今だから書けるあの頃のエッセイ(3)「銀座deデート」2012年04月04日

銀座は大好きな街です。
 何かとご縁があって、出向くことの多い街です。
 たくさんの思い出もあります。
 時効ということで、あんなこと、こんなこと、書いてみたくなりました。

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   銀座deデート

 銀座の一番昔の思い出って、何だろう。
 そう思い返してみたら、高校2年生のときの記憶がよみがえった。

 私の家は横浜で、男女共学の県立高校に通っていた。ボーイフレンドには不自由しなかったのだが、ひょんなことから、ミッションスクールの男の子たちと友達にになった。わが家は、敬虔でも熱心でもないけれどクリスチャンだったので、私もときどきは地元の教会に足を運んでいた。そこで知り合ったのである。いわば、神様のくれた出会いというわけ。
 グループで遊んでいるうちに、同学年のT君と気が合って、仲良くなった。中肉中背の、どちらかといえばかわいい感じの男の子だ。
 そして、最初のデートは、イースターのミサの後、銀座へ。彼が連れていってくれたのは、数寄屋橋交差点の不二家だった。
 ちょうどイチゴの季節、ストロベリーホットケーキと、ストロベリーパフェを注文する。大きなお皿やグラスには、あふれるほどの白いクリームと、きれいな赤いイチゴ。あざやかなコントラストが、今でも目に焼き付いている。
「子どものころ、お父さんがここに連れてきてくれて、これを食べたんだよ」
 彼のお父さんは子どものときに亡くなったという。T君の家は、母ひとり子ひとりの家庭だったのだ。
 でも彼は、明るく素直で、気取ったところも背伸びをしたところもなかった。そんな自然体の彼が、どこかまぶしく感じられた。
 そのまぶしさを持て余すようになるのに、時間はかからなかった。私だって、陰気で生意気だったわけでもないのに、なぜだろう。
 1年もたたないうちに、私から別れ話をして、さよならをした。


 あれ以来、彼とは一度も会っていない。
 いいお父さんになって、子どもを不二家に連れていっただろうか。

 わが家の次男は、ちょうどあの時の私たちと同じ年齢になっている。ガールフレンドには興味もなくご縁もなく……のしがない高校生だ。
 が、しかし、神様のいたずらは計り知れない。次男は今、T君と同じ高校に通っているのである。





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コメント

_ suzuking ― 2012/04/05 16:36

「わーーーーっ!!」と
リビングで叫んでしまいました!!

息子たちの先輩と付き合っていたなんて…。
「なんだよー」とのっそりやってきた息子に、
「出会いは大切だよ」とわけのわからない言い訳。

銀座シリーズ、次を心待ちにしています。

_ hitomi ― 2012/04/05 17:55

あの学校の生徒たちは、今も昔もちっとも変わりません。ウフフ……

_ 村上 好 ― 2014/11/15 13:37

hitomi さん

さわやかないい話です。

すばらしい青春時代を送られたんですね。
ちょっぴりうらやましい気分です。

ミッションスクールというと、キリスト教系の高校でしょうか。私の長男は10年ほど前に山手のキリスト教系の中学高校を卒業しました。

村上 好

_ hitomi ― 2014/11/15 20:11

村上さん、
息子さん、優秀だったのですね。

T君のことは、本当に懐かしいだけの話になりましたが、逢ってみたいような、がっかりされるのが心配で逢いたくないような……、思い出にしまっておいたほうがよさそうです。

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