自閉症児の母として(80):「息子の起こした“大事件”」の番外編その2 ― 2024年01月31日
息子の通勤に付き添ったのは、正確には夫と私だけではありませんでした。自宅にいる次男も、時間の許すかぎり、付き添ってくれました。
そして、「福祉」ではなく、有料のヘルパーさんも。
私は、送迎のかたわら、移動支援のヘルパーを頼もうと、区役所の相談窓口に問い合わせました。ところが、幼児や小学生向けの通所サービスはあっても、息子のケースに該当するサービスはありません。グループホームで生活し、10年以上も就労継続A型の作業所に通っている37歳の息子には、必要がない。そう決めつけられているようです。
区役所福祉課の担当者は、
「通所サービスを受けるには、両親が障害や病気、仕事がある場合に限られます。その場合は診断書や就労証明書を提出して申請してください」と言います。
高齢者の仲間入りをしている私たちに、就労証明ですって?
「もう一つの行動支援というのは、送り迎えだけではなく、外出先でも一緒にいて支援をするものです」
職場の中まで一緒に、というのでは、これはちょっと違う、と判断しました。
そこで、つぎは民間の相談支援センターに出向きます。
ここで、有料のヘルパーを派遣してくれる法人がいくつかあることを知りました。料金はいろいろだけれど、実費で柔軟なサービスが提供されるのです。3ヵ所の担当者とそれぞれ面接をし、ようやく1ヵ所と契約をして利用できるようになるまで1ヵ月半もかかりました。しかも料金は本人の収入に見合うものではありませんでしたが。
それでも、夕方だけ数回依頼すると、毎回同じおとなしそうな若い男性が付き添ってくれて、とても助かりました。
今回の一件では、いくつかの印象に残る言葉がありました。
「モトさんに適した福祉サービスがないのなら作ってください、ですよね」
区役所の福祉課でもらちが明かず、困っていた私たちに、グループホームの責任者がそう言いました。つまり、バスに乗るために付き添いが必要なのに、そのサービスが受けられないなら、新たなサービスが作られるべきなのだ、という考え方です。障害者一人ひとりに適した福祉サービスを提供すること。それが福祉だと彼は言いたかったのでしょう。
さすがに支援者のプロとして働く人は、視点が違うと思いました。頼もしい支援者です。
主治医のドクターは言います。
「障害者差別解消法という法律は出来上がっていても、まだまだそれを実践していく具体的な条例や施策が追い付かないんですね」
確かにそうです。今回のことで痛感しました。
それでも一歩ずつ、だれもが暮らしやすい社会になっていきますように!
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