おススメの本『邂逅の森』2015年03月14日

 

半年ほど前の98日のブログにも書いているように、私の読書には、ある目標がある。

【西暦2000年以降の直木賞受賞作を読破する】

その数、最新受賞作を含めて40作品。残すはあと6冊。

 


熊谷達也著『邂逅の森』は、2004年上半期の受賞作である。

マタギと呼ばれる東北の狩人の物語だ。

2日前に文春文庫で読み終わった。ただただ、圧倒された。

 

読後に私の思ったことが、そのまま、田辺聖子氏の解説に書いてあったので、それを以下に引用させていただく。

 

 大阪の町なかに生れて、山といえば、毎年、一家で避暑にゆく六甲山しか知らない、そんな子供時代を過して、そのまま、年を重ねた私。おそらく終生、東北の山々も、そこに住む人々も、その地の風、雪、獣たちを知らぬまま、人生の終りを迎えることになっただろう。

 ところが、私は、人生の終りちかく、幸運にも、それらと、文字通り「邂逅」した。

 本書の『邂逅の森』にめぐりあえて、よかった。私はこの小説によって、親愛なる狩人、マタギたちの人生や、東北の地の雪、氷、嵐、アオシシ(ニホンカモシカ)や熊の体臭、咆哮を、身近に感ずることができた。

  (原文のまま)

 

田辺氏と違うのは、私の子ども時代は海のそばで育ったこと。山らしい山を間近に見たのも、小学4年の林間学校で、箱根の山並みだった。

 

私がマタギという言葉を知ったのは、子どものころ、兄が読んでいた少年雑誌の漫画だった。毛皮をまとって、黒い鉄砲を持った狩人。相手は何倍もありそうな巨大な熊。血なまぐさい戦い……。そんなことぐらいしか覚えていない。

だから、以前の私ならこの本を手にとっても、けっして読んでみようという気にはならなかったろう。

 

でも、今回は違った。直木賞の40冊を読破するという自分で決めた目標のおかげで、この本とめぐりあった。目標がなければ読まなかった本を読んだのだ。

そして、読まなければ知り得なかった世界に、とことん引き込まれた。いつの時代にも、どこの世界でも、人は生きる。……そのことに思い至るとき、読書のだいご味はそれに尽きるような気がしてくる。

思いがけない「邂逅」に感謝である。





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