旅のフォトエッセイPortugal 2018(5)コインブラへ~前編~2018年03月22日




コインブラには、ヨーロッパでも屈指の古い歴史を持つコインブラ大学がある。ポルト滞在の2日目にはそこを訪ねることにしていた。長距離バスで1時間半ほど。バスターミナルの場所も地図で調べた。

シャンパン付きのおいしい朝食をたっぷり取り、快晴の空を見上げながら、気分よく出かけていった。

ところが、歩いて5分ほどの距離にあるはずのバスターミナルが見当たらない。ようやく奥まったところにバスの発着所があって、ほっとする。

「看板の一つも出しておけばいいのに」と、一言文句が出た。

 

止まっていたバスの運転手に、コインブラ行きのバスに乗りたいのだけど、と尋ねると、ない、と言う。どうやら廃止になったらしい。

前日のワイナリー見学にしても、バス路線にしても、日本のガイドブックはあてにならないということだろうか。まして、シーズンオフの観光客は、現地の観光案内所を訪ねるべきなのかもしれない。

さて困った、どうしようか。

運転手の男性は、ポルトガル語で何か説明してくれている。彼は伝わるようにと、2度、3度繰り返した。すると、地図を見ながら聞いているうちに、彼の言うことがすべて理解できたのだ。

「この道をまっすぐに行けば、地下鉄のカンポ・ヴィンテクワトロ・デ・アゴスト駅がある。そこから二つ目のカンパニャン駅まで乗って、カンパニャン駅からコインブラまで電車で行きなさい。1時間で着く」

ツアーだったら、バスの廃止もあり得ないし、雪で遅れるフライトに肝を冷やすこともないのだろう。そのかわり、こんなふうに言葉も通じない現地の人の親切に救われる、小さな感動のハプニングもないのだ。

「サンキュー! オブリガーダ!」

私たちも何度も繰り返して、地下鉄の駅に向かった。

 

▼そうして、たどり着いたコインブラの駅舎。(午後3時、大学からの帰りに撮った写真)


モンデゴ川に沿って歩くと、ポルタジェン広場に出る。▲


コインブラ大学は小高い丘の上にある。ここから、石畳の坂道をいくつも登っていく。賑やかな商店街を避けて、あえて住宅街を抜ける近道を選んだ。








 

コインブラ大学に到着。これは旧大学。世界文化遺産にもなっている。




ジョアン3世の像。

ここに初めて大学がおかれたのは13世紀初め。その後も、リスボンに移ったり戻ったりしたが、16世紀、時の王ジョアン3世が改めてここに礎を築き、現代にいたっているという。


時計塔。定時には鐘が鳴り響く。▼



鉄の門。かつては鉄の扉がついていた。中庭側から見る。

この向こうに、新大学の現代的なビルが並ぶ。現役の大学としてもポルトガル随一の名門である。

外側から見ると、こちら。つまりここが入り口となっている。当時の王の像や学問にかかわる女神像が飾られている。▼



大学内のサン・ミゲル礼拝堂は、17世紀から18世紀にかけて美しい内装が施されたという。天井も壁も、オルガンさえも、きらびやかな金泥細工と鮮やかなアズレージョ(タイル模様)に目がくらむ。▼






学位授与などに使われた帽子の間。もとは宮廷の広間だったそうで、装飾も施されているが、修復中で内部には入れなかった。▼





 

モンデゴ川の悠久の流れ。

赤茶色の屋根に降り注ぐ暖かな陽光。

穏やかな空気。

心地よく解放感に満たされていく。


                   〈次回に続く〉

 

 




copyright © 2011-2021 hitomi kawasaki