映画『男と女 人生最良の日々』を見て2020年02月08日

 

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私にとって、フランス映画の代表作と言えば、クロード・ルルーシュ監督の『男と女』だった。

あまりにも有名な音楽と、シックな映像と、フランスの風景。

作られたのは、半世紀も前。私は大人になってから見たのだけれど、すっかり魅了された。

まさかその映画に、スピンオフのような映画が作られるとは。それも、52年もたって、同じ俳優が別れた二人を演じて、再会を果たすなんて……!

 

二人はすでに80代。若かりし頃レーサーだった男は、今では車いすで、高齢者のホームで暮らしている。記憶力が低下しているのに、難しい詩を暗唱する。

女が目の前に現れても、それがかつての恋の相手だとは気づかずに、その彼女の思い出話を口にする。

 

二人が出会ったドーヴィルの浜辺。夜明けのパリ市街を疾走する車からの映像。何よりも52年の年を重ねた男と女。二人の人生。老いた男のペーソス……。

現在の二人の映像と、過去の映像とが交互に現れては、その波のような繰り返しに、52年という時が満ちてきて、胸がいっぱいになる。

映画の観客もまた、同じ流れのなかで生きて、年老いていく。それでも人生は美しいのだと肯定する監督のやさしい思いが感じられる。

かえって哀しくなって、涙が出た。




 

6年前に、ドーヴィルを訪ねました。そのブログ記事もよかったらどうぞ。

 



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