エッセイを書かなくてはならないのです」
「ブログを開設したので、文章を磨きたいのです」
「もやもやした毎日から抜け出したくて……」
皆さんの参加理由はさまざまでしたが、それぞれに積極的で、意欲的です。


銀座デンマーク・ザ・ロイヤルカフェで 2012/2/28


「エッセイとは、『私』が主人公のノンフィクションです」という説明に、
「今までは『子どもたち』が主人公の生活でしたけど、これからはもっと『私』を主人公にして生きてみたいわ」との声も……!
エッセイを書くことで、客観的に自分を見つめ、自分の生き方を考えます。エッセイは、前向きに生きる支えにもなるのです。

子育ては、遅かれ早かれ、やがて終わりとなる日が来ます。
「空の巣症候群」になる前に、エッセイを書きながら、「私」が主人公の人生を歩んでいく。そんなふうに思えば、これから先、年を重ねることも、ちょっと楽しく思えてきます。

セミナーの後は、席を替えて、ランチをいただきながらの女子会サロンに早変わり。
初対面の人同士でも、趣味の話や仕事の話で、それはもう花盛り!
美味しいお料理については、ぜひ、デンマーク・ザ・ロイヤルカフェのオフィシャル・ブログをご覧ください。

さて、次回は58日(火)に開催予定。
今日の皆さんも、次回までに作品を書いて参加します、と意欲満々でした。
講師の私もとても楽しみにしています。
ブログをお読みの皆さんも、ぜひご一緒しませんか。
お問い合わせは、こちらまでどうぞ。
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