エッセイの書き方のコツ(24):テーマで書いてみたら2015年01月27日

エッセイを書くとき、自由に書くほうが好きですか。

それとも、あらかじめ決められたテーマで書くのがお得意でしょうか。

公募エッセイでは、後者のほうが断然多いですね。趣旨がはっきりしているからでしょう。

私の教室で、何を書いたらいいのかわからない、書くことが見つからない……、などの声があるときには、課題としてテーマを定めて書いてもらいます。

エッセイのお勉強のあとは、楽しいランチパーティ。

ちょっと季節外れなお話でごめんなさい。

先月の湘南エッセイサロンでのことです。

いつもは自由な内容で書きますが、たまにはテーマで書いてみましょうか、ということになりました。ちょうど12月ですから、「クリスマス」というテーマにしてみました。

海外暮らしを経験したメンバーも多く、バラエティに富んだクリスマスが読めるのでは、という思惑もありました。

はたして、ドイツやアメリカのクリスマス、日本でも昭和初期から現代にいたるまで、十人十色のクリスマスがつづられて、読むだけで幸せ気分が満ちてくるようです。

「この思い出を、初めて文章にしました」

「懐かしくて、書いていて楽しかったです」

作者の皆さんの感想でした。

写真は、レープクーヘンというドイツのお菓子。ドイツのクリスマスには欠かせないとか。


そんななかで、Tさんは、70年にわたるクリスマスを一気につづりました。進駐軍のクリスマスにあこがれて、父上にツリーを作ってもらった子ども時代の思い出から、お子さんたちのためにサンタの代役を必死で務めた楽しいエピソード、さらにお孫さんたちが聖誕劇をする話にいたるまで、盛りだくさんです。

ところが、Tさんは、朗読した後、ほんの少し険しい顔をして、こう言われたのです。

「楽しい思い出を書いたつもりだったのですが、こうして読んでみると、別の思いが湧いてきました。戦後の私たちは、アメリカにしてやられたなぁ、と……」

当時はなぜあれほどアメリカにあこがれたのだろうか。アメリカの真似をして、どんどん取り入れてしまったけれど、今になってみれば、日本には日本のすばらしいところがあるはずなのに、もったいないことをしたような気がする……と語りました。

言葉は多少違うかもしれませんが、そのようなコメントだったと私は解釈しています。

テーマを与えられて、初めて書いたからこそ、大事なことに気づいた。

それが、エッセイを書く意味ではないでしょうか。

この日のエッセイサロンで、改めてその思いを強くしたのでした。

 書いて初めて見えてくる真実があります。

 心の底に言葉という光を当てて、初めて形になる思いがあります。

 だからエッセイを書くのかもしれません。

      ――エッセイ集『なしのはな 第2号』あとがきより

ときにはテーマで書いてみませんか。

知らなかった自分を発見できるかもしれません。



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