ダイアリーエッセイ:黒い蝶が舞う朝 ― 2015年08月03日
朝、リビングのカーテンを開けると、黒い蝶がベランダにいた。
アゲハチョウの一種だろうけれど、ほとんど模様もなく真っ黒だ。
ひらひらというより、ゆらゆらという感じの弱々しさで、ガラス戸の向こうを着かず離れず飛んでいる。まるで、部屋の中に入れて、と訴えているかのように見える。
……誰かの化身だったりして。
起きたばかりのぼうっとした頭で、ふと思った。
死んだ人が蝶になって帰ってくる、という話をどこかで読んだような気がする。
それを信じるような趣味は持ち合わせないが、貴婦人が葬儀に身につけるドレスをまとったようで、その力ない飛翔も、不吉な想像をかき立てるに十分ではあった。
このところ、毎晩寝る前に、先日直木賞を受賞した東山彰良著『流』を読んでいる。幽霊と昆虫が出てくるくだりがあるのだ。しかも、かなりショッキングだった。
私の思考回路がその影響を受けてしまっているのかもしれない。
蝶は、鮮やかなマリーゴールドやサフィニアにも、美味しそうな香りのゴーヤの花にも近寄ろうとはせず、ただふわふわと、庭の上を漂うように舞っていた。15分もいただろうか。やがて、姿は見えなくなった。
それにしても、黒い蝶の出現はなぜ……?
「虫が知らせる」という言い方も、古くからあるではないか。
……やっぱり、何かの〈知らせ〉だったりして。
そうだ、ブログに書いておこう。みんなに喋ってしまおう。
黒い妄想が、ただの杞憂に終わるように。

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