ダイアリーエッセイ: 100歳の誕生日はリモートで2021年03月29日

 


夫の母は、義姉(あね)と二人で、都内の自宅で暮らしています。

本日、義母(はは)はついに100歳の誕生日を迎えました。

 

ここ数年は100歳までのカウントダウンのように、大勢で集まってはお祝いしてきましたが、昨年から新型コロナウイルスの感染拡大で会えなくなりました。

「うつったら死ぬから、だれもうちに来ないでね」と義母みずからロックダウン。だれも寄せ付けず、ドアから一歩も外に出なくなりました。

 

とにかくバリバリのシャッキシャキの元気。頭も体もしっかりとして、コロナ以前は、歩いてどこへでも出かけていました。耳もよく聞こえます。

「健康には人一倍気を遣っているのよ」と義母。

「私も気を付けていますけど」と言えば、「私はあなたの10倍は気を付けているの!」と返ってきます。

毎朝起きたら、15分間、全身ストレッチと耳つぼマッサージをする。自分でニンジンのスムージーをこしらえて飲む。130品目を食べるのが目標。二人の食事も、いまだに義母が作っているのだとか……。

 

さて、待ちに待った特別おめでたい誕生日です。コロナ禍だからと、お祝い会を中止にはできません。当日よりも2日早く、みんなが揃う土曜日に、ビデオ通話でつながることにしました。いつもはご無沙汰ばかりのダメ嫁の私も、たまにはいいところを見せなくちゃ……と腕まくりのチャンスです。

1週間前から準備開始。まず、デパートの花屋さんに足を運び、花の種類や色を指定したアレンジフラワーを注文して、配送を頼んでおきました。

それから、パソコンを使って、オリジナルなバースデーカードを作成。わが家の全員集合写真に吹き出しを付けて、そこにそれぞれが直筆でメッセージを書き込みます。早めに仕上げて義母のもとへ郵送しました。


一番大事なのはLINEで全員がつながること。わが家の男性陣はLINEのような今どきの交流を好まず、まずは私とつながるところから始めます。操作が不得手な義姉のタブレットとつながるのも四苦八苦。初めはなかなかうまくいかず、それでもすったもんだの挙句、当日午後2時に、ようやく画面が6等分され、中国にいる娘も、グループホームで暮らす長男も、全員の顔が揃いました。

そこでみんなで「ハッピバースデー、トゥーユー♪♪」を大合唱!

義母はたいそう喜んでくれて、孫の顔を一人ずつ大きくして眺めては、お仕事しているの? 学校には行っているの? などと会話を楽しんでいました。

その後、上海に赴任したばかりの娘からの現地リポート。窓からの景色を実況中継してみたり、街で撮った写真を見せたりしてくれました。

気の重くなるようなコロナ禍の今、なごやかな祝いのひとときでした。

かくしてリモート誕生会はつつがなく終了。仕掛人の私もほっとしたのでありました。

 

義母からは、温かいねぎらいの言葉をもらいました。以前はちょっと苦手な姑でしたが、今となっては、敬愛してやまない長寿のお手本です。私もあんなふうに家族をこよなく愛して、明るく元気なおばあちゃんになりたい。


LINEのビデオ通話中の映像です)


義母いわく、

「コロナが収まってみんなで会えるようになったら、どこかでまたお食事会をしましょう。私が全部計画して、手配して、席順まで決めてあげますからね」

いやはや、100歳のゴッドマザーは、まだまだ健在です。

次の目標は、長寿日本一、はたまた、ギネスに挑戦かしら??


(わが家からのお祝いの花とカードは、内閣総理大臣から贈られた銀杯と、小池都知事からの立派な花瓶とともに、飾ってくれました)

 

 
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