自閉症児の母として(10):新しいこだわりの謎を解く2013年03月07日

去る3月3日の記事の続きです。
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自閉症の長男モトは、私がエプロンをするのをなぜか嫌がる。その謎解き。
娘の推理はこうである。

そもそも、彼にとってのエプロンは、食器洗いのときに着用するもの。作業が済んだら、外して所定の場所にたたんでおく。それをインプットしたのは、ほかならぬこの母親の私だったはず。
しかも、4年前から喫茶室に勤めるようになり、ユニフォームのエプロンも着けている。おそらく、休憩時間はそれを外して過ごすように、決められているのではないか。
そんな彼にしてみれば、母親が料理をしているわけでもないのに、食事中もパソコン中もだらしな~くエプロンを着けているのは、花柄だろうがピンク色だろうが、ルール違反というもの。容認できないにちがいない――。

たしかに、そうかもしれない。
それを確認するために、今日は職場におじゃまして、チーフにエプロン着用について聞いてみた。
「休憩時間も、トイレに行くときも、勤務から離れるときは、かならずエプロンは外しています。私たちも例外なく従業員全員ですよ」
予想どおりの答えが返ってきた。

そばで聞き耳を立てていたモトに、言っても仕方ないことを思わず言ってしまった。
「だったら、料理と食器洗いのとき以外はエプロンを取りますって、そう言えばいいのに」
彼は黙っている。でも、その表情には、やっとわかってもらえた、という安堵感が浮かんでいた。
モトは、ニュース解説のような難しい言葉や、スポーツの実況中継さながらの言い回しは使えても、自分自身の言葉で、自分の思いを説明することができないのである。
改めて、自閉症というコミュニケーションの障がいを見せつけられた気がした。

息子は、自閉症の特質から、いったんルールが呑み込めれば、とことんそれに従う。そのほうが安心できるのだろう。よく言えば几帳面である。
しかし、そのルールを心のよりどころにするあまり、例外を嫌い、突発的な変更に動揺する。
彼から見たら、寒さしのぎにエプロンを四六時中着けているのは、寒いからといってゴム手袋を外さないのと同じこと。さぞかし目障りだったにちがいない。

それにしても、彼のこだわりに付き合い続けて四半世紀の私が、どうしてこんな簡単な謎解きができなかったのだろうか。そのことが、ちょっとショックだった。


職場で「皿洗いの達人」と呼ばれているモト。厨房を訪ねると、自分専用のゴム手袋を見せてくれた。


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モトの〈こだわり〉にこだわることを、もう少し続けたいと思います。
また次回、お付き合いください。

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