旅のフォトエッセイPortugal 2018(4)ハリー・ポッターのふるさと、リブラリア・レロを訪ねて2018年02月28日

 


ハリー・ポッターは英国生まれだと思っていたら、意外なことにポルトガルにもふるさとがあったのだ。

物語の作者J.K.ローリングは1990年代、ポルトに3年ほど住んでいたそうだ。ハリー・ポッター・シリーズの第1作目を世に出す前で、『ハリー・ポッターと賢者の石』は、ポルトで書かれたという説もある。

ポルトの商店街に並ぶ小さな書店、リブラリア・レロは、彼女がここで着想を得て「ホグワーツ魔法学校」の図書館を描いた、と言われている店である。

 

その後、2008年には、イギリスの新聞ガーディアン紙が選ぶ「世界で最も素敵な10の書店」の第3位に輝いた。

これは、ぜひとも行ってみたい。

 


▲クレリゴス教会の近くにあり、外から見ても見飽きない愛らしさだ。

狭い間口には、シーズンオフのこの時期でも、観光客がひっきりなしに訪れている。2軒先のチケット売り場で4ユーロの入場券を買う。本を購入すれば、その分は代金から差し引かれるとのこと。

 

この書店は、1906年にレロとイルマオンという二人の人物によって建てられた。当時19世紀末から20世紀初頭にかけては、ヨーロッパ各地に、既成の価値観にとらわれない新しい芸術文化の湧きおこる気運があった時代。彼らもまた、その時代にあって、文明の進歩を享受し、知的文化の発展につながる書店の創設に、情熱を燃やしていたに違いない。

この店舗も、当時のネオゴシックからアールヌーボー、アールデコなどの装飾が余すところなく施されている。


▼狭い扉を入ると、まず天井の美しさに見とれる。手の込んだ木彫だ。

 



▲中央のシンボル的な階段は、その美しさから、「天国への階段」と呼ばれている。階段の裏側一段一段にも植物の文様が施されている。

私には、ドラゴンが大きな口を開けたように見えるのだけれど。

 

見上げれば、2階の天井には明るいステンドグラスが。▲





2階から見下ろすと……▼


▲床に2本のレールが埋めてあり、今でも本を運ぶのにトロッコが使われていた。




▲店内のスケッチ画を表紙にしたノートや、しおりもたくさん売られている。


この書店は、創設当初の気運を現在にもつないで、書店として一般図書の営業を続けている。その一方で、時代を超えた今もなお、当時の店舗が訪問客を魅了する。一人の無名の作家を世に送り出すほどの魔力に満ちているというわけだ。


私も、J.K.ローリングになったつもりで、気の向くままに店内を歩いてみたけれど、何のインスピレーションもわかなかった。(いやいや、エッセイのネタぐらいは拾えたかも??)

それでも、遠く日本から丸一日かけてやってきて、この不思議な空間に身を置いている自分が、不思議だった。

果たして、ホグワーツ魔法学校の図書館がこの書店に似ているかどうかはわからない。でも、J.K.ローリングが心を揺り動かされて着想を得た、というのは真実だろうと思う。

ハリー・ポッター・シリーズは全巻わが家の本棚にそろっている。帰ったら、もう一度読み直してみよう。魔法学校の図書館のくだりを読んで、ポルトのこの店を思い浮かべることができるだろうか。

 

▼せっかく本代として使えるという入場料だから、おみやげを買った。

写真集[PORTO graphics15ユーロと、小さなノートが5.9ユーロ。罫線もないはがき大のノートが800円以上もする。概してヨーロッパの文房具は高い。それでも、私は買う。旅人の一期一会の思いをこめて。 

 


ところで、ポルト散策の翌日は、電車で1時間、コインブラ大学を訪ねた。

ヨーロッパの中でも、古い歴史のある大学で、創立は14世紀初頭にさかのぼるという。

この大学の図書館がすばらしい。18世紀に建てられたそうで、内部は華麗な金泥細工が施され、高い天井までびっしりと設えられた書棚には、30万冊を超える蔵書が収められている。

古い匂いがする。おそらく、日本と違い、湿気も少ないから、かび臭いというのとも違う。長い歴史を持つ歳月の粒子が立ち込めている……そんな雰囲気だ。

この図書館こそ、ハリーの魔法学校の図書館を彷彿とさせるではないか。立てかけてある長い梯子たちが、今にも動き出しそうだ。後ろの扉から、ハリーやハーマイオニーたちが、顔をのぞかせる気がした。

 

▼内部は撮影禁止なので、絵ハガキを買った。

(似ていると思いませんか)





コインブラの街も素敵だったので、また次回に。

 

 リブラリア・レロのホームページでは、360度の視界が動画で見ることができます。




コメント

_ あけにし ― 2018/03/11 21:19

すてきな写真の数々。夢のような空間ですね。私も行ってみたいなあ。

_ hitomi ― 2018/03/12 22:49

あけにしさん、
ぜひ、いらしてくださいね。日常から離れて、ひと時の夢を見るために。

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