あけましておめでとうございます2014年01月02日

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

年賀状は、毎年パソコンで作ります。今年も2種類作ってみました。
差し上げなかった皆さんのために、ブログで初公開。



あて名書きだけは、ソフト全盛の世の中に逆らい、せめてものこだわりで下手な字を書いてきました。でも今年は、かなり右手の関節炎が痛んで……。
来年からはソフトのお世話になるかもしれません。

ところで、わが家のおせち。お重がかわいいでしょう。



けまして……


おめでとうございます!


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今年もよろしくお願いいたします。


エッセイの書き方のコツ(20):「爆睡」、使う? 使わない?2014年01月07日


先日、ある教室で、受講生のA子さんからこんな質問を受けました。
「エッセイを書くにあたって、造語や若者言葉を使ってもいいのでしょうか」
A子さんが気になったのは、「爆睡」という言葉。
以前、娘さんがそれを使っていたときに、「辞書には載っていない言葉だから」と注意したことがあったそうです。ところが、お仲間のエッセイの中にそれが出てきた。だれもおかしいとは言わないし、講師の私も問題視しなかった。
A子さんは、エッセイの勉強を機会に、ふだんからなるべく正しい言葉を使っていこうと思っていたところでした。疑問に感じたのも無理はありません。

じつは、この「爆睡」、私もエッセイに使ったことがあります。
(そのエッセイは2013128日にアップしていますので、よろしかったらお読みください)

次男がインフルエンザにかかったとき、特効薬を飲んで眠りについた。薬の投与によって異常行動を起こすこともあるそうで、医師に言われたとおり、仕事を休んで見守った。1時間おきに部屋をのぞいても、いつも死んだように眠っていた。結局、夜まで息子の爆睡を見守っただけだった。留守にしても大丈夫だったのに……

という文章です。
若者言葉の「爆睡」は、いかにも若い人が前後不覚に眠る感じが表れている言葉だと思います。ちょっとやそっと起こしても起きない、むさぼるような眠り。眠りの浅い私にはうらやましいほどの熟睡状態。
だから私も、高校生の眠りに対してあえて使ってみました。これが、お年寄りの眠りだったら使わなかったでしょう。

同じような言葉でここ数年使われだした「がっつり」。「がつがつ食べる」という語感に近く、食欲旺盛な若い人がたっぷり食べる状態を表現するときには、私も使うかもしれません。

つまり、使ってもいいか悪いかではなく、よく考え、意識したうえで使うことが大事ではないでしょうか。その言葉を使うことで効果が出るかどうか。それを吟味しましょう。

また、そのエッセイ自体に、文章の雰囲気に、ふさわしいかどうか。これも、大事なポイントになります。
真剣な話や、重い内容のなかに、その言葉が入ることで、違和感はないでしょうか。
大和言葉を使って花鳥風月を描写したエッセイに、カタカナの言葉を使ったら、雰囲気が壊されることもあるでしょう。

さらに、若者言葉は、はやりすたりも激しいので、そのへんも要注意。
「ルンルン気分で帰ってきました」
気持ちはわかりますが、いかにも時代遅れの感じがするのは私だけでしょうか。
かくいう私も、ついうっかり、「アベック」とか「ナウい」とか口にしては、友人や子どもたちからバカにされてしまいます。さすがにエッセイに書くことはありませんが、ふだんから気をつけていたいですね。

「なるべく正しい日本語で書きたい」というA子さんの姿勢、私も賛成です。
でも、言葉は生きています。今、正しくないものも、やがて市民権を得て、正しいといわれるようになるかもしれません。
一つの目安として、広辞苑に新たに収録されると、日本語として定着した、と見なされるようになります。
「めっちゃ」「うざい」なども収録されているのですが、若者言葉であることには変わりありません。あくまでも、目安として参考にされるといいでしょう。
最近では2008年に24万語が新収録されました。
その一例はこちらのサイトでご覧ください。

