ダイアリーエッセイ:重なる日2020年11月24日

 

今日は、午前中に長男の主治医のクリニックに行く予定だった。

 

ところが昨日の夕方、母のホームから連絡が入った。

「右手の腫れがひどくなって、痛くてご飯の時も使えないご様子です。整形外科にお連れいただけますか」

前日に、手が腫れているが、痛くはないとのことなので様子を見たい、という電話があったのだった。どうやらそれが悪化しているらしい。骨折かもしれない。

原則、通院は家族が付き添うことになっている。もちろん、ホームから車いす専用車で送迎はしてくれる。

「わかりました。午前中に行きます」と返事をした。息子のクリニックへは、朝一で予約の変更をしてもらえばすむ。

 

その電話から、1時間もしないうちに、今度は息子のグループホームから電話が来る。

「モトさんが、食欲がないと言って、夕飯を召し上がらないのですが」

世話人さんの言葉にびっくりした。腹痛もなければ熱もないし、風邪気味でもないという。それなのにご飯を食べないなんて、あの子に限ってありえない。どうしたんだろう。

もしかして、コロナ……? 最悪の事態が脳裏をよぎる。

とりあえず、夜中にお腹がすくかもしれないので、おにぎりを作っておいていただけますか、と丁重にお願いをして、明日まで様子を見てもらうことにした。

 

もし、明日の朝、熱が出ていたら? どこの医者に、どうやって連れていく?もし、コロナだったら? どこで隔離する? どこに入院する? 

息子は独りでは無理だ。私が防護服を身に着けて看病する???

たくさんの疑問の湧き上がるなか、はっきりしているのは、明日、息子の体調が悪化していたら、母はホームにお任せして、いち早く息子のもとに駆け付けるということ。母を世話してくれる人はたくさんいても、病気の息子にはこの私が必要だ。いずれ母亡き後は、福祉にお世話になるけれど、今はまだ私しかいない。

 

緊張して朝を迎えた私に、電話の息子の声は明るく元気だった。

「朝ごはんは全部食べました。お腹も痛くない。大丈夫です!」

世話人さんの話では、換気のため窓を開けたままで、ゲームに熱中していたので、体が冷えたのではないか、ということだった。

とにかくほっとした。

 

安心して、母を連れて外科へ。

レントゲンの結果、骨折はなく、細菌が入って腫れたのでしょうとのこと。念のため、採血して検査をし、明日もう一度、私一人で結果を聞きに行く。こちらも、ひとまずほっとした。

通院のおかげで、9か月ぶりに生の母に会えた。文字どおり怪我の功名に感謝する。

 

長引くコロナ禍でも、感染対策をしながら、何とか楽しみや生きがいを見つけて日常生活を送れるようになってきた。とはいえ、いつどこでコロナを拾ってしまうかわからない。そのリスクは誰もが持っているのだ。

私にはまだ、家族を守る役割がある。

改めて、そんなことを考えた一日だった。

 

それにしても、私の〈GoTo旅行〉の日と重ならなくてよかった、と三たび胸をなでおろしたのでありました。




 



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