南フランスの旅のフォトエッセイ:⑯エッセイ:ピカッと降りてきた ― 2025年05月19日
ピカッと降りてきた!
アビニョンからはバスで、旅の最後の目的地、リル・シュル・ラ・ソルグへと向かう。バスターミナルの906番から13時20分発のバスに乗って、約1時間だ。
駅の周りにはたくさんのバス停もあるし、乗り場もすぐにわかるだろうと、高をくくっていた。ところが、いくらバス停の時刻表を調べても行き先は見つからないし、行きかう人に尋ねても英語が通じなかったりで、またしても迷子になった。
「さっき、バスがそこの角を曲がったから、行ってみよう」
スーツケースをゴロゴロ引きずりながら歩いていったけれど、結局、駅をぐるりと一周してしまっただけで、それらしきものはどこにもない。
時刻は午後1時を過ぎている。20分発を逃すと、次のバスまで2時間待たなくてはならない。
その時、ピカッとひらめいて、思い出した。さっきのバスが消えた角に、倉庫のような建物があったはず……!
もう一度行ってみると、果たしてフランス語で「テルミネ」と書いてあるではないか。この建物内こそがバスターミナルだったのだ。バス停はバスターミナルにあらず。思い込みは恐ろしいのだと悟る。
薄暗い建物に入っていくと、いくつものホームが斜めに並んでおり、バスも何台か止まっていた。
窓口に駆け寄る。目的地まで大人2枚の料金を払って、係員に確認した。
「906番のバス、まだ出発5分前ですよね」
彼は時刻表を確認しながら、厳しい顔で「ノー」と言うではないか。もう出てしまったのだろうか。
「5分前ではない。10分前だ」。そう答えて、彼はニコッと笑った。
焦ってやって来た乗客はちょっとからわれて、ほっと力が抜けたのでありました。
やれやれ……

▼アビニョンで人気のジェラート屋さん、アモリーノ。ステキな薔薇の形に仕上げてくれます。


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