エッセイを書くためには、A子さんのように、日本語に対して、いつも敏感でいたいものですね。





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ダイアリーエッセイ:家族旅行2014年01月08日




正月休みの最後に、箱根に1泊した。
家族が5人全員そろったのは、何年ぶりだろう。
“歩くカレンダー”の長男に尋ねると、「200871920日」と、即答が返ってきた。そういえば、修善寺のリゾートホテルに出かけた覚えがある。
23人で海外に出かけたり、スキーに行ったりすることはあったが、全員集合のドライブ旅行は6年ぶりということになる。

子どもたちが小さいときには、よく家族旅行をした。
超特大のバッグに5人分の着替えを詰めて、車のトランクに放り込んでいた。スワンちゃんと呼んだおまるを積んでいったこともあったっけ。
それも遠い昔のことで、今ではそれぞれが小さな荷物をまとめ、車に乗り込む。

パソコンおたくの次男は、大型のノートパソコンまで持ち込んで、走り出さないうちから開いている。親には黙っていたが、アネキには「6日提出のレポートができていない」と打ち明けたという。
芦ノ湖が近づいてくると、「もうダメだ、降りる!」と叫んだ。山道を走っているときもパソコンをやっていたから、車酔いしたらしい。
そういえば彼は小さいころ、山中湖のホテルに着いたとたん、ロビーにすごい勢いで吐いてしまったという前科があったのだ。
湖畔で一休みすると回復した。空腹のせいもあったのだろう。早めに自覚したことで、“大事”に至らずにすんでよかった。少しはオトナになったかな。

みんなもおなかがペコペコだ。
ランチに向かった先は、昨年、私が友人と訪れた玉村豊男ミュージアムの中のイタリアン。手作りパスタもピザも、とても美味しかった。
私は彼のエッセイのファンだ。さりげない画風の絵も好きだが、文章も研ぎ澄まされている。

レストランの薪ストーブ

30
分ほど待って、5人掛けの丸テーブルに案内された。
となりには、都会では見かけない薪ストーブ。揺れる赤い炎が気持ちまで温めてくれる。
パスタとピザを5人分注文し、各自で取り分ける。空腹で、美味しくて、話す余裕はない。みな言葉少なに食べる。
「モトくん、もうちょっと向こうに寄ってくれよ」
窮屈で食べにくそうな夫のセリフに、あれ?どこかで聞いたような、と思った。
そこで、娘が気がついた。
「あら、うちと同じ並び順で座ってるね」
わが家ももっと大きな丸テーブルで、座る椅子が決まっているのだが、旅先でも、全員まったく同じ位置に座っていたのだ。モトは自宅と同じように父親にすり寄っていた。
次男誕生で5人家族になって19年。年季の入った家族になってきた証かもしれない、と思った。
あと何回、全員で旅をするのだろう。
やがて〈発展的解散〉となる日が、わが家にも来るのだろうか。



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ダイアリーエッセイ: 歩みに寄り添って2014年01月11日

9時。車に乗り込む。フロントグラスが凍っている。外気温の表示は0℃。
今年の初仕事で、横浜市金沢区の「並木エッセイの会」へ出かける。

100
歳のお誕生日を迎えたおばあさんの話や、「笑えるエピソード」というタイトルなのにじつは悲しい話や、暮れに友人からもらったカレンダーは2013年のだったという本当に笑える話などなど……。
今年もまた、バラエティに富んだ作品を、たくさん読ませてもらえそうで楽しみだ。
なかでも、ご主人を亡くされた方の作品が、少し明るくなった気がして、よかったな、と思う。

帰りは、横浜港を横目で見下ろしながら、ハンドルを握る。
雲一つない空も、遠く千葉の方まで見える海も、どちらもまったく同じ、やさしく淡いブルー。車を止めて眺めていたかった。

家に帰ると、磯子教室の生徒さんから、作品が届いていた。
体調を崩して、半年もお休みしていた男性の方だ。ようやく再開できるようになったという。
「二重のおめでとうございます!」と返信する。

年が明けて、少しずつ前に進もうとする方たちの歩みを、せかすことなく見守っていきたい。

休日出勤の長男が帰ってきた。
「今日は鏡開きだから、お汁粉を食べるよ」
自閉症の障害特性から、とても几帳面な彼は、“歩くカレンダー”の異名をとる。
年中行事を一つずつこなしていくことが、彼の生きがいでもあり、心の平安を保つよすがでもあるのだろう。
リクエストにこたえて、出来合いのつぶあんでお汁粉を作った。
2014年も、彼の歩みに寄り添っていこう。





