自閉症児の母として(66):渡辺えりさんの言葉2020年07月23日

 

 

 

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日の朝日新聞生活面に、「渡辺えりの心に残る ひととき」という特集が載っています。3ヵ月に一度の連載で、毎回3ヵ月分の「ひととき」投稿から、えりさんが数編を選んで、感想をつづる記事です。

今回4月から6月までの分で、以前ご紹介した私の投稿「ドアノブのマスク」も選ばれました。この投稿については、すでに記者による特集記事も載ったので、追跡取材はありません。

それでも、えりさんの激励の言葉が、彼女のガッツポーズの写真とともに胸にじんと来ました。

 

私と同じ年のひとみさん、良い友達がいて本当に良かったですね! 息子さんに頑張ってと伝えてください。

 

自他ともに認める泣き虫母の私。朝から涙、涙……でした。

 

おススメの本、ソン・ウォンピョン著『アーモンド』2020年06月05日


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韓国人女性作家の小説で、2020年本屋大賞の翻訳小説部門で第1位になりました。すでに13ヵ国で翻訳され、日本でも重版されています。

推薦の言葉は本屋さんにお任せするとして、私の個人的な興味をお話ししましょう。

 

主人公の少年ユンジェは、生まれつき脳のアーモンドと呼ばれる扁桃体の部分が通常より小さい。それは感情がわからないという障害を意味するのです。家族が通り魔に襲われる事件に巻き込まれても、顔色ひとつ変えませんでした。

 

はじめに新聞広告でその内容を知った時、すぐに読もうと思いました。私には二つのことが頭に浮かんだのです。

まず一つ目は、脳の障害を持つわが子のこと。感情がわからないというわけではないし、不幸な事件も起きずにこれまで成長してくれました。

それでも、相手の心が読めないという同じような特質はありそうです。

子どものころ、絵本の文字が読めないと、「これはなあに」と聞いてくるのですが、本は自分に向けたまま、私からは見ることができませんでした。

今でも、電話での会話で、「今日は何を買ったの」のような質問に、

「これ」と答えることもしばしば。相手には見えていないということがわからないのです。

 

ユンジェのお母さんが、彼を専門家に診てもらったところ、自閉症のような発達障害ではない、という診断でした。それでも、わが子のために猛特訓。人の感情を学ばせようと、必死にあれこれ教える場面では、わが身とダブりました。少しでも困らないように、世の中で通用するように、生きるすべを身に着けてほしい。障害児の母の一途な思いは、どこの国でもどんな障害でも同じなのですね。

 

もう一つ思い出したのは、天童荒太著『ペインレス』という小説。体の痛みを失った男と、心の痛みを感じない女、どちらも文字どおりの意味です。

まるで官能小説かと思いきや、医学的見地というメスでスパッと切られ、哲学的見地という問いかけに苦しめられる。とにかく衝撃的で、エネルギーを吸い取られるような小説でした。

これまで優しいまなざしを持った『永遠の仔』や『悼む人』と同じ作者だとは、どうしても思えませんでした。

 

話を『アーモンド』に戻しましょう。

ユンジェの語り口は、感情がわからない分、無駄がなく、透明な水の流れのように読む者の胸にしみてきます。彼の純粋さが感じられるのです。

私は、二つの関心事などは忘れて、ユンジェの成長を見守り続けました。


「感動のラスト」には、あえて触れないでおきましょう。

皆さんにぜひともおススメしたい今年一押しの本です。

そして、作者にはぜひとも続編を読ませてほしいと願っています。



自閉症児の母として(65):朝日新聞の記事になりました!2020年05月27日

 

先日の朝日新聞「ひととき」欄の投稿が反響を呼んで、わが家に記者の方が取材に来ました。

そして、本日の朝刊の生活面に、こんな記事が掲載されました。


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私は、息子の代弁者として、自閉症という障害について少しでも社会の理解が深まってほしいという思いで、これまで40年近くエッセイの勉強を続け、書き続けてきました。

障害児の母としての子育ても30年になります。

この記事は、その記念のご褒美のようなもの。

 

私の投稿に目をとめて掲載し、この記事を書いてくれた記者さんにも、マスクを送ってあげたいと思ってくれた方がたにも、そして、これまでの子育てを助けてくれてきた友人にも、エッセイの仲間にも、すべての皆さんに、今感謝の気持ちでいっぱいです。

 

