ダイアリーエッセイ:敬老の日、来年こそは ― 2015年09月21日
◎

母の庭には、毎年彼岸花が咲く。
その年の夏が、暑かろうと涼しかろうと、日照りが続こうが、長雨が続こうが、律儀にこの時期になると、こつ然と姿を現す。赤くにぎにぎしい花弁やしべを反り返らせて、窮屈そうに寄り固まって咲いている。
こんなに長生きしても、しょうがないねぇ。
一人じゃ何にもできないし、迷惑かけるばっかりで、だれの役にも、何の役にも立てなくて……。
92歳の母に、そんなふうにこぼされて、とっさに返事ができなかった。
そんなことないでしょ……とは言うものの、その先が出てこない。
〈ここにいて、そうやって息をしているだけで、私はうれしいわ〉
そう言ってあげるんだった。何も言えなかったことが、悲しくなる。
来年こそは、言ってあげよう。
だから、もう一年、長生きしてね。
私には、毎日が敬老の日。

