南フランスの旅のフォトエッセイ:⑫ステファニーさんのトークショーへ ― 2025年04月12日
南フランスの旅のきっかけともなった『ニースっ子の南仏だより12ヵ月』という著書、その著者であるルモアンヌ・ステファニーさんについては、これまでもご紹介してきました。
彼女のおかげで、昨年のニースの旅はとても楽しいものとなったのでした。
そのステファニーさんが来日。先週の5日(土)に、東京神田で彼女のトークショーが開催され、行ってきました。
すぐ近くの北の丸公園や千鳥ヶ淵の桜は、満開! 午後からのトークショーに間に合うように、午前中にお花見をして、晴天の空の下、桜を堪能するというプレおまけつき!


トークショーの会場は、東京神田の出版クラブ。なかなかにオシャレなところです。▼

ショーの初めに、一緒に来日した彼女の夫と二人の息子、夫の父親という総勢五名が登壇して、紹介されました。男性は白いワイシャツ、彼女は白いスーツ姿で、まるで洗剤のCMのようにさわやかな一家でした。▼

その後、ニース出身のフランス人の自称「落語パフォーマー」のシリル・コピーニさんが登場。彼女とは、高校時代からの同級生とのことで、二人の南仏トークも息が合って、なかなか面白い。


ステファニーさんは、南仏のたくさんの写真映像を見せながら、話をしてくれました。
おススメのレストランは? おススメのおみやげは? ニース近くのおススメの街は?……などなど、参加者が事前に送っておいた質問に、丁寧に答えてくれるのです。
レストランは、私が前回のブログに書いたシェ・ダヴィアも挙げていました。
おススメの街は、アンチーブ、ヴァルボンヌ、サントロペ。
じつは、今年の6月にふたたびニースを訪れます。今回は、2月7日の記事に書いたカヨさんと一緒に。このトークショーにも二人で参加して、「アンチーブは外せないわね」と意見が一致しました。ここにはピカソ美術館があるのです。
最後に、参加者全員、ステファニーさんからのフランスのおみやげをもらいました。配ってくれたのはご次男のガブリエル君。
10歳ながら、お母さんに似てチャーミングな紳士です。▼

いただいたのは、フレーバーティーのティーバッグと、もうすぐイースターなので、かわいいウサギと花の模様の紙ナフキン。
手書きのカードも付いていました。▼

さてさて、それにつけても、早くこのシリーズを終わらせなくては、ニース第2ラウンドの旅が始まってしまう。
がんばります。
南フランスの旅のフォトエッセイ:⑬ニースの街のフォトアルバム ― 2025年04月28日
ニースは予想以上に美しい街でした。
その魅力は、見た目の美しさだけではありません。
さわやかな空気、やさしい花々の香り、美味しそうなスパイスの香りなどなど、写真だけでは伝えきれないのが残念です。
ニースの中心、マセナ広場。▼

▼路面電車のケーブルは地下に埋めて、芝生の上を走る姿は、優雅です。

マセナ公園には、地面から噴き出る噴水があって、子どもたちがとても楽しそうに水を浴びて遊んでいました。▼

公園の周囲の花たちも満開!
ピンクはブーゲンビリア。オレンジ色はランタナ。


ガリバルディ広場には、きれいなメリーゴーランドも。▼


旧市街の中心には、ロセッティ広場があり、17世紀に創建されたサン・レパラート大聖堂が建っています。サン・レパラートは旧市街の守護聖人です。▼


ロセッティ広場には、一番人気のジェラート屋さんFenocchio(フェノッキオ)があります。▼


旧市街でも、広場でも、カフェやレストランはたいていお店の外におしゃれな色柄の椅子を並べています。▼



私たちも、気持ちの良いテラス席で、ニース風サラダと、名物のピザ、そして地元のビールをいただきました。とびっきりおいしくて、幸せでした♡
南フランスの旅のフォトエッセイ:⑭エッセイ:恋リアにハマって ― 2025年04月29日
全10話、ニースが舞台だというので、ニース見たさに月額890円の料金を払って見始めた。

