エッセイの書き方のコツ(20):「爆睡」、使う? 使わない?2014年01月07日


先日、ある教室で、受講生のA子さんからこんな質問を受けました。
「エッセイを書くにあたって、造語や若者言葉を使ってもいいのでしょうか」
A子さんが気になったのは、「爆睡」という言葉。
以前、娘さんがそれを使っていたときに、「辞書には載っていない言葉だから」と注意したことがあったそうです。ところが、お仲間のエッセイの中にそれが出てきた。だれもおかしいとは言わないし、講師の私も問題視しなかった。
A子さんは、エッセイの勉強を機会に、ふだんからなるべく正しい言葉を使っていこうと思っていたところでした。疑問に感じたのも無理はありません。

じつは、この「爆睡」、私もエッセイに使ったことがあります。
(そのエッセイは2013128日にアップしていますので、よろしかったらお読みください)

次男がインフルエンザにかかったとき、特効薬を飲んで眠りについた。薬の投与によって異常行動を起こすこともあるそうで、医師に言われたとおり、仕事を休んで見守った。1時間おきに部屋をのぞいても、いつも死んだように眠っていた。結局、夜まで息子の爆睡を見守っただけだった。留守にしても大丈夫だったのに……

という文章です。
若者言葉の「爆睡」は、いかにも若い人が前後不覚に眠る感じが表れている言葉だと思います。ちょっとやそっと起こしても起きない、むさぼるような眠り。眠りの浅い私にはうらやましいほどの熟睡状態。
だから私も、高校生の眠りに対してあえて使ってみました。これが、お年寄りの眠りだったら使わなかったでしょう。

同じような言葉でここ数年使われだした「がっつり」。「がつがつ食べる」という語感に近く、食欲旺盛な若い人がたっぷり食べる状態を表現するときには、私も使うかもしれません。

つまり、使ってもいいか悪いかではなく、よく考え、意識したうえで使うことが大事ではないでしょうか。その言葉を使うことで効果が出るかどうか。それを吟味しましょう。

また、そのエッセイ自体に、文章の雰囲気に、ふさわしいかどうか。これも、大事なポイントになります。
真剣な話や、重い内容のなかに、その言葉が入ることで、違和感はないでしょうか。
大和言葉を使って花鳥風月を描写したエッセイに、カタカナの言葉を使ったら、雰囲気が壊されることもあるでしょう。

さらに、若者言葉は、はやりすたりも激しいので、そのへんも要注意。
「ルンルン気分で帰ってきました」
気持ちはわかりますが、いかにも時代遅れの感じがするのは私だけでしょうか。
かくいう私も、ついうっかり、「アベック」とか「ナウい」とか口にしては、友人や子どもたちからバカにされてしまいます。さすがにエッセイに書くことはありませんが、ふだんから気をつけていたいですね。

「なるべく正しい日本語で書きたい」というA子さんの姿勢、私も賛成です。
でも、言葉は生きています。今、正しくないものも、やがて市民権を得て、正しいといわれるようになるかもしれません。
一つの目安として、広辞苑に新たに収録されると、日本語として定着した、と見なされるようになります。
「めっちゃ」「うざい」なども収録されているのですが、若者言葉であることには変わりありません。あくまでも、目安として参考にされるといいでしょう。
最近では2008年に24万語が新収録されました。
その一例はこちらのサイトでご覧ください。

エッセイを書くためには、A子さんのように、日本語に対して、いつも敏感でいたいものですね。





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コメント

_ 村上 好 ― 2014/10/26 22:26

hitomi さん

エッセイの書き方のコツがテーマです。実に関心のある主題です。

<そのエッセイ自体に、文章の雰囲気に、ふさわしいかどうか>

なるほど、「ふさわしさ」の点検。心したいと思います。

ありがとうございます。

村上 好

_ hitomi ― 2014/11/02 20:39

村上好さん、
「ふさわしさ」の点検。
上手な表現ですね!

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