1年前のエッセイに、春馬君がいた ― 2020年10月19日
自分のエッセイリストの中には、内容が思い出せないタイトルもたくさんあります。
今回、ここに載せるのも、そんなエッセイでした。たった1年前なのに、何を書いたか思い出せない。ひょっとしてブログにはすでに載せたろうか……などと不安に思うほどの記憶の不確かさ。
だからこそ、エッセイに書き留めておくことが今こそ大事なのだと感じるのです。
長い前置きはさておき、「おススメは悪天候」をお読みください。
ちょうど去年の今頃は、強暴な台風も襲来して、雨の多い時期でした。
エッセイストグループの勉強会で、テーマ「お得感」で書いた800字エッセイです。
おススメは悪天候
10月25日は、前日から大雨の予報だった。でも、行くしかない。
上野の東京都美術館で開催中のコートールド美術館展。夫が職場で招待券を2枚もらった。ただし会期半ばこの日までの期限付きだ。印象派のコレクションが展示され、タダ券とあらば行かぬ手はない。ところが、10月上旬に海外旅行をした私は、帰国後は超多忙。気がつくと最終日になっていた。
2日前、夫から「一緒に行く?」と誘われたのに、「絵画展は一人で見るものよ」と偉そうな口をきいて断ったので、バチが当たった。朝から土砂降りで風もある。めんどくさいな。でも、夫の手前、行くしかない。
レインコート、パンツ、スニーカーに防水スプレーをたっぷり吹きかけて出かけたけれど、徒歩4分の駅に着くまでにすでにびしょびしょ。上野の山でふたたびぐしょぐしょ。それでも、館内は優れた空調のおかげか、ほどなく乾いて、雨のことは忘れた。
それより、受付を通ったとたん、がらがらで驚く。いつもここでの美術展は、平日でもたいてい混んでいる。まして、大々的に宣伝され、人気のモネやゴッホが並ぶのだから、混んでいて当然。その先入観は一気に吹き飛んだのである。悪天候のせいにちがいない。
500円払って、音声ガイドを首にかけてもらった。俳優三浦春馬の若々しい声が解説をしてくれる。それを聞きながら、絵と向き合う。「理屈はわかるけど、セザンヌはつまらない」、「やっぱりモネの絵がピカイチよね」、「モジリアニの女性はどうしてこんなに不幸そうな顔なの」などと胸の中でつぶやく。春馬君と2人で見ている気分、悪くない。
ほとんどの絵を、真正面から近づいたり離れたりして、満足のいくまで鑑賞できた。
美術展は大雨の日に限る。タダ券がさらに三倍お得になる。

自分のエッセイの中で、今は亡き三浦春馬氏に出会いました。
改めて、ご冥福をお祈りします。

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