自閉症児の母として(23):息子は直樹さんではないけれど…… ― 2014年12月04日
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東田直樹さんの高校生になってからの著書を読みました。
『続・自閉症の僕が跳びはねる理由 ~会話のできない高校生がたどる心の軌跡~』
(株)エスコアール出版部発行
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全体の構成は前作とほぼ同じですが、知性に満ちた言葉づかい、彼自身のプライドや尊厳に触れる言葉……それらを読むだけで、彼の成長を感じ、目頭が熱くなります。
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先日、長男モトがひさしぶりに強烈なパニックを起こしました。
パニックになると、何を言っても通じないし、本人もわけがわからなくなるようです。
大声を上げ、こぶしを振り上げてくる。夫は力ずくで両腕を押さえこもうとする。私はそこに近寄って、「まあまあ、深呼吸してごらん」と胸をさすっていました。
なんとかなだめて落ち着かせると、さっそく買ったばかりの本を開いてみました。モトはモトであって直樹さんではない。わかってはいるけれど、彼の場合はどうなのだろう、と興味がわきます。
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彼はこう言っています。
パニックを起こしても、そばにいてほしい。共感してほしい。パニックを起こす僕の側にいるのはストレスも大きいだろうけれど、つらい顔をしないでほしい。
「僕の母にもそうしてもらっています」と。
そして最後に、こう書いていました。
「パニックを起こしているときには何もわからなくても、どのような対応をされたかは、後でわかります。それが『自尊心』につながると、僕は信じています」
よかった、間違っていなかった、とちょっとホッとしました。
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1時間ほどたつと、すっかりいつものモトになり、私の部屋にやってきて言いました。
「ごめんなさい、ママぁ」
彼の自尊心も、私の自尊心も、傷つかずにすんだかな……。
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それでも、ほかのページを読むと、
「ああ、そうだったのね。もっと早くこの本と出合っていれば、もっと理解してあげられたのに……」
と、何度も自責の念がわきます。取り返しのつかないせつなさに、また涙がこぼれます。
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息子の主治医の先生にその話をしたら、
「いやあ、いいんですよ。その時その時、精いっぱい子どもと向き合っている親の愛情にこそ、真実があるんです」
と、やさしい目で言ってくれました。
もう一人の救い主が、ここにもいたのでした。
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ダイアリーエッセイ:環八沿いのレストランで ― 2014年12月13日
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長男モトは、3歳のとき、東京都世田谷区の自閉症専門の療育施設に通うようになった。
教育テレビの療育番組を見ていたら、この施設の様子が映り、ここに通わせれば何とかなるだろう、と期待を抱いて、この地に越してきたのだった。
最初は幼稚園代わりに、毎日通園。就学してからは週に一度、やがて月に一度になり、さらに2ヵ月に一度のコースになった。頻度は減っても、25年たった今なお通い続けている。
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今日も療育の日、車で出かけた。
息子の療育中はいつも、母親だけ別室に集まって担当の先生とグループ面談がある。
が、今日は日程を変更してもらったので、面談はなかった。
空いた2時間、久しぶりに環八沿いのレストランで、コーヒーを飲んだ。
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店は25年前と少しも変わらない造りだ。白いタイル貼りで、内部は天井が高く、中2階がある。道路に面した大きなガラス窓が店内を明るくしている。
道路の向かいの農地も今なお健在だ。夕刻には木々の向こうに夕日が沈んでいくのが見える日もある。
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初めてこの店を訪れたのは、静岡から世田谷に越してきて間もなくのこと。独身時代の友人が近くに住んでおり、私たちの到来を楽しみにしてくれていた。
その日、お互い二人の幼い子どもたちを連れて会うことになった。
今でも忘れない。フロアの角の半円の席。奥に子どもたちを座らせれば、シートから外に出ることはないはずだった。
ところが、食事が終わって母親同士がおしゃべりを続けていたら、じっとしていられない長男がさっそく席を離れようとした。ほかの子どもたちは持ってきたお絵かき道具で遊んでいるのに、彼だけは実力行使に出て、テーブルの下にもぐって脱出してしまう。あわてて連れ戻して、なだめすかしていると、事情をわかっている友人が、ため息をつくように言った。
「まだしばらく、たいへんねぇ……」
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この店は、焼き立てパンや食事が美味しく、駐車場も広いので、その後もたびたび利用した。
とはいえ、あまり子どもを連れてきた記憶はない。
子どもたちの療育中に、母親同士でやってきて、ケーキを3つずつ食べたこともあった。そんなことがささやかな息抜きだったのだ。
世田谷から今のマンションに引っ越してくるときには、荷造りの合間に体中のほこりを払って、一人で遅いランチを食べに来たこともあった。なぜ私一人だったのかはよく覚えていないのだが、重労働の空腹を満たそうと、一人でゆっくり、たっぷりと食べたことだけは覚えている。
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長男が大きくなっても、施設に来て時間があるときは、ここに立ち寄る。
息子の自閉症はけっして治るものではない。
それでも、最初の日と比べたら、息子がどれだけ成長したか、自分がどれだけ楽になったか、それを確認するようにやって来る。
今日も、25年前と変わらない店で、25年前の息子を思いだし、彼の成長ぶりを実感できた気がする。
そして帰りには、息子と二人で、一日早く衆議院議員選挙の不在者投票を済ませた。
ほら、投票所にいる息子の姿なんて、あのころには想像もつかなかったものね……
