南フランスの旅のフォトエッセイ:⑰Villa Montroseとの出会い ― 2025年06月06日
この南フランスの旅に出発した日から、とうとう1年が過ぎてしまいました。
出発の前日6月3日には前書きのような記事を書いています。そこに、2冊の本を紹介しました。1冊目の著者ステファニーさんについてはいろいろと書いてきましたが、これからはもう1冊の著者、町田陽子さんと夫のダヴィッドさんにお世話になって、旅が続きます。
そもそも、出会いは本より先に、南フランスの情報をあれこれインターネットで検索しているときに見つけたのが、Villa Montrose(ヴィラモンローズ)のホームページでした。
一目瞭然、ぜひご覧ください。私がひと目でとりこになり、「ここに泊まりたい!」と思ったことがおわかりいただけるでしょう。
シャンブルドット、つまりフランス版民宿。築120年の古民家をリフォームして、寝室・サロン・バスルームのスイート仕様で広々45㎡の客室に、毎日ひと組限りのお客さんをもてなしてくれるというのです。
宿を営むのは、東京でプロバンス料理のシェフを10年務めたというダヴィッドさんと、日本人の妻の陽子さん。例の本の著者というわけです。
しかも、ダヴィッドさんが自家用車を運転してプライベートツアーのサービスも提供してもらえる。「絶対ここに行きたい!」という気持ちが高まって、旅の計画が進んでいったのでした。
宿は、プロバンスのリル・シュル・ラ・ソルグという小さな町の中心部にあります。
舌をかみそうなこの名前は、ソルグ川に浮かぶ島という意味で、文字どおり町はソルグ川の透明な流れに取り囲まれています。
いつまでも散歩していたくなるような、穏やかで気持ちの良い街でした。



これ、なんだかわかりますか。耳です。耳の形をした彫刻が川底にあります。ゴッホが自ら切り取った彼の耳……などというまことしやかな都市伝説もありますが、れっきとしたアーティストの作品だそうです。

リル・シュル・ラ・ソルグは、パリ、ロンドンに次ぐヨーロッパ第3のアンティークの町だとか。骨董品には手が出ないし、興味もなかった私ですが、ここに来るならにわか勉強でもしてから来ればよかった、とちょっぴり後悔……。
毎週日曜日には骨董市がたちます。さらに春と秋の2回、道路を封鎖して大きな国際アンティーク市も開催されるそうです。
川沿いにも、こんな雑貨屋さんが。▼

川沿いの道を折れて、土壁の家々に挟まれた道を進み……


ようやく見つけました。ヴィラモンローズです。
漢数字の七のように家を抱きしめているのは、ジャスミンの木。白い花が満開です。




では、扉の奥のご案内は、まだ次回。⑱に続きます。
新シリーズの予告です! ― 2025年06月15日
いつまでも続いて、終わりが見えない「南フランスの旅のフォトエッセイ」ですが、予定では、あと4回ぐらいで最終回としたいと思っています。
終わらないうちから、次の予告をさせてください。
(というより、シリーズがちっとも続かない言い訳かも……)

今年の2月7日に、この写真をアップして、「招かれて」というエッセイを載せました。本当に、この絵に招かれるように、鳥肌に導かれるように、カヨさんと二人でニースに行くことになったのです。
彼女は一足早く、今はイタリアに滞在中で、6月26日にニースで落ち合うことにしました。
私はといえば、ニースへは直行便がなく、どうせパリを経由するならば、パリにも寄っていこう、と思いたちました。一人旅には慣れているし、大丈夫よ……と軽く考えてしまったわが身の浅はかさ。慣れている一人旅は日本国内のこと。ヨーロッパで一人旅をしていたのは、まだ怖いもの知らずだった20代の頃のはず。あの頃の私と今の私とは別人だというのに。体力も知力も判断力も順応力も、何もかもが違っているのに。
考えれば考えるほど、だんだんと不安が募ってくる。夜も眠れないし、体調不良の日が増えて……。
でも、もう後へは退けません。ここでへこたれてなんかいられない。
本を買い込んだり、ネットを駆使したりして、情報を手に入れ、パリの一人旅の計画に没頭し始めました。がんばれ、私。
そうそう、パリを訪れたいと思ったのは、5年前に火災に遭ったノートルダム大聖堂が昨年12月に復活したからです。ぜひ見に行きたいと思っていました。
そして、もう一つ、コロナ禍が終わったら、パリ近郊のランスの町も訪ねたい。画家の藤田嗣治が晩年を過ごした町で、彼はフジタ礼拝堂を作り、そこに埋葬されています。フジタの絵も好きですが、彼のロイドメガネの風貌が亡き父に似ているので、親しみを感じてもいました。
ランスは、シャンパンで有名なシャンパーニュ地方にあります。
そこで、はたと気がついたのが、この絵。

カヨさんに譲ってもらったこのアート作品は、ミュシャのリトグラフをプリントしたもので、貴族の男性が着飾った女性二人にシャンパンを注いでいます。エドシック社というシャンパン会社のために描かれたポスターでした。
今はわが家の玄関に飾ってあります。よく見ると、右下にReimsと書かれている。ライムではなく、ランスと読む地名だったのです。
この絵もまた、私を招いている気がして、鳥肌が立ちました。
かくして、偶然が出会いを生み、二人の夢をかなえようとしています。
次のシリーズは、この旅をつづるつもりです。
それでは、6月22日、古希の大冒険に行ってまいります!
