旅のフォトエッセイ:ちょっと京都の旅①2018年10月12日

 

夕刻にひとり京都に降り立ち、ホテルにチェックインした後、東華菜館という北京料理の老舗へ向かいました。

鴨川のほとり、四条大橋の脇に、南座と向かい合って建つ、五階建てのレトロな洋館です。

(写真は「じゃらん」のサイトからお借りしました。▼)




玄関からして荘厳な構えです。▲

  

早く着きすぎたので、中には入らず、混雑する四条通をぶらぶらしていると、「全員お待ちかね」とお呼びがかかってしまい、あわてて引き返しました。


 

大正15年に建てられたそうで、2階へと案内された古めかしいエレベーターには、蛇腹の扉がついていました。日本橋三越にも同じようなエレベーターが残っていますが、どちらもアメリカのOTIS社製で、こちらは現存する日本最古のものだとか。▲

 

▼男性諸氏が待っていてくれたのが、この部屋。

(写真は「東華菜館」のホームページからお借りしました)


 

種を明かせば男性諸氏は、大学の美術部の1学年上の先輩がたと、同期のお仲間。卒業後も交流が途切れることなく、特に男性はリタイア組も増え、昨今は集まる機会も増えてきました。

この秋、京都出身の男性が京都ツアーを企画して、わが夫も含めて男性ばかり10名ほどが参加。旅の二日目の夜は、この伝統ある北京料理の店で夕食を、という予定だったので、私もなんとか都合をつけて、この席に駆けつけたのでした。

はい、夫は私の1年先輩でした。(今では上下関係が逆転しているかも?)

 

夫とは24時間ぶりですが、40年ぶりの先輩もいて、顔を見てもわからないかと思ったのに、そこは若い頃の親しい仲間。当時と変わらない冗談交じりのやり取りで、誰それの消息やら、近況やら、あることないこと、次から次へと話題が飛び出し、笑いがあふれ、楽しいひと時はあっという間でした。

 

学生時代に比べたら、痩せた人、太った人、髪の少なくなった人、白くなった人、意外にあまり変わっていない人……。見かけはいろいろです。同じであるのは、誰もが皆、同じ年月を過ぎてきたこと。

飲み過ぎて暴れたり、議論を吹っ掛けたり、もうそんな人はいない。やわらかな眼差しで、上手に言葉を交わしている。ほほ笑んでいる。

「かどが取れてまるくなった」とは、つまりこういうことなのでしょう。相手を思いやるやさしさを身につけてきたのですね。

かくいう私とて、だいぶ色香の褪せた紅一点。昔はこういう場で、今で言うセクハラまがいの会話をされては、怒ることもありました。もう、はねっかえす若さも弾力もありません。ここに集う紳士たちも、昔の淑女にぶしつけな物言いをすることはないのです。

 

そろそろお開きという頃、窓の下には鴨川のゆるやかな流れが、街の灯を映してきらめいていました。ほろ酔いの私は、40年の時の流れに思いを馳せるのでした。

 

 

夫は、初めからこのツアーに一人で参加することにしていました。

わが家には、ご存じのとおり、自閉症の長男がいます。予定外のことが起きなければ一人で何時間でも留守番はできるのですが、さすがに両親二人とも外泊するのはちょっと心配です。

今回は、彼の毎月一度の宿泊訓練を、京都行きの日程に合わせることができたので、私も夫を追いかけて(??)同席することができました。

とはいえ、翌日には帰るつもりで、夫たちのツアーではなく、関西在住の友人に付き合ってもらい、短い京都滞在の計画を立てました。

この続きは、またいずれ。







自閉症児の母として(52):ショックです! 息子の頭が……2018年10月16日

 

朝、息子は出かけるときに、「今日は髪を切ります」と言っていました。

帰宅した息子を見て、絶句。坊主頭になっていたのです。ショックで息が止まりそうでした。

 

もう何年も前から、駅なかの1000円ぐらいで簡単にカットしてくれる床屋さんにお世話になっていました。最初は私がついていきましたが、すぐにチケットを買うやり方も覚えて、一人で行かれるようになりました。

その店が閉店になっても、隣駅や商店街などで、別の床屋を見つけてはそこで散髪していました。コミュニケーション障害のある彼が、理容師さんとどんなやり取りをしているのかと、ちょっと心配ではありましたが、いつもこざっぱりとして帰ってくるので、理容師さんにも何とか理解してもらえているのだろう、床屋に関してはすっかり自立した、と安心しきっていたのです。

 

息子は、私が驚いても、さほど悪びれるでもなく、「バリカンで??」などとおどけている。「床屋さんには何と言ったの」と聞いても、そういう説明は彼には無理なのです。あまり突っ込んで尋ねても、息子が傷ついても困るし、坊主頭が悪いと思い違いをされても困るので、あまり悲しい顔はできません。

おそらくは、「短くしてください」と頼んだら、「バリカンで?」と理容師さんに聞かれた。わけもわからず「はい」と答えた……といったところなのではないか。憶測するばかりです。

 

今日はたまたま、刑務所の話を聞いてきたのです。服役を終え出所した人の社会復帰を支援しているシスターの講話でした。なぜか、息子が受刑者のように見えてしまい……、ショックです。

話が通じているようでも、見かけと違って、息子の理解能力はかなり低い。そのことを改めて思い知らされたこの一件。いえいえ、行き違いがこの程度のことですんでよかった。そう思っておきましょうか。

髪が伸びるまでの1ヵ月、母は反省しながらじっと我慢の毎日です。

 


東国原さんみたいで、とても正面からの写真はお見せできません。

ただひとつ、頭の撫で心地だけは快感ですけどね。

息子は今夜も、何事もなかったように、ルーティンの食器洗いをしています。



自閉症児の母として(53):「息子の頭が……」の後日談。2018年10月29日

 




息子は、坊主頭にした1週間後、「のどが痛い」と言い、37度台の熱を出して、仕事を休みました。頭が涼しくなりすぎて風邪を引いたようです。

大したことはなく、薬を飲んで翌日には平熱になり、元気よく出勤していきました。

 

その5日後、私も同様の風邪をひいてダウン。まだ治りません。

 

その3日後、次男ものどの痛みを訴えて、風邪がうつったようです。

 

明日あたり、夫が危ない……?

 

坊主頭を疫病神のように言うつもりはありません。

むしろ、坊主頭になった息子にショックを受けたこと自体が、偏見だったかもしれない。そのバチが当たったかな、と思っています。

仏の教えを説くお坊さんにしても、元気いっぱいの高校球児にしても、スタイリッシュなスキンヘアで活躍する人々にしても、受刑者とは無縁の存在です。たまたま刑務所の話を聞いた直後だったので、悪いイメージが先行してしまいました。ごめんなさい。

 

朝晩冷え込むこの時期、風邪が流行っているようです。

皆さんも、くれぐれもご用心くださいね。

 




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