♡♡♡心から、どうもありがとうございます♡♡♡



自閉症児の母として(64):朝日新聞「ひととき」欄に掲載されました!2020年05月06日


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このエッセイは、マスクをもらったその夜のうちに、鼻を真っ赤にしながら書き上げました。翌朝、一度読み返してから、朝日新聞にメールで投稿。その日のお昼過ぎには電話がかかってきました。都内の電話番号ではなく、携帯電話の番号で。新聞の編集の方も、自宅でテレワークです。

電話の女性は、自閉症の特性をよくご存じでした。几帳面な性格だから、社会ルールをきちんと守ろうとすることや、マスクは毎日取り換えないと気がすまないことも、「想像がつきます」と言ってくれました。

採用の電話が来たことだけでも感激なのに、気持ちを理解してもらえたことがさらにうれしく、またウルウルしてしまう泣き虫な私でありました。

 


【予告】朝日新聞「ひととき」に掲載されます。2020年04月30日


来週の5月6日水曜日、朝日新聞朝刊の「ひととき」欄に、投稿を載せてもらえる予定ですので、お知らせします。

 

今、緊急事態宣言の出ている暮らしの中で、たくさんのことに気づかされませんか。

今回の投稿は、長男のマスクのエピソードを、そんな思いからつづってみました。

 

お読みいただけたらうれしいです。

新聞を購読されていない方も、当日、紙面をブログにアップしますので、ご覧ください。






自粛の日々につづる800字エッセイ:「送迎ドライブで見つけたもの」2020年04月18日

▲朝、グループホームの前の道路で待っていると、息子が走ってくる。


 

緊急事態宣言が出されても、長男が働く福祉の職場は原則休業にはならない。きちんと感染防止に対応した環境を整えている。とはいえ、電車通勤のリスクは避けられない。

そこで私は、息子のグループホームと職場間の送迎を買って出た。朝と夕方、一時間半ずつのドライブだ。

 

終業時は、さすがに疲れた顔の息子に、まずウェットティッシュで手を拭かせてから、チョコやアイスのおやつタイム。食べ終わると、バッグからゲームを取り出して遊び始める。

 

職場のそばに消防署がある。五階建てのビルの間にネットが張られ、隊員たちが忍者のようにその上を移動する。スバイダーマンのように壁を下りてくることも。

署の前の歩道には、たいてい幼い子どもの観客がいて、指さしながらお父さんに何か話しかけている。この時期だからこその父子でお散歩、それとも保育園の帰り道?

 

最初の送迎は34日、桜が満開の頃だった。

途中、休館中の藤子不二雄ミュージアムの前を通る。いつもなら子どもたちであふれている場所だ。裏山には大きな桜の木があり、ひっそりとした建物に向かって枝を差し伸べていた。ドラえもんの描かれた市バスが花吹雪を舞い上がらせて、がらすきのまま走り去った。

 

日がたつにつれて、車の数も減ってくる。燃費もよくなった。車列はまるでソーシャルディスタンスを取るようにして、すいすいと走っていく。

それでも信号で止まると、

「赤信号です。少々お待ちください!」と息子のアナウンス。以前はこんなことは言わなかったのに、やはり非日常が彼をいら立たせているらしい。

 

葉桜になると、今度は花水木が目に付くようになる。ホームの近くの住宅街に、きれいな並木道を見つけた。

街道沿いのツツジの植え込みも少しずつピンク色を増やしていく。

 

息子をホームの前で降ろした後は、FMラジオを聴きながら、リスナーからの「今どきのネタ」に笑い転げる。

「マスクの日々で、口紅がカビた」だって……!


 



自閉症児の母として(63):今なすべきこと2020年03月14日

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新型コロナウィルスの感染防止対策で、テレワークや時差出勤が奨励されています。長男の職場も、930分の開始時刻が30分遅くなりました。

 

今お世話になっているグループホームからは、「この時期も福祉施設としてのサービスに努める」というお知らせがあり、ほっとしていたのですが、数日後には、

「電車通勤はリスクが高いから、しばらく会社には行かずに、同じ系列の生活介護の施設に通ってもらえないだろうか」という連絡が来ました。

 

息子は片道15分ほど電車に乗ります。とはいえ、手洗い、マスク着用など、普段から徹底しているし、体も丈夫で基礎疾患などもない。その点では一般的な社会人とほぼ変わりません。

グループホームの側からしてみれば、一人でも感染者が出れば、スタッフも利用者も全員が濃厚接触者となり、大変なことになるのは目に見えている。最善の策を取りたい気持ちもよくわかります。