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自閉症児の母として(19):世界にたった一つの「障がい児保育」のレポート2014年01月14日

聖徳大学のキャンパス

昨年12月半ば、千葉県松戸の聖徳大学へ行ってきました。
毎年、「障がい児保育」の講義のなかで、私の著書『歌おうか、モト君。~自閉症児とともに歩む子育てエッセイ~』をテキストとして読んでもらっているので、著者として出向き、お話をさせてもらっているのです。

最初にお話をしたとき、女子大の学生さんたちは、ほとんどがモトと同じ年でした。
それから8年、年に1回か2回通っているうちに、学生さんたちはなんと次男と同じ年齢になりました。当たり前ですね。時が流れました。

今回は、こんなにかわいらしい感想文を書いてくれました!

世界にたった一つの「ひとみさんへ」というレポート

さすがは、将来の保育士さんや幼稚園の先生です。
数人のグループで、本の中からエッセイを一つ選び、それについて読み込んで、感じたことや学んだことを書いてくれています。

今日は、私がそれに対して、改めてコメントを書いて送りました。
自閉症児のこだわりに付き合うのは大変だけれど、根気よく相手をするうちにかならず心が通うようになって、親子のきずなが生まれること。
自閉症児であろうと健常児であろうと、生まれてきた子どもはみな神様からのギフト。育てることができる幸せに変わりはないこと。
将来は、エッセイの中に登場するT先生やU先生のように、素敵な先生になってほしいこと……。

出版から8年が過ぎました。
そろそろ、二冊目……という思いが膨らんできます。






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ダイアリーエッセイ:風邪が治って、梅咲いて2014年01月22日

117日といえば阪神淡路大震災の日で、その翌日に次男が生まれている。
(これについては昨年も書いたので割愛します)
つまり、「今年は震災から19年目」といえば、翌日息子は19歳になる。

さて今年の118日の誕生日に、何をしてほしいかと問えば、
「ケーキバイキング!」と、のたもうた。
さすがはわが家の草食系次男坊である。
体の半分は砂糖でできていると自認する私、これには異存なし。財布のひもを解いて、腕を組んで連れていってやろうと思っていたその2日前の朝、喉が腫れて胃が痛んだ。
昨年はこの症状の時に、うがい薬で徹底的にうがいをして、喉から侵入するウィルスを食い止めた。が、今年は受験生がいなかったから、油断した。
翌日には喉の腫れが進んだ。とはいえ、車で出かけなくてはならず、眠くなる風邪薬はNG。栄養ドリンクでごまかして、なんとか2日間のエッセイ教室を務めた。

18日、とりあえずケーキバイキングは延期にして、次男の好みのケーキを2種類、デパ地下で買って帰った。
イチゴのショートケーキとモンブラン、もちろん、どちらもホールで。

帰宅すると、次男のリクエストのクリームシチューやスペアリブが出来上がっていた。もう一人のシェフが腕を振るっている。
マンションの4軒隣に住む母も呼んで、6人でテーブルを囲んだ。
体調に気をつけながら、でもお祝いの席だし、控えめにワインも飲んだ。ケーキも小さくカットして味わった。楽しく食べたつもりだった。

ホールのケーキ二つにろうそく立てて

それでも、敏感な長男は、何か異常を感じたのだろう。私のいつもと違う鼻声、ガサツな口調、イライラした態度……。言い訳をすれば、疲れていて、けっこうキツかったのだ。
突然彼のパニックのスイッチが入ってしまった。私が怒っていると勘違いしたらしい。私に向かって、何か大声で怒鳴って、こぶしをかざした。
その瞬間、私は胃が縮み上がった。
それも、いつものこと。せっかくのケーキを台無しにしてはもったいない。まあまあ、と長男をなだめる人、知らん顔してケーキをカットする人、皆がそれぞれ、何事もなかったように、彼のパニックをやり過ごし、その夜はお開きとなった。

