自閉症児の母として(25):息子の職場を訪ねて2015年10月10日

 

昨日、息子の職場に出かけてきました。


20131012日の記事、


「自閉症児の母として(14):やっと再就職です!」


でも書いているように、ちょうど2年前の1011日に採用が決まった障がい者雇用の会社です。当時は電車を乗り継いで40分ほどかかる場所にありましたが、今年の春、会社が近くに引っ越してきて、所要時間も半分以下となりました。

近代的なビルの中にあって、環境的にもアップです。



 

入っていくと、20名近い社員が、黙々と自分の仕事をこなしています。

息子は私をちらりと見てもニコリともせず、作業に集中。

担当の方の説明では、ゆうパックの大きな封筒に、封入シールを貼っているのだとか。封筒のふちから1ミリだけすき間を開けて、左右同じ幅で曲がらないように貼る。見ると、本当に少しもずれていない。私にはできそうにない熟練の神わざに見えました。

「とても丁寧な作業ですね」とほめてもらいました。




 この写真、なんだかお分かりですか。

じつは、ただのパンケーキの食品サンプルではなく、それを利用した小物入れ。一つずつ透明の袋に入れてひっくり返し、底にマチを作って折り、封をする。これも、相方とコンビを組んで定評のある仕事をしているとのことでした。

ちなみに、食品サンプルは日本のお家芸で、海外からの観光客に人気があります。このパンケーキも商品として、ソラマチなどで売られているそうです。


 

「昼食休憩の時間です」

125分ちょうどになると、息子が穏やかな声で、皆に告げます。

彼のもう一つの任務は、タイムキーパーなのだとか。時間も気にせず、だらだらと仕事を続けてしまう社員もいるなか、必要な役わりです。小さい時分から、時間に厳しい彼には、得意中の得意分野でした。





息子の昼食は仕出し弁当。主食はかならず麺類で、うどんとそばを交互に注文しています。

やっとくつろいだ表情になり、私が帰るとき、「じゃ、がんばってね」と手を振ると、同じように手を挙げてこたえてくれました。 



職場では、息子の能力を上手に引き出し、それを生かした仕事をさせてもらっているようです。

自信に満ちた顔つきで仕事をして、お給料をもらい、家庭では好きなゲームやスポーツ観戦に没頭する。障がい者といえども、満ち足りた暮らしを送っているのだと、改めて確認できました。

そのことが、29年目の障害児の母には、何よりありがたいことなのです。






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