その申し出に即答はできませんでした。

 

息子は世の中のニュースにとても関心を持っています。自閉症の彼にとって、この世界は混沌としている。だからこそ彼を取り巻く世界を、彼なりに理解し、把握していくことが、心の平穏を保つことにつながります。

ところが、現在の彼を取り巻く世界といったら、エレクトーンのレッスンもしばらく休止。大好きなJリーグも開催延期。大相撲も無観客で行われる。オリンピックさえも危うい。そして何より新型コロナウィルスはまだまだ感染の予測が難しい……。経験したことのない現在の状況のなかで、彼なりにやむを得ない事情を理解し、緊張しながらも耐えているのです。


そんななかで、大きな支えとなっているのは、日常のルーティンを続けること。グループホームで自立した生活を送り、時間は少しずれてもいつもどおりに出勤し、プライドを持って仕事を続けていくことだろうと思うのです。それなのに、未知の施設に通うとなると、それこそ彼の支えはなくなり、精神的な安定も崩れてしまうのではないだろうか。そう思えました。

 

一日考えて出した答えは、息子には今までどおり通勤を続けさせようということでした。そのため、電車通勤が心配ならば、その時間を少しでも短くして、リスクを減らすことに協力する。というわけで、その日34日の終業時から、息子を職場の近くでピックアップして、グループホームまでアッシー君を務めることにしたのです。朝の出勤時だけは協力が難しいので電車を使わせてもらう。それでも、週末の帰宅も合わせれば、電車の利用は半分以下になります。

苦渋の決断でしたが、グループホームには快く受け入れてもらうことができました。

 

もともと車大好きな息子は、新たなルーティンが気に入ったようで、車での移動には問題なし。

職場の昼休みにかならず電話をかけてきて、「いつもの駐車場で待ってるからね」という母の言葉を確認して安心するようです。

車内ではまず用意したおやつを食べ、それからくつろいだ様子でゲームを始めます。

私にとって、毎日夕方2時間近い時間を取られるのは、けっしてお安い御用とはいかないけれど、息子同様もともと車が大好き。西に向かうフロントグラスには、西日がまぶしかったり、たなびく雲がダイナミックだったりと、早春の空に意外な発見があって楽しめます。コーヒー片手にサザンを聴きながら、ストレス発散のためのドライブだと思うことにしました。

 

もっとも、毎日こんなことができるのも、私のエッセイ教室や趣味の集まりがすべて中止になったからです。

小中高の学校が休みになって、仕事を持つ保護者の皆さんはさぞやお困りのことでしょう。想像に難くありません。

私もいつまでアッシー君を続けるのか、そろそろ予定を決めていかなければ。予測不能の出来事が苦手な息子のためにも。

 

今日も、みぞれが降りしきる中、昨日からわが家に泊まっていた息子をホームまで送ってきました。

 


 


自閉症児の母として(62):息子の子育てについて話しました。2019年12月14日


 

1211日(水)に、東京都発達障害者支援センターで行われた支援員研修のなかで、自閉症児の母として、お話をさせていただきました。この講演も、ここ数年の恒例となっています。

このセンターは、息子が成人しても通い続けて療育を受けてきた「嬉泉」という社会福祉法人が、都の委嘱を受けて運営しています。まさに息子は療育のモデルそのものなのです。

 

お話しするテーマは、「子育てを通して親が学んだこと」。

つまり、私としては、この施設で受けた療育のおかげで息子がどのように成長したか、親は何を教わったかをお話することになります。

毎年、私がいの一番に伝えたいことは、子どもをあるがままに受け入れる「受容的交流方法」という障害児との関わり方。当時は、まるでイソップ童話の「北風と太陽」のようだと思いました。

息子は、入園したばかりの頃は、朝、登園しても、母親と離れることを嫌がりました。「それなら、お母さんも一緒にお部屋に張りましょう」と先生。

やがて何日もたってから、私は頃合いを見て部屋から出て、窓からのぞいています。「ほら、お母さんはあそこにいるから大丈夫」と、先生は泣いている息子をなだめます。また何日もかけて、その時間を短くしていって、母親と離れられるようになっていったのです。

 

たくさん安心させて、母親や先生に関心を持ってくれた頃に、ようやく声掛けが生きてくる。こちらの言うことに耳を傾けるようになる。言われたことをやってみて、新しい経験をする。自分からその行動ができるようになる。自発的にプライドを持って行動できるようになる。