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ダイアリーエッセイ:いつもと違う誕生日 ― 2014年12月22日
昨日は特別な日。×〇回目の誕生日でした。
いつもの誕生日というと、家族そろって、マンションの4軒となりに住む母も呼んで、クリスマスパーティーを兼ねた楽しいディナーを用意していました。それがうれしいようなさびしいような複雑な気分ではありますが、生まれた日の宿命です。
ところが……
2日前、母が急に入院してしまったのです。
91歳になる母は、2週間前にリウマチが発症して、薬を投与。つい2日前からはその薬のせいで、全身にひどい発疹が出ました。整形外科で紹介状を書いてもらい、病院の皮膚科を受診すると、「このまま入院」と告げられました。
その日の午後は、エッセイクラブ稲城に行く予定でしたが、急きょキャンセル。母宅と病院を3往復して入院の準備を整えました。
稲城の皆さんには大変ご迷惑をおかけしました。
そのほかにも、月末までの仕事、年末のあれこれ、もちろん楽しいイベントも……。スケジュールはびっしりです。でも、万事休すに陥りました。
記念すべき誕生日も、すべて自粛ムードとなりました。
テーブルにいつもの母の席はなく、バースデーケーキもクリスマスチキンもなし。私が言いだしたこととはいえ、ちょっとさびしくてあとから落ち込みました。
これからは、もう少し家族に目を向けよ、という神様からのサインかもしれない。今までの私は自分のことばかりを優先しすぎていたのでは……。今日は、今までの自分をリセットする日。節目の年を迎えて、新たな自分になろう……などと柄にもなく反省までしました。
とはいえ、この日のために用意してきた美味しいものたちが、食べられるのを待っています。ココファームワイナリーの収穫祭ワインや、夏にフランスで買ってきた赤ワインとフォアグラの缶詰、東松島から取り寄せた生牡蠣などなど。
結局、家族5人で、母の分まで分け合いながら、それぞれの胃袋に収めました。やっぱりにぎやかな夜となりました。
これからは、形にとらわれることなく、自分なりのやり方で楽しめばそれでいいのだ、と気がついたのでした。
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雪の結晶が飛び出てくる素敵な絵本と、わが家の小さなクリスマスツリー。
どちらも、私の大切な人たちからの贈り物です。
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大好きマカロンのクリスマスバージョン。
ケーキの代わりに、自分で買って来ました。
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皆さんも、大切な人と素敵なクリスマスをお過ごしくださいね。
おかげさまで、母は順調に快復、週末にも退院できそうです。
タミフルからの「よいお年を!」 ― 2014年12月30日
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19日に入院した母は、おかげさまで経過も良好で、27日には退院することができました。
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ところが、その退院に私は付き添うことができませんでした。
入院は、ちょうどエッセイ教室が連日続き、年末の仕事納めなど多忙のさなかでしたが、暮れのあれこれにはいっさい手をつけないで、仕事の合間を縫うように、病院に通いました。
そして、私の疲れもピークに達したクリスマスの夜、とうとう熱を出しました。市販の風邪薬を呑んでも熱は下がらず、医者に行くと、インフルエンザA型の診断。初インフルです。万事休すとなりました。
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幸いにも、熱も症状もわりに軽く、処方されたタミフルをきちんと呑み、ひたすら寝ていたので、2日目には平熱になり、今日は朝からパジャマを脱ぎ捨てエプロンを付けて、簡単な掃除をしています。最後のタミフルも飲み終えました。完治です。
大掃除もおせちも年賀状も、すべて放棄のおかげでしょうね。
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今年は、いろいろなことがありました。
思いがけず、新年度からかつての職場に復帰。通信エッセイ教室の専任講師として、週に1、2度、N学園に赴くことになりました。
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楽しいこともたくさんありました。
春の桜と秋の紅葉、京都に2回も足を運ぶことができました。初めてのことです。
また、復興支援がご縁となり、宮城県東松島市のお友達のところへ、こちらも春と秋の2回、旅行をしました。
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そして、ブログに延々とシリーズを続けているフランスの旅も素晴らしかった。そう、この旅のブログは、まだ続くつもりではいるのですよ……。
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暮れも押し詰まったこの時期にインフルエンザで倒れるなんて、「終わりよければすべて良し」の逆パターン……と思われそうですが、まだまだ、今年の終わりは明日です。
明日は、サザンオールスターズの年越しライブに行ってまいりま~す♪♪♪
これまでにも何度か大晦日の年越しライブに出かけています。チケットは2枚まで購入できるので、いつも長男モトと二人でした。サザンのファンになったのは、長男が「TSUNAMI」を歌ったことに端を発しているいきさつがあり、ライブに彼は外せない……。
ところが、今年はファンクラブの抽選に外れ、がっかりしていたところ、当選の幸運を手にした友人が、誘ってくれたのです。
でも、彼はお留守番。その代わり、自宅で中継を見られるように、WOWOWに加入しました。テレビの前で、一緒にカウントダウンしていてね。
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誘ってくれた友人は、去年の夏のサザン復活ライブに、私が4枚のチケットのうちの1枚を譲ってあげたのでした。彼女は律儀に恩返ししてくれたというわけです。
「情けは人のためならず」という言葉をしみじみとかみしめた今年の暮れでした。
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皆さま、今年1年も、ブログをご覧くださり、どうもありがとうございました。
来年もぼちぼちやってまいりますので、どうぞよろしくお付き合いのほどお願いいたします。
インフルエンザなどにはかからずに、どうぞよいお年をお迎えください。
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