ダイアリーエッセイ:誕生月 ― 2017年12月03日
早くも12月になりました。
師走に忙しいのは当たり前で、私は午年の講師、走りまくります。
さらに12月は、私が誕生日を迎える月。
まずはあっちのお店、こっちの企業から、「すてきなバースデープレゼント」と称して、割引やポイント追加のお知らせがたくさん舞い込みます。これをラッキー!と思って買い物していたら、誕生月貧乏になること請け合い。それでも、せっかくだからと、財布と相談しながら、ちょっとだけ安くなる買い物を楽しむこともあり、心浮き立つ忙しさです。
昨日は、同じマンションの仲良し4人組で、まだ早いのだけれど私の誕生日を祝ってもらいました。
毎年、この日はどこかのイルミネーションを見に行きます。今年は、渋谷の代々木公園ケヤキ並木の「青の洞窟」。
点灯時刻の17時に間に合うように出かけて、待つこと数分。すっかり暗闇に目が慣れた頃、突然青い光が頭上から降ってきて、それはちょっと衝撃の一瞬でした。
光沢のあるシートを敷いて、水面が光を反射しているかのように見せる工夫がされているのですが、残念ながら人が多くて、そこまでは……。
冬の空気が冷えて冴えわたり、空には綺麗な月が浮かんでいます。
ケヤキの枝越しに見あげれば、まるで青く光る細い指が、真珠の粒を摘まもうとしているようでした。
その後は、地元に帰ってきて、地元には珍しくおしゃれなレストランで、フランス料理をいただきます。
自家製ハムのパテも、お魚のポアレも、どれもリッチで大満足。
バースデープレートには、小さなオルゴールの生演奏まで付いています。
そして、これも毎年恒例、仲間から手作りのバースでカードをもらいます。
この一年間の写真が満載で、メッセージにはこの年を振り返っての出来事や、温かい励ましの言葉がつづられているのです。
12月は、年をとるのはいやだけれど、毎年こうやって、やさしくて楽しい仲間がいて、美味しい幸せがあれば、何歳になろうともうれしいものです。
「いつか、みんなで認知症のグループホームに入ろうね」
などと、冗談とも本気ともつかない未来を語り合いながら、最後は笑い転げて終わる私たちでした。
600字エッセイ「母の生きがいは」 ― 2017年12月10日
母の生きがいは
母は、わが家と同じマンションの4軒隣で、病気もせずに独り暮らしを続けてきた。子どもに迷惑はかけない、というプライドが支えだったのだろう。
ところが、昨年93歳で胃がんが見つかり、胃の3分の2を摘出する手術を受けた。それもつかの間、今年になってこんどは大腿骨骨折で手術。何ヵ月もの入院のたびに母の体は弱った。「人生の最後に来て、こんな大変なことになるなんて」と嘆きながら、独り暮らしが難しくなり、この秋、ホームに入居した。広くて明るい個室で、きめ細やかな介護を受ける。
家に帰りたいとも言わず、穏やかな表情をしているのだが、どこに行きたい、何かしたいことは、と聞いても、「おさらばしたい」と言うばかりで、生きる気力をなくしてしまっている。
それでも、訪ねていけば開口一番、「風邪は治ったの?」と、私の健康を気遣い、「あの子はちゃんと学校に行ってるの?」と、孫の心配を口にする。そんなときは、ちょっとだけ以前の口ぶりを取り戻しているようだ。
先日、NHK大河ドラマで、直虎の母が自分の最期が近いのを悟って、呟いた。
「ずっとそなたのことを案じていたかった……」
いつの世も、母親は死ぬまで子どもの心配をすることこそが、生きがいなのだ。そう思うと、テレビの前で涙が止まらなかった。
エッセイ集『たから貝』の誕生 ― 2017年12月21日
今日は朝からそわそわ。月に一度の湘南エッセイサロンの日です。
寒い朝でしたが、空は青く、途中の小田急線の窓から、大きくて美しいほんのり雪化粧の富士山も見ることができました。
