ダイアリーエッセイ:起震車で震度7を体験!2023年09月03日


毎年、9月の防災の日の前後に、私の住むマンションの管理組合では、防災訓練を実施しています。

これまでにも、煙の充満した中を歩くとか、担架でけが人を運ぶ方法、LEDや消火器の扱い方など、実際に体験してきました。

 

関東大震災から100年目の今回は、初の起震車です。

30年以内に南海トラフ地震が起きる可能性が70パーセント。私たちは命を守るために、備えなければなりません。

その揺れの強さを体験しておけば、実際に起きた時に、少しは冷静でいられたらという思いがありましたが……


 

大きなトラックの荷台のサイドが開くと、手すりの付いたスペースがあります。その中に4人ずつ上っていき、手すりにつかまります。

「危ないですから、しっかりつかまっていてください! 気分が悪くなったら、手を挙げてくださいね。すぐに止めますから」

ますます緊張します。胸がドキドキしてきます。

スピーカーから、緊急地震速報が流れます。

「チャラリン、チャラリン……、強い揺れが来ます!」

あの音を聞いただけで不安がこみあげてくる。そして、揺れだす。横にゆさゆさだけではなく、突き上げるような揺れも加わって、遊園地の絶叫型のゴンドラが上下左右に揺れるかのよう。少しずつ揺れが激しくなって、壁の震度計の数字が震度7を表示すると、すごい揺れ!

必死でしがみつかないと、とても立ってはいられません。

これが室内だったら、扉が開いて飛び出した食器や、壁に飾った額や、いろいろなものが頭上に飛んできそうです。わが家の食器棚の上のつっかえ棒はとっくに折れるか外れるかしてしまいそう。

腰かけていたら、椅子ごと転げたことでしょう。

でも、最初から40秒で終わることを知っていますから、気持ちはどこか楽だったはずなのに、それでも、かなりの恐怖を味わい、起震車から降りた後も、猛暑のせいもあって、頭がふらふらしました。

 

マンションの住民、希望者全員が終わったあとの解説では、

「東日本大震災では、この揺れが3分続きました。さらに、関東大震災では、10分も続いたのです」

 

とてもいい経験になりました。

今回はVRのようなアイテムは使いませんでしたが、それでも十分、地震の恐ろしさを体験できました。

危ないものは部屋に置かない。いざ揺れだしたら、どこでどのように身を守るか。できる限りの備えをしておこうと思いました。

 

皆さんも、機会があればぜひ、体験してみてはいかがでしょうか。


▲動画ではないのでわかりにくいのですが、揺れている最中。みな必死で手すりにしがみついています。(右端が私)


 


800字のエッセイ:「熱中症の記憶」2023年09月08日

 

もう60年近く前、小学校4年か5年の頃だったと思う。

体育の時間、強い日差しの校庭で、野球のバットの代わりに、ラケットを使うラケットボールをしていた。

ふと、「なんか、変」と感じた。目がよく見えない。見えてはいるのに、目玉がぐるぐるして視点が定まらないような感覚。周りの音も友達の声も聞こえているのだけれど、遠くの方から聞こえてくるみたい……。なんだかおかしい。

それでも並んで待ち、私の番になると、ボールを打って一塁の方に走った。記憶はそこで途切れる。

目が覚めた時は、保健室の白いベッドの上にいた。白衣の先生から、えんじ色の液体の入ったグラスを「はい、飲んで」と渡される。ごくりと飲むと、のどの辺りがかーっとした。

 

遠い遠い記憶だが、今でもしっかりと覚えている。

そして最近見たテレビ番組で、熱中症の症状として目が見えにくくなったり、聞こえが悪くなったりすることもある、という医師の話を聞いて、あれは熱中症だったのだと思った。当時は日射病という言い方をしていたけれど。

子どもはあまり自覚症状がなかったり、うまく訴えることができなかったりする。先日、熱中症で亡くなったお子さんのニュースには胸が痛んだ。

子どもの「なんか、変」を大人が素早くキャッチして助けてあげてほしいと思った。

 

それにしても、あのえんじ色の液体は何だったの? 

今、私が大好きなアレだったのかな……


           写真:vecstockFreepik

 



ダイアリーエッセイ:彼岸花に出会って2023年09月23日


 

脳卒中で倒れた77歳の義姉と、突然一人になった102歳の義母。二人の心配を抱えていることは、8月24日に書いたとおりです。

2か月たった今なお、夫の実家とリハビリ病院に車を走らせる日も多い。記録的な猛暑に負けないようにいつも以上に気をつけながら、ぎっくり腰の治療にも通いながら、仕事も休まないようにと、目の回る毎日です。

 

昨日は、稲城教室の日でした。残暑厳しい強烈な日差しを浴びながら、車で向かいました。軽い昼食をとろうと、稲城市内のスタバの駐車場に車を入れたとき、その奥の梨畑に目が留まり、思わず声が出ました。

「ああー、咲いてる!」

フェンス越しに、オレンジがかった赤色の彼岸花がたくさん咲いていたのです。

そうだ、彼岸花の季節だ。明日は秋分の日だもの。

あでやかな彼岸花に思いがけず出会ったことよりも、この花のことをすっかり忘れていた自分に、驚きました。

彼岸花は、毎年この日を忘れずに、ちゃんと開花する。今年は例年にない日照り続きで、お米も野菜も不作のニュースばかり見ていたのに……。彼岸花はすごい。強い日差しを受けて、輝いて見えました。

 

季節の移ろいさえも、うわの空だったこの夏、ひと群れの彼岸花が、秋の訪れに気づかせてくれた。もうすぐ涼しい季節が、間違いなくやってくる。

そんな当たり前のことがうれしくて、もう少しがんばれそうな気がしてきたのでした。




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