ダイアリーエッセイ:焼きたてパンにほだされて2014年06月17日



夫が定年退職して、もうすぐ1年がたとうとしている。

結婚以来、平日は家にいなかった人が、毎日いるのである。その突然の生活の変化を、どうやって受け入れようかと、何ヵ月も前から、心穏やかではなかった。

「最初が肝心」とばかりに、ルールを決めようとした。でも、夫はのらりくらり。

大きな声では言えないが、そのころに始まった私の顎関節炎も、「夫源病」だと確信している。歯を食いしばって耐えていたのだ。

とはいえ、はじめのうちは、わが家の大々的なリフォームや、長男の手術入院と重なって、気持ちが紛れた。

やがて、生活が元に戻ってくると、もう受け入れるしかない、と開き直れるようになっていた。

現在、夫は週に3日のアルバイト以外は、たいてい家にいる。それをありがたく有効利用することにして、夫の在宅日には、私が仕事に出るよう調整する。

以前は、1日の仕事を終え、帰りに両腕に食材を買いこみ、へとへとになって帰宅してふらふらになって夕飯を準備したものだ。でも今は、身軽なまま家に戻れば、温かい食事が待っていてくれる。

この幸せを喜ばなくては、バチが当たるというもの。世のおおかたの殿方の気分をちょっとだけ味わっている。

夫は料理ができるのである。(だから結婚してあげたのだった!?)

夫には感謝。(そんな夫を選んだ若き日の自分に拍手!?)

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今日は、仕事から帰ると甘い香りがして、レーズンブレッドも焼きあがっていた。

私は美味しい焼きたてパンには目がないのだ……!

今夜はこのパンにほだされよう。

文句を言いたいことも多々あれど、パンとワインと一緒に、飲みこむことにしよう。





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