夜更け過ぎ、不快感で目が覚めた。どうやら胃腸をやられたらしい。
合計3回もトイレに起きだして七転八倒。翌日からは熱も出た。
ノロウィルスかもしれない、と思った。

それから、ひたすら眠り続けた。
腹痛もなかったが食欲もなく、1合のお粥を炊いてもらって、毎食一口、二口食べる。そして、なめらかプリンを半分。あとは薄めた麦茶を口にするのみ。
市販の葛根湯入り風邪薬を呑んでは、また眠る。

もう3日になるが、高齢の母さえも、うつった様子はないので、感染力の強いノロではなかったのだろう。ほっとする。
モトの大声のせいで、体内の風邪菌が突然変異をきたしたにちがいない。

やっと今朝から普通に起きられるようになった。
まだ頭がふらふらしているが、食欲も少しずつ出てきた。
明日は湘南エッセイサロン。楽しみにしてくださっている方々の顔が浮かぶ。



昨年の暮れに、夫が門松を手作りした。
そこにさしてあった梅の小枝に、小さな花が咲いている。
1センチほどの可憐な花だけれど、香りはたしかに清楚な梅の香り。
春が待ちどおしい。


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エッセイの書き方のコツ(21):推敲は楽しい!!2014年01月28日


怒涛の2013年が去り、一段落したので、私も某エッセイ教室に通い始めました。
人さまに教えるためには、自分もまた勉強です。

さっそく縦書きで2000字のエッセイを提出します。
ありがたいことに、ふだんからブログにつづっているので、それを利用してまとめれば簡単に書ける。今回は、そんな私の手の内を公開しましょう。

エッセイのタイトルは「ジョニーの第二の人生は」としました。
ブログ読者の皆さんには、おわかりですね。昨年12月に、3回に分けて書いていた愛車の話です。
でも、初めてタイトルを目にした読み手は、だれのことかと思う。
そこがネライです。意表を突く。

次に、ブログの原稿3回分をコピーして、20字×20行の縦書きの書式に貼り付けます。もちろんパソコン上の作業。横書きが縦書きに換わります。
原則として、縦書きには漢数字を使いますから、アラビア数字ではなく、漢字に直します。10年→十年 のように。
それから、私の場合、ブログでは段落をきちんと設けずに、1行空けることで代用させています。だから、それをつめて、段落の頭を1字下げる。

と、ここまでは機械的にできますが、さて、ここからが頭をひねるところ。
字数を気にせず書いているブログと違って、2000字という規定の中に完結させなくてはならない。主題、つまり一番書きたいことを念頭に置いて、取捨選択の作業をしていきます。
ジョニーの第二の人生が、4つもの偶然が重なって決まった。これが主題。
1
つ。90歳の母にはジョニーの乗り降りがきつくなってきた。
2つ。ニュー・オデッセイが発売になる。
3つ。アフリカで車を必要としている人がいる。
この3つが、ほぼ同時に起こった。そして、アフリカの夢がついえた時、知り合いが車をほしがっていた。これが4つ目。
この4つをバランスよく盛り込みたい。ブログでは、アフリカの塩尻さんについての情報もかなり書き込みましたが、エッセイでは、破れた夢の話なので、最少限にとどめます。モロさんの説明もしかり。焦点はたった1点、ジョニーの行く末です。

さらに大事なことは、ブログには写真があるから一目瞭然。でも、エッセイは原則として、ビジュアル素材に頼ることはできない。冒頭に、ジョニーの姿かたちを描写しなくては。

こうして、2200字ぐらいに凝縮してきました。
あとは、語句を減らしたり、言い換えたりして、1字ずつでも削っていきます。うまくいけば、1字削ることで、1行分カットできることもある。内容を書き換えることなく、字数を減らすのです。
たとえば、「エイズ孤児のための施設、助産院、診療所」と3つ並んだ中から、「助産院」は割愛。また、「お手伝いさせてもらったことがある」→「お手伝いしたことがある」のように。

