エッセイの書き方のコツ(32):繋げて広げて2018年08月31日




昨日は、海風さわやかな駅に降り立ち、湘南エッセイサロンでした。

メンバーのMさんが、こんな素敵なドイリーを作ってきてくれました。



かぎ針を使うレース編みとは少し違って、タティングレースというそうです。手のひらの中に納まるぐらいの糸巻きを、2本の指に渡した糸にくぐらせながら、さまざまな結び目をこしらえては、模様を大きくしていくのです。

鋭い針を使わないので、テレビを見ながらでもできるし、揺れる車内でも扱える手軽さがおすすめ、とのことでした。

私も手芸は好きでしたから、10年前なら試してみたかもしれません。でも残念ながら、今はボタンを留めるのも痛みが走るほど親指の関節炎がひどいので、諦めました。

 

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そのMさんの昨日のエッセイには、とても印象的なシーンがありました。

テーマは「泊まる」。近所に住んでいた少年がアメリカに移住して8年目、アメリカ人の友人と二人で日本に遊びに来て、わが家に泊まったというお話です。

彼は、アメリカ人と日本人とのハーフで、美少年。そのせいか、いわれのないいじめを受け、辛い子ども時代を送ったのでした。

だから日本には友達もおらず、本当はあまり来たくなかったという彼。そんな彼を説得して一緒に来た友人は、日本のコミックやアニメをすばらしい日本文化だと言う。

日本で何がしたいの、と聞くと、手に持ってする花火だと答えが返ってきました。

 

二人の少年は長いこと飽きもせず、線香花火のチリチリと燃えていく様を見つめていた。

 

このくだりには、二人にそそがれるMさんのやさしいまなざしが感じられます。日本では幸せではなかった少年を案ずる気持ち、いつかはコミックを通してでもいいから、長い歴史のある日本文化にも目覚めてほしいという思い。それらが線香花火というはかなげな情感をともなって、読み手の心に届けられるのですね。

 

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線香花火で、皆さんは何を思い出すでしょうか。

私は、この花に思いを馳せました。


 

その名はフウリンブッソウゲ。2016919日の記事でも、紹介しています。風鈴に似ているから付けられた名前のようですが、私は目にしたとたん、「線香花火みたい!」と思ったのでした。

夫が鉢植えを大事に育てているので、毎年きれいな花をつけます。

今年は、茎が1メートル以上にもなり、庭に置いています。さすがは南の花、猛暑をものともせずに、毎日たくさんのつぼみを付け、1日咲いては落ちるのです。今日は4つの花が咲きました。

 

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ドイリーに始まって、Mさんのエッセイ、庭の花へと、連想は糸のようにつながっていきます。そうやって、文章を広げたり膨らませたりして、一つのエッセイへと整えていくこともできそうですね。

手の中の一すじの糸が美しい模様になり、まるいドイリーに形を変えていくように。



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