『わたしの戦後70年』発行 ― 2015年08月15日
今年4月29日に、「あなたにとっての〈戦後70年〉を教えてください」
と題して、記事を書きました。
戦後70年にあたる今年、『わたしの戦後70年』という合同作品集を刊行するプロジェクトに関わっている、という内容です。
その本が、ようやく完成の運びとなりました。

この本の筆者136名の方がたは、私が専任講師を務める通信講座の受講者の皆さんです。その関係で、文章関連の講師7名で、寄稿作品に対するアドバイスや原稿の校正を手がけてきました。
70代、80代が中心ですが、中には90代の方がたもいます。ほとんどが手書きの原稿には、戦争で亡くなった肉親への思い、大陸から引き揚げてきた体験談などがつづられています。
あるいはまた、戦後の復興を支えた企業戦士の苦労話もありました。ご自分で道を切り開き、成功を手にした方が、晩年になった今、満ちたりた思いで自分の歴史を書き残す。それはそれで素晴らしいことです。
どんな作品も、最後は「戦争は二度としてはならない」「平和であり続けるように」という切実な願いとともに結ばれています。
ちなみに、作品集の巻頭言は、ジャーナリストの池上彰さんが「さまざまな人生が立ち上る」と題して執筆しました。
……これを戦後80年、90年と続け、ずっと「戦後」であってほしい。これは私の願いですが、この本にまとめられた人たちの願いでもあるはずです。
と結んでいます。
ところで私は、あとがきの中で、次のようにつづりました。
……8月15日の玉音放送については、多くの作品で語られています。その日から、食糧難や社会の混乱など、新たな闘いが始まったはずです。とはいえ、戦後の復興に向けて立ち上がっていく日本人のたくましさには、圧倒されるばかりです。……
その日本人のたくましさはどこからきているのだろう……と、疑問を抱いていたのです。
先日ある番組を見て、答えを見つけました。
NHK BSプレミアム「玉音放送を作った男たち」がそれです。
当時の情報局総裁下村宏氏は、昭和天皇自らの肉声で国民に呼びかけることこそが、敗戦後の日本を立ち直らせる大きな力になる、と信じて尽力したのです。クーデターが起き、身の危険にさらされながらも、玉音放送は予定どおりに8月15日正午、ラジオから流れ、国民一人ひとりの心に届いたのでした。
また、昨日、映画『日本のいちばん長い日』を観てきました。
この映画では、本木雅弘さんが演じる昭和天皇が、国民を想う慈愛に満ちた姿で描かれています。
「国民は苦しんでいる。私の名によって始められた戦争を、私の心からの言葉で収拾できるのなら、ありがたく思う」
こうして、ご聖断がくだされ、玉音放送が実現しました。
「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、以て万世に太平を開かんと欲す……」
それまでは「現人神」だった天皇陛下が「国民の象徴」となり、戦後の国民の心を支えてきた。そのスタートとなったのが、玉音放送だったのではないでしょうか。
この映画によって、改めて腑に落ちた気がします。
今日は、70年目の終戦の日です。