不思議なことに、長い習慣というものはなかなか抜けないものですね。
いえいえ、私が単なるアナログ人間だからなのか、どうしてもプリントアウトして紙面で読みたい。パソコンのディスプレイで読んだときには気づかなかった問題点が、即座に見えてきます。
この方法で、少しだけ読み手の気持ちに近づいて、わかりにくい個所を書き換えたり、同じ言い回しの重複を手直ししたりします。
そして、一晩寝かせてから読み直す。すると、さらに自分の文章が遠くなっていて、あら探しが楽にできるようになるのです。
これが推敲です。

この推敲を始めてから、今日で3日目。
そろそろ完成にしてもいいかな、と思います。もう少し詳しく書きたい部分もありますが、もうこれ以上一字一句削れない。そういう思いになったからです。
のめりこんで、楽しい時間でした。完成に近づいていく昂揚感、達成感。これこそエッセイを書く醍醐味。久しぶりに味わいました。

そういえば、ブログの文章はあまり推敲をせず、書きあげたその日にアップしてしまいます。ブログはスピードが命。紙面に表す縦書きエッセイとは別のものだ、と自分に言い訳をしていますが、読んでくださる皆さんに失礼ではなかったか、思いがけず反省もしています。

はじめに、「ブログの文章を利用すれば、簡単に書ける」と書きましたが、そこからの推敲は決して簡単ではない。それも改めて実感しました。
でも、だからこそ面白いのです。

明日、完成版「ジョニーの第二の人生は」を掲載しましょう。



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2000字エッセイ:ジョニーの第二の人生は2014年01月29日

☆昨日のお約束どおり、20字×20行の縦書きを、そのまま貼り付けてお読みいただくことにしましょう。
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  ジョニーの第二の人生は

 十年間、忠実な相棒だった私の車は、ホンダのオデッセイ。ベージュ色の七人乗りワンボックスカーで、ナンバーは7373。その名を「なみなみジョニー」と呼んだ。桑田佳祐の曲「波乗りジョニー」のパロディだ。走行距離、三万五千キロ足らず。定期点検を欠かさず、エンジンも快調。まだまだ乗り続けるつもりだった。
 ところが、最近になって、九十歳の母の足となる機会がめっきり増えた。すると、車の床が高く、乗り降りの難しさが気になりだした。そろそろ、買い替え時なのだろうか。ふと考えるようになる。
 時を同じくして、「近日、ニュー・オデッセイ誕生!」の情報を耳にする。じつは、ジョニーの前の車も、オデッセイだった。わが家は、セカンドカーも含めて全七台、ずっとホンダ車を乗り継いでいる。なぜか好きなのだ。あえて言えば、初代オデッセイが発売された時、CMにアダムス・ファミリーが登場し、長い黒髪の妖艶な母親と、車を這い回る赤ちゃんが、私のハートをとらえた。次男もまだ赤ちゃんのころで、わが家にピッタリな気がしたのである。
 そんなわけで、ニュー・オデッセイと聞いて、購入へ心の針が傾く。しかも、初のスライド式ドアで、ステップが低いとなれば、母を乗せるにはおあつらえ向きではないか。
 そこへ、さらなる偶然が舞い降りてきた。ボランティア仲間のモロさんからの情報で、アフリカのケニアで支援活動をしている日本人が、救急車代わりの車を探している、というのだ。モロさんも国際的な活動でケニアにおもむき、そこで塩尻さんと知り合った。
 彼は、一九九〇年にケニアの貧しい農村に家族ぐるみで移り住む。以来、現地の人々の支援に力を注ぎ、エイズ孤児のための施設や、診療所などを開設してきた。ところが、彼の車はすでに三十五万キロを走破。車体もボロボロで、いよいよ次の車を準備しなければならなくなったのだという。
 この話を聞いたとき、ジョニーの第二の人生が見えた気がした。新車と引き換えに引き取られていく先は、スクラップ工場ではなく、アフリカの大地。しかも、救急車となって活躍するのだ。こんなに素敵な話はない。
 この偶然は神様の仕掛けだ。わが家がオデッセイを買い替えれば、みんなが幸せになれる。セレンディピティという言葉が浮かぶ。
 すぐにモロさんに車の提供を申し出ると、塩尻さんはとても喜んでくれた。ところが、現地で受け入れ手続きをしようとする彼の前に、哀しい現実が立ちはだかった。ケニアには、八年以上たった車の持ち込みを禁止する法律があるのだそうだ。ジョニーは製造から十年になる。それでも彼は、隣国のタンザニアかウガンダでナンバー登録し、そこからケニアに持ち込むことを考えた。しかし、それもまた月々の手数料がかかる。輸送費、税金、今後の諸費用などを合わせると、莫大な資金が必要になる。塩尻さんは涙をのんで、私の申し出を断念せざるを得なかったのである。
 ジョニーがもう二歳若ければ、塩尻さんのところに行けたかもしれないのに……。アフリカは国によって様々な規制が多く、外国からの支援を難しくしていると聞く。彼がアフリカを疾走する夢は、八年規制の壁の前に消え去った。残念のひとことだった。

