節分の夜の気がかりは2015年02月03日


いつからこんなに流行ってきちゃったんでしょうね、恵方巻き。

どうもあの食べ方が好きになれません。(お上品ぶっているのではなく、歯が悪くてそれができない負け惜しみですけど)

わが家は、1200年以上も歴史があるという豆まきを、毎年欠かしません。

自閉症の長男は、毎年恒例の行事はきちんとやりたがるのです。

今年も長男が、体に似合わない小さな声で「おにはそと……」とつぶやいては、夜の庭に向かってパラパラとまきました。

以前は、節分の夜にはあちこちから「鬼は外!」の元気な声が聞こえてきたものですが、それもなくなりましたね。まかれっぱなしの豆が問題になったりして、お寺や神社だけの行事になってきているのでしょうか。

豆をまいた後は、年の数だけ福豆を食べます。

ところが、今年は大変な事態になりました。

家族みんなで食べ始めたら、福豆が足りないのです。

毎年、5粒ずつ消費量が増える計算なのに、今年は小さな袋を買ってしまったのかもしれません。

というわけで、子どもたちにはきちんと食べさせて、私は22歳も若返って食べ終えました。全部食べたらお腹をこわしかねないから、ちょうどいい。

でも、福も減ってしまうかな……




エッセイの書き方のコツ(25):この課題、ご一緒に書きませんか。2015年02月07日




私が所属するエッセイの勉強会で、次のような課題でエッセイを書くことになりました。次回23日までに仕上げて、無記名で提出し、その日の会でコンテストをするのです。

・書き出しの1行の中に、「扉を開けると」という文言を入れること。読み方は「とびら」「と」「ドア」のいずれでも構わない。

・字数800字以内。

さあ、この課題が出た日から、いつも以上にアンテナを高く張り巡らせて、ネタ探しです。

面白いことに、探し始めたとたん、テレビからも、友人との会話からも、この言葉が出てきては、パッと明るく光るのです。

案外よく使っている言葉なのだな、と改めて感じました。

ところで、本日第1土曜は、自主グループ「磯の綴り会」の活動日でした。

来月のエッセイのテーマの代わりに、この課題をメンバーにも出しました。

さてさて、どんなエッセイが集まるでしょうね。

ブログをお読みの皆さんも、この課題でご一緒にショートエッセイを書いてみませんか。

私の作品は、23日以降、ブログで発表するつもりです。

もう、ほぼ出来上がりました。あと2週間、推敲を重ねていきます。

800字エッセイ:「別世界を訪ねて」2015年02月23日

お待たせいたしました。

前回ご紹介した課題で書いたエッセイをお読みください。

 

   別世界を訪ねて 

 重い扉を開けると、中は暗かった。一歩また一歩と、ゆっくりと通路を進む。空間が開けても、靄がかかっていて、なお暗い。

暗闇に目が慣れてくると、昔懐かしい古井戸が見えた。その小さな広場を、壊れかかった二階建ての木造家屋が取り囲んでいる。

突然、背後で男性の大声が聞こえた。私の横を走り抜けて広場へ向かう。

やがて、黒ずくめの服をまとった細身の男性の独白が始まる。苦しみに顔をゆがめ、ときに涙しては悲嘆にくれている。

「生きるべきか死ぬべきか。それが問題だ」

 彼の口から、あまりにも有名なセリフがこぼれ出す。

2月のある日、自宅から1時間半かけて、さいたま芸術劇場にたどり着いた。舞台は蜷川幸雄演出のシェイクスピア作『ハムレット』。タイトルロールは藤原竜也だ。10年前に華々しくデビューしたのも、同じ蜷川ハムレットだった。今回、精魂込めての再演を、私は初鑑賞。彼は、一見ナイーブな美少年のイメージだが、低い声の響きも、迫力ある剣術試合の立ち回りも、じつに男性的である。

この芝居を引き締めているのは何といっても平幹二朗だ。ハムレットの父を殺してデンマーク王の座についたクローディアスと、殺された元王の亡霊との二役で、大物俳優の貫録が十二分に発揮される。その一方で、井戸の水を汲んで頭からかぶるシーンでは、80歳を過ぎた裸体を観客の目にさらすことも惜しまない。役者魂に脱帽である。

みずからの配役になりきって、よどみなくセリフを語る演者たち。人物が入り乱れるさまをスローモーションでやって見せたり、役者がお内裏様や三人官女に扮した巨大な雛壇が出現したり……と、意表を突く演出の数かず。日常を忘れ、まさしく生で創り出された別世界に引き込まれて堪能しつくした3時間半だった。




この芝居を観に行ったのは、「扉を開けると」という課題が出てから10日目のこと。とても感動しました。課題で書けないかと思ったとき、観客席の扉が頭に浮かんだのです。

あとは、思いつくままに書き、それから毎日、時間を空けては推敲していきました。何しろ3時間半の演劇を800字に収めるのですから、かなり周到な取捨選択が必要になります。

出だしは、扉の中に入り込んだ雰囲気をミステリアスに。別世界の種明かしをした後は、できるだけ具体的な解説を。そして、最後はその別世界らしさを強調して幕を引く……。

 

さて、皆さんはこの芝居を観てみたいと思われたでしょうか。そう思っていただけたら、このエッセイはひとまず成功したと言えるでしょう。

ちなみに、本日のコンテストで、22作品中の第2位に選ばれました。





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