エッセイの書き方のコツ(3) 「継続は力なり」2012年01月10日


新年から「エッセイの書き方のコツ」というシリーズで書き始めました。
青い文字で書き、******のラインではさんであるところが、そのシリーズです。
その日に気がついたこと、出会ったことなどからテーマを見つけています。けっして順序だててあるものではありません。
ですから、№1、№2……というのはおおげさだったと反省。タイトルも書き添えるようにしました。
今日のタイトルは「継続は力なり」。その言葉に思いいたった出来事をつづります。

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大晦日に、1冊の本が送られてきました。
『シュークリームを食べる日』(日本文学館)


『シュークリームを食べる日』


著者の吉雄節子さんは、もう10年近く前、よみうり文化センター町田教室で、私がエッセイ講座を担当していたときに、生徒さんだった方です。その後すぐに、私は個人的な事情で講師を交代しましたが、節子さんはエッセイを書き続けていました。
そして、ようやく念願かなってエッセイ集を出版されたとの
こと。

この本の表紙を一目見ただけで、もう何年も会っていない彼女のことが脳裏に浮かんできました。70代というお年のわりには背も高く、華やいだ雰囲気で、彼女の周りにはいつも明るい笑いがこぼれていました。
本のあとがきには、こう記されています。
「あんなこと、こんなことを書き留めたいと、70歳を過ぎたころに、町田教室の門を
叩きました。原稿用紙への書き方も知らなかった私に、ひとみ先生はやさしく手ほどきしてくださいました」
そうそう、そうでした。彼女の文章は、どこか夢見心地で、文の端っこがふわりと飛んでいってしまったような……そんな印象の作品が多かったかもしれません。(ゴメンナサイ!)
彼女の原稿は私の赤ペンで真っ赤になったものです。やさしい手ほどきだったかどうかは、定かではありませんが……。
それでも、彼女のエッセイには持ち前の華やかさと女性的な感性が光っていました。まるで、きれいな毛糸玉をたくさん持っていて、これから編み方を教わる人のようでした。
10年がたちました。その間ずっと編み続けてきた節子さんには、いつのまにかこんなに素敵な作品がたくさん出来上がっていたのですね。素材の良さが一層際立つ作品集が生まれました

言葉ひとつひとつが磨かれ、文は尻切れトンボなどではなく、きちんとまとまって、彼女の思いを読み手の心に届けるための道具になっています。今は亡き人を懐かしむ気持ち、大切な人を思いやるやさしさ……どれも染み入るように伝わってきます。
「継続は力なり」
本を読んで、まずその言葉を思い出しました。
節子さん、80歳の記念に、エッセイ集の出版、本当におめでとうございます。

書き続けること。書き方のコツというにはあまりに当たり前のことかもしれません。それでも、いちばん確実なエッセイ上達法だと、改めて思ったのでした。


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