第1話。ニースの街の一角にある、メゾン・マルゴーというおしゃれなカフェに、背の高い日本人らしい若い男の子が入っていく。椅子もテーブルも窓側に少しだけ。誰もいない。がらんとした屋内の壁に並んだポスト。彼は名前を確認して、自分のポストから手紙を取り出す。
手紙には、この番組からの指示が書かれている。携帯電話は電源を切って金庫に入れてカギをかけること。それが「オフライン」の意味なのだ。やがて彼は一冊の青い表紙の冊子を手に、店を出て街を歩いていく。
こうして、日本からやって来た互いを知らない若い男女が順番に現れては、1人ずつニースの街へ繰り出す。男女5人ずつ。この日から10日間、番組からの青いガイドブックを目印に、彼らは互いに出会い、言葉を交わし、交際を始めていくのだという番組の設定が、だんだんにわかってきた。
連絡を取りたいと思ったら、ポストのあるマルゴーで、手紙を書いて相手のポストに入れる。連絡手段はそれだけ。番組からの指示も手紙だけで、第三者が現れることはない。
いわゆる恋愛リアリティーショー(恋リア)というらしい。最近できた新しい番組の形だという。それを見るのは初めてだけれど、数年前に出演者が誹謗中傷を受けて自死したという不幸な事件は聞いたことがある。
見ていても、どこまで脚本があるのか、「やらせ」があるのかはわからない。リアルとはいえ、そこには初めからカメラが回っているわけで、果たして、製作者の思惑どおりにリアルなドラマが展開するのだろうか。
登場する10人は、実際の〈人となり〉が紹介されていく。役者の卵だったり、水泳の選手だったり、モデルだったり……という具合で、ほぼ無名の人たち。ただし、誰もがイケメンで、チャーミングで、人選には力を入れたことがわかる。
さらに、見る楽しさを一層盛り上げているのは、途中にMCが入ること。
まるで、ニュース番組のコメンテーターよろしく、ニースの街のイラストの前で、中央に小泉今日子、両側に令和ロマンの2人が座っている。視聴者と同じ目線で同じ映像を一緒に見ながら、表情豊かに感想を述べたり、展開を予想してみたりして、視聴者の思いを言葉にしてくれるのだ。

彼ら10人は、運命の相手と出逢い、運命の恋をしたいと思って、このニースへの旅に参加している。だから、最初から相手を1人に絞らずに、いろんな人と話してみたい。そういう気持ちを汲むように、番組側は上手に出会いの機会を与える。何種類かの日帰り観光のデートを用意して、それぞれがデートに誘い合うようにと指示が出た。
ワイナリーへのサイクリングだったり、香水の手作り体験だったり、国境を越えてモナコへ行ったり……。こうして、数日の間に、いくつかのカップルが生まれたり離れたりして、意中の人への気持ちが絡み合いながら、番組は終盤に入っていく。
その頃には、私もすっかりハマってしまっていた。わが子よりも若い人たちのドラマなのに、こんなオバサンでも、ハラハラ、ドキドキ、キュンキュンしながら、見ているのである。自分でも不思議だった。
なぜだろう。昔を思い出している? 恋愛模様とは縁のない年ごろではあるけれど、自分だったら……なんて思っている? まさかね……と思い直しながら気づいたのは、オフラインの効果。簡単に電話ができたり、思いをスマホに打ち込んで送ったり、写真を撮って残したりなどできない状態というのは、まさに私の世代が経験した昭和の恋愛事情ではないか。それこそリアルな体験が私の記憶に眠っていたのだ。それが今よみがえってきて、相手だけを見つめ、自分の言葉だけで胸の内を伝えようとする彼らに、自分のことのように心を震わせ、共感しているのではなかろうか。
もちろん、ニースの映像は絵のように美しい。レストランの料理は本当においしそう。昨年の短い旅行では見つくせなかったし、彼らが訪ねていく場所にも行きたくなる。そんな相乗効果もあるのだろう。
この番組を見終わるのがもったいなくて、最終話はしばらく見ないでいた。
その頃だ、ステファニーさんがこの番組のコーディネーターを務めたことを知ったのは。
先日のトークイベントでは、たくさんのスライドを見せながら、彼女はたくさん話をしてくれた。最後のほうで、「オフラインラブ」にも話は及ぶ。
「ご覧になった方、いらっしゃいますか」と、ほとんど女性ばかり100人ほどの客席を見渡すと、急に熱を帯びたように、一斉に手が上がった。皆、番組の媚薬にやられているのだ。コーディネーターのステファニーさんが散りばめたニースの魅力に。
そして、とうとう最終話を見終えた。
3組のカップルが成立した陰で、恋を実らせることができずに泣いた人もいる。私はその後も、未公開映像や、帰国後の同窓会や、カップルのその後などを、YouTubeで見続けた。
1ヵ月が過ぎ、2ヵ月目の料金も引き落とされてしまった。でもいい、もう一度ニースの街を見てみたい。
今年も6月にニースを再訪する。ホテルは、メゾン・マルゴーの目と鼻の先。「聖地巡礼」をしてこよう。恋愛に一役買った壁のポストは、もう撤去されて、そこにはないそうだけれど。

★このシリーズは、次回からいよいよプロヴァンス地方のアヴィニョンに向かいます。お楽しみに!