ダイアリーエッセイ:アリとキリギリス2015年05月04日

 

今年のゴールデンウィークは、珍しくどこへも出かけない。

4月から仕事が忙しくて、予定を立てる暇もなかった。

それに、夫が5連休どころか5連出勤! オタク系の息子たちを置いて、私だけ家を空けるのもはばかれるというものだ。

ここはひとつ、点数を稼ごう。去年の暮れ、インフルエンザにかかってできなかった大掃除をやろう、と思い立った。

洗濯機をフル回転させながら、朝から念入りにトイレを磨く。

冬物のジャケットが、5月の強い風にあおられて、あっという間に乾いてしまう。しっかり止めておいたつもりでも、落下してあわてる。

ドライクリーニングのコート類は、両手で抱えて車に放り込み、クリーニング店へ。

街は車も人もガラガラだ。みんな遠出しているんだな……。

息子たちと昼食をすませると、今度はキッチンのレンジフードの掃除を開始。

一昨年の夏にリフォームしてから、初めてふたを外してのお手入れだ。

以前の換気扇は、油がべたべたで閉口したものだけれど、やはり技術の進歩はありがたい。1年半も使っているのに、油はさらりと簡単に落ちる。

ガスコンロもIHヒーターに替えて、つるつるで平らな表面を拭くだけ。掃除のなんと楽ちんなこと!

フェイスブックにもラインにも、好天の行楽地からの写真ばかり。

きれいな花、さわやかな緑の前で、友人たちの笑顔があふれている。

ビール片手に、なんていうのも、楽しそうで。

ああ、アリとキリギリスみたいだ。

今日の私はいつもと違って、珍しくアリのほう。

明日だけは、ディズニー映画が好きな長男を連れて、「シンデレラ」を見にいく。

今の私にぴったりだわ、と流しを磨きながら苦笑した。






ダイアリーエッセイ:映画「シンデレラ」2015年05月05日


珍しくどこへも行かないゴールデンウィーク、今日だけは長男と映画へ。

彼の好きなディズニー映画の最新作「シンデレラ」を見てきた。

ディズニーの映画だけは、たとえ子供向きのアニメでも実写でも、丁寧に作られているから、私も安心して一緒に楽しめる。

舞踏会の夜、魔法使いの魔法で、かぼちゃが馬車に変身していくシーンも、

キラキラと光る青いドレスで王子と見事なダンスをするシーンも、

12時の鐘の音とともに、御者がアヒルに戻っていく悲しいシーンも、

何もかも忘れて、ドキドキはらはら、そしてうっとり……。

思いおこせば、私が小学生のころ、金曜日の8時から「ディズニーランド」という番組があって、わが家の白黒テレビで楽しみに見ていた。

このディズニーランドには、「未来の国」「おとぎの国」「冒険の国」「開拓の国」の四つがあり、毎週そのうちの一つが紹介される。だぼだぼの背広を着たおひげのウォルト・ディズニーさんが案内役で現れて、

「今日は、おとぎの国へ……」

と言ってくれる日が一番うれしかった。

何を見ていたのか、ちっとも覚えてはいないのだけれど、小さなモノクロ画面の中でも、外国のキラキラした夢の世界が、子どもの私の心を十分満たしてくれていたのだろう。

私はこのころから夢見る少女だったらしい。よく、広告の裏に、お姫様の絵を描き、プレゼントにねだるのは、ピカピカキラキラのアクセサリーだったっけ。

劇場には、そのころの私と同じ女の子たちがいっぱい。ポップコーンの匂いが満ちている。

あなたたちも、シンデレラにあこがれるのかしら……?

