旅のフォトエッセイ:Vacance en France 12 オンフルールで2014年10月11日



どこが一番よかった?

帰国してから、娘に尋ねたら、「オンフルール」という答えが返ってきた。

ドーヴィルの次に向かったオンフルール。何世紀も前から、セーヌ川の河口に開けてきた港町だ。

パリからモン・サン・ミッシェルを訪ねるツアーはたくさんあったけれど、その帰り道にオンフルールに立ち寄るということが一番の決め手となって、このドライバー付きのミニツアーを選んだのだ。

大好きな印象派とは切っても切れない町で、印象派という名前は、クロード・モネがオンフルールで描いた『印象・日の出』という絵のタイトルに由来している。印象派の画家たちは、この町の海や港町の美しさに魅せられて、たくさんの絵を残した。

日本の安野光雅画伯の描いたこの町の絵も有名だ。 

 

その旧港町の写真。もう少し晴れてくれたら……と、曇天がうらめしかったが、フランス特有のアンニュイなムードは、快晴の空の下では生まれないのかもしれない、と思い直す。

サント・カトリーヌ教会。

15世紀に建てられたもので、当時、石で作る経済的な余裕がなく、船大工たちが知恵を寄せ合ってこしらえた。フランス最大の木造の教会だという。

 

鐘楼ももちろん木造。石の建造物を見慣れてきた目には、木造りの古い建物が、何やら懐かしく親しみを感じる。


町で最古のサン・テティエンヌ教会。

現在は教会ではなく、海洋博物館となっていた。

その教会と狭い路地を挟んで隣のレストランでは、この地方のりんごで作ったシードルという軽いお酒で、のどを潤す。


何とも古めかしい旧総督の館。

街で出合った回転木馬。


娘がじっと見つめていた。

彼女だって20年くらい前には少女だった。でも今はもう、乗りたかった木馬も、あの日の夢も、目の前でくるくると回っているだけ……。

彼女がこの町を気に入ったのは、そんなノスタルジーのせいだったのかもしれない。

 








旧市街で見かけた老夫婦。二人の後ろ姿が印象的だった。


                                                         〈続く〉


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