自閉症児の母として(50):映画のご紹介 ― 2018年09月08日
とても興味深い映画が、昨日から全国で上映されています。
私も先ほど知ったばかりで、まだ見てもいないのですが、ご紹介させてください。
『500ページの夢の束』という映画。
公式サイトの紹介文は、次のように始まります。
大好きな『スター・トレック』の脚本コンテストのためにハリウッドを目指す、自閉症のウェンディ。初めての一人旅には、誰にも明かしていないホントの目的が秘められていた―
これだけで、見てみたいと思いませんか。
ウェンディを演じるダコタ・ファニングという女優さんは、子役の頃からその愛くるしい名演技で注目されていたようです。そんな彼女が、どんな自閉症者を演じて見せてくれるのかも、興味がふくらみます。
ダイアリーエッセイ:秋分の日 ― 2018年09月23日
気が遠くなりそうな忙しさの中にいる。山積の仕事が、雪崩を起こしそう。
どうしてこんなことになったのか。
気がついたら、9月下旬の10日間のなかに、教室が3つ。さらに、原稿締め切りがあり、紙面編集の締め切りがあり、エッセイ募集の取りまとめがある。6名分の作品集もおんぶにだっこさせられている。おまけに、何もこの時期でなくてもいいのに、自閉症者の母としての講演もある。もちろん美容室の予約も、長男の誕生会のためのレストラン予約もある。
関係者の皆さま、誤解のないように。どれもみんな、私の大切な仕事で、どれ一つ、嫌なものはないのですが。
私のスケジュール管理がずさんだったのかもしれないし、たまたまのことなのかもしれない。
「忙しい」という字は、心を亡くす、と書く。
こんな時期だからこそ、日曜のミサにあずかり、内省と祈りの静かなひと時を持つ。
主のいない母の部屋に行く。
荒れた庭にも、今年も忘れずに彼岸花が咲いている。
ああ、今日は秋分の日なのね。だから、明日は振り替え休日。そんなことも忘れていた。「忘れる」という字も、心を亡くすと書く。
こうやって、今の気持ちをつづってブログに載せ、パソコンの向こう、訪れてくれる人に思いを馳せることも、大切な時間なのだと気づく。
皆さん、お変わりありませんか。
さて、夕飯のしたくの前に、もうひと頑張り。仕事に戻ります。
自閉症児の母として(51):自閉症児を抱えた若いお母さんたちへ ― 2018年09月28日
今日は、長男が3歳から通ってお世話になった療育施設で恩返しをしてきました。
現在、そこに通園している自閉症児のお母さんたちに、先輩母として、お話をさせてもらったのです。十数名の若いお母さんたちは、話を始める前から、もう目が潤んでいる。人の十倍泣き虫の私も、それを見ただけで早くももらい泣き……。
それでも、将来に対する不安や、兄弟間の問題など、困っていることを少しでも軽くしてあげたいという思いで、体験をお話ししました。
この施設では、母親ももちろん勉強でした。わかりにくい自閉症児の育て方を学びます。最初に教わったのが「受容的交流方法」。それは、あるがままを受け入れて、心を通わせていくという子育ての基本でした。
キーワードは3つ。「安心」をさせて、「経験」をさせて、自分の意思で行動できるように、ひいては「プライド」を持って生きていけるようになることが目標です。
子育ては自分ひとりではできません。みんなに助けてもらいましょう。
家族だけではなく、親戚、ご近所、学校、地域の人々……みんなに理解してもらい、見守ってもらい、助けてもらいましょう。
そう教わってきました。
私たち親子も、思い出すまでもなく、感謝してもしきれないほど、温かい人々に支えられた歳月でした。
「私も、『うちに子に限って、どうして?』ってずいぶん思いましたよ」
と、私が口にしたとたん、ほぼ全員がハンカチを取り出していました。そう思わなかったお母さんは一人もいないのです。
当時の園長先生は、私たちにこう言いました。
「自閉症児は、1000人に一人の割合で生まれると言われています。皆さんが大変な思いをして育てているからこそ、他の999人のおかあさんがフツウの子育てを楽しんでいられる。つまり、皆さんは、1000人の代表として自閉症児を育てているんですよ」
ああ、私たちは神様に選ばれたんだ、と思えた。代表としてのプライドを持って、この子のために前を向いてがんばろう、と思えたのです。
さて、何人のお母さんにわかってもらえたでしょうね。
写真はおみやげにいただいた、自閉症者のアーティストの絵はがき。