おススメのエッセイ集、『金木犀の香るころ』壬生幸子著 ― 2021年03月03日
エッセイ仲間の友人が、これまでのエッセイを一冊の本にまとめました。
彼女とは20年以上もの長いお付き合い。NHK学園の通信エッセイ専任講師を二人で務めてきた仲です。
まずはこの本を手に取っていただくために、とっておきの情報からお伝えしましょう。
幸子さんは、あの今話題の人物、渋沢栄一さんのひ孫さんなのです。
とはいえ、ひいおじいさまのお顔も知らず、あまり関心もなかったそうですが、やはり偉人の残した業績は大きかった。75年前に彼が日米親善のため力を尽くした慈善事業の記念式典に、彼女も立ち会うことになったのでした。
――「人形たちの同窓会」より
彼女は本物のセレブなのに、全然お高くとまったところがなく、かと言って、あえて隠し立てするでもない。あるがままの自分を見つめ、飾らずに素直に書きつづります。
大勢の家族やたくさんの友人とのエピソードを読んで感じるのは、彼女のこまやかな心遣い、女性として年を重ねていく心の機微。同世代の私には、とても胸に響きます。
文は人なり。そこが彼女の魅力です。
しかも才色兼備の幸子さんは、見かけによらず行動的でエネルギッシュ。ご主人の転勤で暮らしたロンドンの日々や、旅先で訪ねた各地のエピソードにも印象深いものがあります。
その一方で彼女は、慌てふためくようなハプニングにたびたび遭遇するのですね。それをまるで外国の喜劇映画のように、オシャレで面白おかしいエッセイに変えてしまう。彼女は三枚目の女優さんとなって登場します。
例えば、タクシーの運転手から加藤登紀子に間違えられた話、江口洋介にマンションの部屋を貸した話、パリでイケメンの青年にお金をだまし取られた話……などなど。何度読んでも笑えます。
最後に置かれたエッセイ「心を寄せる」は、ほかでもない美智子さまのこと。今の上皇后陛下であられるお方とのエピソードです。
一人の女性として幸子さんのお手本は美智子さまなのだ、と気づくとき、彼女の内面の美しさも見えてくるようです。
この珠玉のエピソードは、ぜひ皆さんご自身が、本をお手に取ってお読みください。
このエッセイ集はアマゾンなどでお買い上げいただけます。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://hitomis-essay.asablo.jp/blog/2021/03/03/9352605/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。