ロンドン旅のフォトエッセイ ③ ストーンヘンジへ ― 2026年07月20日
昨日の朝は早起きをして……というより、朝早く目を覚ましてしまう残念なお年頃なので、4時半ごろには目覚め、思い切ってそのまま起床。テレビをつけました。サッカーワールドカップの3位決定戦が、日本時間の午前6時から始まります。
今回のW杯は、順当に世界ランク1位から4位までのチームが準決勝まで勝ち残りました。
準決勝で敗れた世界ランク3位のフランスと4位のイングランドが、3位決定戦で対決するのです。すっかりイギリスびいきの私、もちろんイングランドを応援しました。
結果はもうご存じのとおり、イングランドが6対4で勝ちましたが、高得点の試合運びはじつにおもしろかった! 前半で4点を獲得したイングランドが後半で1点差まで追い込まれ、どうなることかとはらはらしたり、それでもフランスのエムバペ選手の卓抜したプレーには、ほれぼれしたり。
そんなわけで、今朝も午前4時に起きて決勝を観戦。アルゼンチン対スペイン戦です。
ところが、前日の試合のおもしろさに比べ、何かすっきりしません。互いにゴールが決まらないだけではなく、ボールを保持すると、当然のように背中から倒される。かと思えば自分から相手を背負うようにして見せかけのファウルを誘う。どこまでが許され、どこからがファウルなのか、にわかファンには判別がつかない。これが、こんな姑息な手段で勝ちに行くのが、ワールドカップの頂上決戦なのだろうか……、と落胆にも似た気持ちで眠気をこらえて見ていました。

長い前置きでした。
イギリス南部の広大な草原の中にある遺跡、巨大な石を円形に並べたり、積み上げたりした構造物です。紀元前3000年から2200年にかけて造られたと考えられており、1986年に世界文化遺産に登録されています。
現在、イングリッシュ・ヘリテージという英国政府の団体が保護管理をしているので、そのサイトのアプリから、日本語で解説を聞くこともできます。
イギリスに着いた翌日、ロンドンから車で2時間ほど、現地のバスツアーに参加しました。
大型バスにはヨーロッパ各地からの観光客(たぶん)がほとんど。バスの半分ぐらいを占めているでしょうか。日本人はいません。
ドライバー兼ガイドのジョンさん、なまりの強い巻き舌英語で話してくれるのですが、なかなか聞き取れず、それでも集合時間の「5時5分前」だけはキャッチ。さらに、「10分以上遅れたら、置いていく」と言うのも聞き逃しませんでした。
バスを降りた所で、彼にもう一度確認すると、「大丈夫、あなたのことは待っていますよ」と、ニコッと笑ってくれたので、ひと安心。東洋の小さなおばさんを置いていかないでね。
道中、あいにくと雨が降り出して、フロントグラスにたたきつけていましたが、到着する頃には止んでくれました。

バスが停まった場所は、ビジターセンターの近く。レストランやショップ、遺跡解説のパネル展示や、出土品の展示コーナーなどもあります。
まずは、真っ先に遺跡を目指します。
歩くと20分はかかり、シャトルバスもあるそうですが、360度見渡す限りの牧草地が広がって、気持ちの良い風が吹いているので、歩いていくことにしました。まっすぐな道が、木立に向かって続いています。

地平線には牛の群れ。





真っ青な空を背景に、ダイナミックな雲と、微動だにしない石の列。
誰が、何のために、どうやって。謎はまだまだ残されています。
石の重さは30トンを超えるものもあるとか。最も高い石は地上7メートル以上あり、しかも2.5メートルが地中に埋まっているそうです。
さらに驚くのは、この巨石が20キロメートル以上離れた場所から運ばれているというのです。小さな石でも、240キロも離れた場所から来ているそうです。
大勢の人々が関わる、大掛かりなプロジェクトだったのでしょう。
それらは、長い時代を経て、さまざまな民族によって行われたということなのかもしれません。
これまでの発掘調査でわかっているのは、火葬された人骨があることから、墓地としての役割があったこと。
明らかに、夏至の太陽を意識した配置になっていることから、天文学的な知識、暦のようなものを持っていたこと。夏至や冬至にここで祭りや儀式を行っていたのではないか、ということ。

▲この石はヒール・ストーンと呼ばれ、太陽の動きに合わせて配置されています。夏至の日、ストーンサークルの中からは、この石の方向に日の出が見えるそうで、そのための目印になっているといえます。
世界遺産に登録されてからも、ふだんはサークルの内側には進入禁止ですが、夏至の日だけは無料開放されて、大勢の人々が集まり、中に入り、巨石に触れ、日の出を見ることができるのだそうです。
アプリのガイドに従って歩いていたら、なぜか柵の外側に導かれ、また引き返してきて近寄りました。そんなこともあって、時間がかかってしまったので、帰りはシャトルバスに乗り、ビジターセンターまで戻りました。
無事に定刻にジョンさんのバスに乗り込むことができました。
帰りの車中では、ロンドンの見るべき観光地の情報も教えてくれましたが、そのたびに、
「私の名前はジョンです。ぜひツアーのコメントをよろしく!」を繰り返していました。
ふと、私がストーンヘンジの存在を知ったのはいつだったのかと、思い巡らせました。
思い当たったのが、イギリス映画「テス」。ナスターシャ・キンスキー演じる主人公のテスが、不幸な運命に翻弄され、思い余って人を刺し殺してしまう。その部屋から逃げ出した後、階下の天井の赤黒い血のしみが少しずつ広がっていく映像をなぜか覚えているのです。そして、最後のシーンに石の立ち並ぶ不思議な遺跡が出てきました。それが初めて見たストーンヘンジでした。
半世紀もたって、私は実物を目の当たりにしました。
日本からイギリスへと向かった旅は、時間を遡る太古への旅でもありました。