『なしのはな』が咲いて ― 2016年11月14日
この秋、『なしのはな』第6号が咲きました。
もう16年も続いているエッセイクラブ稲城の作品集です。
3年おきに発行されて、今回で6回目となります。

毎回、過去3年間に書き溜めた作品の中から、自選の2編を掲載します。
講師の私は、最終的な推敲や、校正のお手伝いはしますが、メンバーみずから印刷所との交渉にあたり、名実ともに自主的な運営を手掛けています。
そして、今回はさらに、書店での販売にも乗り出しました。
もちろん出版コードが付いているわけではないので、その類の本を扱ってもらえる市内の本屋さんに交渉し、1冊330円で店頭に置いてもらうことになりました。
作品集はけっして販売目的で作っているわけではありませんが、エッセイとはそもそも、一般の人々に読んでもらうために書くものですから、一人でも多くの読者の目に触れることも必要です。
そういう意味で、今回の新しい展開は画期的です。
急に話題になるとか、即完売してしまうとか、期待しているつもりはありません。ただ、エッセイに目を向ける人、エッセイクラブ稲城に興味を持つ人が一人でも増えたら、講師の私もうれしいことと思っています。
大型書店のコーチャンフォー、お近くの方、覗いてみてくださいね。
来年の1月31日まで販売しています。



自閉症児の母として(37):保育士や教諭を目指す学生さんに向けて ― 2016年11月22日

昨日は、千葉県松戸市の聖徳大学に出向きました。
「障害児教育」の講義の中で、テキストの一つとして私の著書『歌おうか、モト君。』を読んでもらい、障がい児の母として、お話をさせてもらいます。
年に1度か2度、ここに来るようになって、もう10年近くなります。
今回も、5時限目の時間帯、3クラス合同の100名ほどの女子学生さんが、新館の階段教室で、教壇に立ってマイクに向かう私を見下ろしていました。
学生さんたちは、初めは長男と同じ年頃だったのに、だんだんと若い「女の子」になってきて、同じ話をしても、以前はもっと受けたはず……と思うことも増えました。年齢だけでなく、若い世代の状況も変化しているのかもしれません。
それでも、現在の長男の仕事ぶりを、写真を使って説明し、
「時給いくらでしょう?」
という質問をすると、700円かな、800円かな……と興味しんしん。
「正解は、438円です」と言うと、安過ぎ!とびっくり。
そして、10年前と変わらない、彼女たちに共通する思いの一つに、
「もし、生まれてきた自分の子どもが障害を持っていたら、どうしよう。落ち込んでしまうかも……」という心配があります。
「ぜったい大丈夫。母親になれば、この子は自分が何とかしなくちゃ、という気持ちが自然と湧いてきて、がんばれるものですよ」
先輩母としての私の言葉に、ちょっぴり安心した表情を見せてくれて、私もほっとするのです。私だって、どれだけ涙を流したか知れません。それでも、前を見て立ち上がれる強さが、母親には備わっているのだと信じています。
私の書いた本と、この日の私の体験談が、いつの日か、彼女たちの仕事や子育てのなかで、ほんのひとかけらの支えにでもなれば、と願いを新たにして、小雨の夜道を帰ってきました。
