自閉症児の母として(7):母に「もしも」は、ありません。2013年01月15日


昨年再版した著書のあとがきに、こう記しました。

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あるとき、学生さんから、こんな質問を受けました。
「石渡さんは、もう一度生まれ変わっても、またモト君のお母さんになりたいです  か」
答えに詰まりました。生まれ変わったら? そんなこと、考えたこともありません。
正直にこう言いました。
「残念ながら、生まれ変わるつもりはありません。やり直しのきかない、たった一度の人生だからこそ、今を精いっぱい生きているのではないでしょうか」
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これは、数年前に聖徳大学でお話ししたときに、受けた質問でした。
昨年12月に提出されたレポートのなかにも、同じような質問がありました。

「もしも、モト君が自閉症ではなかったら、どんなことがしたいですか」

息子は、自閉症児だからこそ、わが家にやって来た。彼が自閉症でなかったら、それはもう長男モトではありえません。
それほどまでに、あるがままの息子を、受け入れてきたのです。

自閉症は彼の一部ではなく、彼のアイデンティティーそのものです。
耳の不自由な人が、補聴器をつけたら聞き取れるようになる。
足のない人が、義足をつけたら走れるようになる。
心臓に重篤な病気を持つ子どもが、心臓移植で元気になる。
同様に、自閉症を取り除いたら、健常者になる……? いいえ、それは不可能です。

学生さんにしてみれば、他愛のない質問だったかもしれません。
でも、改めて息子の障がいを考えるきっかけになりました。
若い感性でつづられたレポートは、いつも新鮮な発見があるのです。



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