湘南エッセイサロンは、4年前、ママ友から別のママ友へ、同窓から同僚へ、先輩から後輩へと、それはそれはたくさんのご縁がつながれて生まれた女性8名のお仲間です。
さらに、会場となったのは、私の育った湘南の地。藤沢市の海からほど近いお宅でした。
私は不思議なご縁に導かれるように、講師を引き受けました。
そして本日、そのサロンに初めてのエッセイ集『たから貝』が誕生しました。
この数ヵ月、これまでの作品の中から、ひとり3編のエッセイを選び、とことん推敲を重ね、合評を繰り返して、作品を磨きあげてきました。
エッセイ集の名前は、湘南の地で生まれた宝物のよう……ということで、
『たから貝』と決まりました。
表紙のクリーム色は、7色の見本から、皆さんで選んだものです。
創刊号の編集だけは、手始めに私が手掛けることにしました。
いざ始めてみると、あれもこれもとこだわりたくなる。自由にイメージを膨らませてデザインさせてもらいました。
意匠をこらしたのは、作者ごとの扉のページ。他ではなかなかお目にかかれないオシャレな出来栄えに、ひとり悦に入っております……!
(写真右側は、裏表紙です。写真が見づらくてごめんなさい)
さらに、偶然にも、今日は私の○●回目の誕生日。
サロンでお祝いの花束まで頂戴して、二重の喜びの一日となりました。
自閉症児の母として(46):福山くんの「トモエ学園」を聴いて♪ ― 2017年12月30日
ちょうど1週間前の金曜日の夜、息子がテレビ朝日の「ミュージックステーション スーパーライブ2017」を見ていました。彼が毎週欠かさず見る番組の一つで、私のお気に入りのアーティストが出てくると、教えてくれるのです。
その夜は、福山くんで呼ばれました。歌うのは、「トモエ学園」という曲。黒柳徹子さんの自伝的ドラマ『トットちゃん!』の主題歌だとか。ドラマはちらりと見たことがありますが、曲は聞いたことがありません。
バイオリンのイントロで始まりました。
うれしいのに さみしくなる
たのしいのに かなしくなる
子どもの頃の学校を懐かしんで、感謝する気持ちが歌われていきます。
そして……
わたしたち 違うんだね
顔のかたち 心のかたち
歌詞を見ながら聞いているうちに、私は涙が出てきました。
息子たちの歌だ、と思ったのです。
自閉症に限らず、障害者すべての歌だと思えました。
先生 友達 わたしの明日 作ってくれたの
学び舎の日々 ありがとう
黒柳さんは、子どもの頃、今でいう学習障害だったそうです。
そんなトットちゃんを、じょうずに育んだ先生方は、息子がお世話になったすべての先生と重なります。
福山くんは、明るく楽しくというよりも、彼の精いっぱいの誠実さを込めて、バイオリンの演奏とともに、ろうろうと真面目に歌い上げていきます。
彼の歌は、力強くまっすぐに、息子たちを肯定しているように感じられました。
彼はミュージシャンとして、これまでより、ひとまわり大きくなったのではないでしょうか。
今年も、私の中にたくさんの歌を取り込んでは、人生の彩を感じてきました。
音楽は、心のビタミン。それがなかったら、心は干からびて体まで栄養失調になってしまいそう。
今年最後に、思いがけず、すばらしい歌と出会いました。
大晦日の紅白でも、彼はこの歌を歌ってくれます。
皆さまも、ぜひぜひお聴きくださいね。
そして、自閉症児の母の心にシンクロしてくださったら、うれしいかぎりです。
この一年、なかなか時間がとれず、気持ちの余裕もなく、思うように書けませんでした。書きたいことをずいぶん置き去りにしてきました。
そんな私のブログに、わざわざ読みに来てくださって、本当にどうもありがとうございました。
どうぞよいお年をお迎えください。