自閉症児の母として(82):新たな発見2025年12月23日


このシリーズは2年近く空きましたが、久しぶりの長男登場です。

1400字のエッセイとして書いたものです。

 

   

        ☆☆  新たな発見 ☆☆


自閉症の長男は、障害者のためのグループホームで生活を続けている。温かな理解に支えられ、現在のホームに入ってもう4年になる。

部屋は6畳ほどの広さだ。入居の際、自宅で使っていたテレビや本棚などのほかに、大型のエレクトーンも置くため、ベッドの下が有効利用できるような高さのあるベッドと、小さなデスクと椅子を、お手頃価格のN店で買って運び入れた。

 

2年ほど過ぎたある日、「椅子の脚が折れました」とホームから連絡を受けた。

1000円もしない「お手頃」以上?の値段の丸いパイプ椅子だったので、やっぱり、と思った。今度はもう少しがっしりした木製の四本脚に布製の座部が付いたスツールに買い換えた。

中肉中背の息子ではあるが、扱いが乱暴なのか、しょっちゅう持ち物が壊れたり、服や靴に穴が開いたりする。毎日たくさんの荷物をカバンに詰めて出勤し、ゆっくり歩くより走るほうが得意なほど活動的だ。しかも、服も持ち物も替えの数は少ないから、どうしても消耗が激しいのだろう。そう思ってあまり深く考えず、その都度買い替えていた。

ところが、先日、また椅子の脚が根元から折れたという。さすがに驚いた。まだ1年もたっていない。

翌日、彼の部屋に出かけていって折れた脚の断面を見ると、一見木材のように見えても、合板のような素材だった。しかし、N店の商品が粗悪とは思えないし、男性一人が座って壊れるはずもない。やはり息子の座り方が悪いのだろう。傾けて座っているのかも。

 

そういえば、と記憶がよみがえった。

数年前のこと、便座のふたの付け根部分に、亀裂が走っているのを見つけた。おかしい……、と思っているうちに、亀裂は大きくなり、あわててメーカーに電話して、新品のふたと交換してもらった。

犯人はおそらく長男だ。他の家族は心当たりがないと言う。彼に何を聞いても、「うーん」とあいまいな返答ばかりだったが、その表情からして、彼の仕業だろうと推測できた。背もたれのように、もたれかかったにちがいない。開閉以外の力がかかれば、壊れるのも無理はないだろう。

 

N店の椅子は1年間の保証期間内だったので、お客様センターに問い合わせてみた。電話口の女性は、

「お怪我はございませんでしたか」と、まず気遣いの言葉をくれた。

今後の参考にしたいので、壊れた椅子の写真を送ってほしい、と言う。

自宅ではなくグループホームに住んでいるため、すぐには難しいと事情を告げると、それでは宅配便で新品を届けるから、その場で壊れたほうを空いた箱に入れて引き取りたい、とのことだった。

ホームのスタッフに対応してもらい、椅子の交換は完了した。

N店には、お手頃以上の誠意を感じた。

 

息子の障害は、コミュニケーション障害ともいえる。人との付き合いがうまくできないのだ。おそらく彼は、物との付き合い方も下手なのだろう。

長男の子育て39年目にして、いまだに新たな気づきがある。さて次は、と楽しみに思えるようにまでなってきた。





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