安心→経験→プライド。その後30年に及ぶ子育てにおいて、この3つのキーワードを実践することが基本であり、何より大切だったのではないかと思っています。

 

前回の講演の直後に、息子は自立という大きな節目を迎えることができました。

2年間、月に一度の宿泊体験を積んだ後、グループホームに入所して、約10か月がたちました。小さな問題はあるにしても、息子本人は、プライドを持って毎日の生活を楽しく送っているようです。

3歳の時からの療育が、実を結んだのです。

今回、そのお話をしました。まさに「三つ子の魂百まで」ですね。

 

後日、研修を受けた支援者の方々の感想が送られてきました。その中で、23歳のお子さんを担当している方が次のように書かれていました。

「お子さまも保護者も、自ら考え選択して生きていくこと、そしてそれを見守る支援者の存在の大切さを学びました」

「発達の土台となる時期でもあり、とても大事な時期に携わっていることを改めて強く意識しました」

私の思いが伝わったのだと思います。

いつかきっと、私の子育て経験が、支援者を通して生かされる日が来ることを心から願っています。






ダイアリーエッセイ:この日にあたり、ごあいさつ。2019年09月29日



今日は、929日。長男の33回目の誕生日です。

「軽い自閉症ですね」と、小児科医に診断を下された日から、30年が経ちました。なんとまあ、長い歳月だったことでしょう。涙あり、笑いあり、苦しみあり、喜びあり。あらゆる思いがぎゅうぎゅうに詰まった30年間でした。

 

そして、この春、自宅を離れて自立の第一歩を踏み出してから、7ヵ月。

毎晩、夕食後に電話があり、その日の食事のメニューや、サッカーJリーグの試合結果、大相撲の勝敗などを報告してくれます。

毎週土曜に帰宅し、翌日にはホームに戻ります。

生活は順調で、小さな問題はあっても、本人が自立して暮らしていることにプライドを持ち、満足している。それが何よりも大切なことなのではないでしょうか。

 

昨晩は、家族5人が集まって、近くのレストランで夕食をとりました。

33歳の抱負は?

「ホームでの生活をがんばります」 

 



介護施設にお世話になっている母も、健康状態は良好。穏やかに過ごしているので、ここらでほっと一息、ついてもいいかな、と思いました。

そんなわけで、10月上旬、1週間ほど旅行に出ます。

 

今回も3週間ぶりのブログ更新になってしまいました。

旅行の前後がとても忙しいのは毎度のこと。「何も今じゃなくてもいいのに……」と思うような用事が、向こうから手を振ってやってくる。それをクリアしていくことで、旅行の喜びも増すというものですね。(強がり?)

次回は帰国後に、楽しい写真をご覧いただければと思います。

行き先は、クロアチアです。


 



自閉症児の母として(61):息子の職場を訪問して2019年07月30日

 


長男の障害支援区分の認定は、3年おきに調査があります。その面接のため、職場を訪ねました。就労継続支援A型の障害者のための職場です。

せっかくの機会なので、彼が担当している作業を見せてもらいました。

 


何をしているのか、おわかりいただけるでしょうか。

専用の機械装置の前で、二つのジャックをプラス極とマイナス極に差し込んで、電通検査をしているところです。モニターに結果が表示され、少しでも具合が悪いと不良品としてはねるのです。

まるでゲーム機器かエレクトーンの調音部分のようで、彼にとってはお手の物なのかもしれません。

職場で、この作業を任せてもらっているのは、息子一人だとのこと。本来は職員の方が装置を備えて作業開始となるのに、彼は最初からすべて自分でやってしまうそうです。

「とにかく検査の精度が高いです。ほぼ完ぺき」と褒められました。

自閉症の過敏なほどの几帳面さと集中力。まさに、障害特性を生かせる作業です。そのことがとてもうれしかった。彼の求めてきた仕事が、ようやく見つかったような気がしました。

彼専用の小さなコックピットの中で、飽きることなくこの作業に没頭する毎日です。

 

そして、じつはこの部品、AEDに取り付けられるコードなのです。

いのちの瀬戸際で活躍する道具の、ほんの一部とはいえ息子が担っていることに、私は少なからず感動しました。

中国からの部品ですが、昨今のアメリカとの摩擦で、入って来ない時期もあったそうです。だから、習さんとトランプさん、仲良くして息子たちから仕事を取り上げないでくださいね。

  



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