 しかし、神様の仕掛けには続きがあった。
「じつは、もう一人、車を探している人がいるんですよ」とモロさんが言う。
 もうひとつのジョニーの身の振り方。それは東北の被災地で活躍することだった。そして、ジョニーを譲り受けたいという人物は、岩手県陸前高田を拠点に支援活動を続けるリエさん、私もよく知っている女性だったのである。以前にも、チャリティバザーの物品を運んだり、養護施設の子どもたちの送り迎えをしたりして、ジョニーがお手伝いしたことがあるのだ。またも偶然が微笑んでいた。
 今度こそ、話はとんとん拍子で進み、ジョニーはリエさんのもとにもらわれることになった。仮設住宅の子どもたちを、遠くの学校まで送迎するのに使いたいという。
 別れの日、ガソリンスタンドで丁寧に掃除をしてもらい、ガソリンも満タンにした。
「こんなにきれいな車なら、オークションでも高く売れますよ」
 寄付すると聞いて、従業員がそう言った。そんなジョニーだからこそ、安心して提供できるのだ、と誇らしかった。
 さよなら、ジョニー。十年間、ありがとう。被災地の人々に寄り添って、第二の人生を、元気に走り抜いて!
 かくして、わが家はニュー・オデッセイを買い入れた。母の乗り降りも、少し楽になったようである。


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エッセイサロンin銀座:2月のご案内と、しばらくお休みのお知らせ2014年01月31日






以前からご案内しているエッセイサロンin銀座。
Naomi Place主催コミュニケーション・プレイスの一講座として行われてきましたが、私の個人的な事情により、2月の講座を持ちまして、しばらくお休みさせていただきます。
これまで、ご興味を持ちながらご参加いただけなかった方も、火曜日がご都合の悪かった方も、しばらくぶりの方も、ぜひ、213日木曜日、思い切ってご参加いただければと思います。

エッセイに限らず、ブログやSNSなど、どんな文章にも当てはまる日本語の基本的なルールを、わかりやすく解説いたします。

また、お書きになったエッセイがありましたら、ぜひお持ちください。
作品を皆さんで読み合いましょう。
(もちろん、手ぶらで参加されても大歓迎です)
エッセイを鑑賞しながら、女性同士の好奇心をおおいに広げて、暮らしのこと、健康のこと、子育てのこと……、語り合ってみませんか。
それもまた、生きることすべてにつながる楽しい学びのひとつとなることでしょう。

クラスの後は、とっておきのおいしいランチをご一緒しながら、もっともっとおしゃべりタイムを楽しんでいただきます。
同世代ならもちろん共通の話題で盛り上がるでしょうし、世代を超えたおしゃべりも、意外な発見があっておもしろいものですね。

★日時:2014213日(木)10401330
★場所:銀座三越1階 デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ
★参加費:6000円(教材費、およびランチ・スペシャルデザート代を含む)
★定員は8名です。残席あとわずかになりました。
★お申し込みの締め切りは、27日(金)とさせていただきます。
★お問い合わせ・お申込みは hitomi3kawasaki@gmail.com まで。
★詳細は、コミュニケーション・プレイスのサイトをご覧ください。そちらからもお申し込みいただけます。






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