 

人生の振り出しに戻ってきたロクマルの年、その「こどもの日」に、たまたま見た映画で、私は童心に返っている。

そのことに気がつくと、胸がいっぱいになって、涙がこみあげてきた。





ダイアリーエッセイ:おみくじ「素敵な出会いが」2015年05月19日

夕方、同僚の先生から梅干しをもらった。

近頃の梅干しは個包装されていて、まるでキャンディのようだ。味のほうも、顔がしわくちゃになるほどではなく、はちみつで甘く仕上げてある。疲労困ぱいのときに口に入れたら、一瞬元気になれるさわやかな味だった。

包装紙を捨てようとしたとき、「おみくじ」と書いてあるのが目にとまった。内側に、何やら文言が……

 【大吉】思いがけない素敵な出会いがあるかも。

私は、占いやおみくじの類はまったく信じない。が、オモシロがることにしている。当たっても、当らなくても。

「せいぜい、きょろきょろしながら帰りますね」と、梅干しの先生にお礼を言って別れた。

帰りに、乗換え駅のいつものパン屋さんに立ち寄り、おいしそうな抹茶デニッシュの試食をパクリとしたとたん、後ろから名前を呼ばれた。

口をもぐもぐしながら振り返ると、友達が笑っていた。えーと、誰だっけ。ほんの一瞬だけ、わからなかった。

「T先生!」

長男が小学校でお世話になった担任の先生だ。

ちょうど2年前に、同じビルのティールームでおしゃべりをして以来の再会だ。

ブログの201362日「お久しぶりです、T先生!」に、その日のことを書いている。(写真も載せています。ぜひ、お読みになってください)

今日は、白地に花柄のTシャツ、ダンガリーのシャツをはおって、ますます若返って見えた。だから、同年代の友達だと思ってしまったのだ。

後ろに、若い男性を連れている。障害のある人のようだ。

「息子です」

紹介されるまで気がつかなかった。顔立ちが似ていないせいもあるのだろうが、あまりにもうかつだった。

脳腫瘍の重い手術から生還して障害を背負った息子さんのことは、今までずっとお話に聞いていたのに、息子さんの名前だって覚えていたのに、目の前にたたずんでいる穏やかな雰囲気の青年が、すぐに私の頭の中で結びつかなかったのはなぜだろう。あまりに突然だったからだろうか。

私だって長男を連れて歩いていたら、若いボーイフレンドと間違えられるかも?!

 

先生は近くのばら苑にお散歩に行って、息子さんはいつもの通所施設へ。ここで待ち合わせて、彼の靴を買ったところだそうだ。新しいスニーカーを履いた彼は、パン屋さんの袋もぶら下げていた。

二人としばし立ち話をして、さよならをした。

T先生は恩師でもあり、同じ障害児の母として、私の大切な親友でもある。

今日、息子さんに初めて会うことができて、ますます親しみがわいた。

あ、素敵な出会いが本当にあった……!

梅干しおみくじ、すごい!!



サザンオールスターズの東京ドーム公演へ!2015年05月28日

忙しいとかなんとか言いながら、いやいや、忙しいからこそ、走りつづけるためには目の前にぶら下げておく人参が必要なんです。とかなんとか言い訳しながら、サザンのライブの切符をゲットし、おとといの夜、行ってきました。

半年前の年越しライブには、長男モトを連れていけなかったけれど、今回は一緒です。

サザンフリークになったのも、彼が歌った〈TSUNAMI〉がご縁だったのですから。

事前に送られてくるチケットに座席番号はなく、ゲートで初めて照合してもらうのですが……

な、な、なんと、広いドームの広いアリーナ席の前から15番目の席!!

ライブにはこれまで10回近く足を運んでいるけれど、こんなにステージ大接近はもちろん初めて。うれしくて気絶しそうでした。

が、一抹の不安は的中。ちびの私は、前の人たちが立てば、ほとんど見えなくなってしまう。結局はほとんど大きなスクリーンを見ていました。

それでも、爆音とともに炎が上がれば熱さを感じるし、頭上からは金銀のテープが舞い降りてくる。ほんのわずかな間でも、皆が着席すれば、ステージの人物も肉眼で見ることができます。やはり、迫力が違います。

まだ、ライブツアーは続くので、ネタバレはできないけど、一つだけ。

今回の「葡萄」という新しいアルバムには、〈Missing Persons〉という曲があります。

必ず最後は逆転勝利へ

……

Megumi, Come back home to me.

拉致被害者が早く帰国できるようにと、外交にはっぱをかけるロックです。

もちろん、このステージでも、パワフルに歌い上げていました。

いいぞ、桑田くん!

そして、最後には、ステージの向こう側から、全員で記念撮影。

私は写真の右側、鉄塔のそばに写っているはずです。

さてと、次の人参は何にしようかな……!





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