自閉症児の母として(49):NHKさん、どーも!2018年06月10日




息子は、子どものころから、NHKのテレビ情報誌「週刊ステラ」を毎週欠かさず買っている。おそらく、「みんなのうた」や「おかあさんといっしょ」の番組からの興味で、創刊号から買い始めたのだと記憶する。



ちなみに、何歳から買っているのか、息子に聞いてみた。

4歳かな~」

ウィキペディアで調べてみた。創刊は1990523日。確かに彼は4歳だった。今から28年前である。ざっと数えても、年に約50回発行されるから、創刊号から1400冊ほどを購読してきた計算になる。

NHKから表彰されてもいいのでは、と思う。

 

いつ頃からだったか、クロスワードパズルが掲載されていて、息子はマス目を埋めるようになる。とはいえ一人では完成できず、週末には家にいる娘が、よく助け舟を出していた。

3年前の夏、娘が家を離れた翌週から、その役目が私に回ってきた。息子が自分で書きこんだ部分を見ると、難しい四文字熟語を答えていたり、流行りの言葉を知っていたり、と思えば、ヒントのやさしい漢字が読めなかったりと、彼の知識の偏りがおもしろい。

すべてが埋まったところで、指定されたマスの文字を拾ってクイズの答えがわかると、「できたー!」と満足するのだった。

 

そのパズルが、この4月から、ナンバープレースに替わってしまった。数独のクイズである。私はクロスワードのほうが断然好きだ。語彙がひらめくと自己満足に浸れる。数独は、時間をかけて解いていけば、かならず正解にたどり着けるはずだ、と高をくくっていた。

仕方がない、息子に付き合おう。彼こそ数字には強いから、解き方のコツさえ覚えれば、すぐに一人で解けるようになるだろう。

案の定、初回からルールを飲み込んだ。9つの四角の中と、縦と横の列の中に9つの数字がダブらないこと。それだけだ。

そのうちに、私より先に答えを書き込むようになり、やがて何回目かにはほぼ一人で仕上げてしまった。ナンプレ自立である。



ふと見ると、

「正解者の中から抽選で3人に、以下のプレゼントを差し上げます」

おなじみの文句が目に入った。せっかくだから、初応募してみようか。

「西郷どん どーもくん手ぬぐい」だって、いいじゃない。

はがきに、住所・氏名・年齢など必要項目を書かせて、投函する。

 

そして1ヵ月が過ぎた今日になって、届いたのである。

NHKステラと書かれた、ふにゃふにゃした分厚い封筒が。

 

Congratulations モト様!

厳選の結果、貴方様が当選されました。

 

ステラの誌上発表によれば、当選倍率67倍とある。私はそのあたりの規約には詳しくないのだが、ひょっとしたら、抽選ではなく、特別に選んでもらったのではないか、と密かに思った。

応募はがきの項目の最後は、「本誌へのご意見・ご感想など」だった。そこに、ステラと息子の28年の歴史を、母の手で書き込んだのである。

それを読んだ編集部の方が、一人の障害者を応援してくれた。いや、長年の購読者への感謝の気持ちかもしれない。

いずれにしても、私は素直にうれしい。私たち親子を支えてくれる人に、また出会えた。息子のことでメソメソしてばかりの近ごろの私には、何よりの励ましのプレゼントだった。

 

NHKさんどーも!


 

やったね、モト君!





 

 



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