旅のフォトエッセイPortugal 2018(2)ポルトの街で2018年02月10日

 



まず降り立ったのは、ポルトガル北部に位置するポルトである。

ポルトガルという国名の元になったほど、国の要所として古くから栄え、歴史ある町。日本人にとっては、ポートワインでおなじみかもしれない。

 

空港に迎えの車を頼んである。ただし、ドライバーは現地語しか話さないという。ゲートを出ると、横文字の私の名前がすぐ目についた。それを掲げているのは口髭の小柄な男性だった。もちろん何を言っているのかチンプンカンプン。二人のスーツケースを軽々と運んで、車に乗せてくれた。

冬とはいえ、緑の街路樹や公園も多い。大きな建物があると、ドライバーが指さしてナントカカントカ、と名前を教えてくれる。

「イングレッシュ? ああ、イグレーシャ、教会のことね」と英語で答えると、「シー、シー!(そうそう)」。

その言葉がガイドブックの地図にあったのを思い出してピンときたのだ。彼のポルトガル語と私の英語が通じ合う……!

赤信号で止まると、彼は後ろを向いて、何かしきりと言っている。ぽかんとしていると、自分の財布を取りだして指さし、ポルト・ナントカカントカ。今度は自分の目を指して、ナントカカントカ。

「わかった! ポルトはスリが多いから気をつけなさい、ね?」

「シー、シー!」

 横で娘が、「お母さん、よくわかるねー」と尊敬のまなざしを向ける。

「会話はね、ハートよ」

ポルトガル語、恐れるに足らず。

 

30分ほどでホテルに到着。フロントの若い女性がまくしたてる英語のほうが、よほど難解だった。

日本でも、「朝食は7時から10時まで、1階奥のレストランへどうぞ。大浴場は3階でございます、午後2時から11時までご利用いただけます」などとペラペラと言われると、もう1回言って、と言いたくなる。毎日同じことをしゃべっているから、心がこもっていないのだろう。



 

時はお昼過ぎ、ポルトの街に繰り出した。曇り空だけれど、暖かい。手袋もマフラーもいらない。

ホテルは旧市街の中心にあり、辺りは賑やか。行きかう人々が、こちらを見る。けっして冷たい感じはしない。東洋人の女性二人連れはそれほど珍しいだろうか。確かに、観光シーズンでもないこの時期、あまり日本人は見かけない。


予習してきたとおり、起伏が多い。ほとんどが石畳の坂道だ。

クレリゴス教会を目指して、古い建物が立ち並ぶ坂道を上っていく。

 



振り返って見下ろせば、今歩いてきた道の、そのはるか先には別の教会の塔が見える。胸のすく眺めに、疲れも吹き飛ぶ。坂があるからこそ、景観も良くて風情があるのだ。

日本からはるか遠くのこんな場所で、「高低差ファン」を自称するタモリの顔が浮かんだ。



▼坂を上りきったところにそびえ立つクレリゴス教会。18世紀に建てられた。内部は、当時の経済力を物語るように、絢爛豪華なバロック様式だ。




 


 

▲教会の裏手には高い塔もある。76メートルあり、国内でも一番の高さを誇るとか。上まで登れば、当然、眺めも素晴らしいのだそうだが、225段のらせん階段と聞いておじけづき、明日にしようね、ということに……。




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