中国の旅のエッセイ:「本場で食べてみた」2025年11月14日


エッセイの勉強会で、「ラーメン」とうテーマが出ました。

本場中国から帰って来たばかりで、書かないわけにはいかないでしょ……と、腕まくりしたエッセイです。

 



本場で食べてみた

 

5年前から中国の上海に単身赴任していた娘が、ようやく転勤することになった。

101日からの国慶節が最後だから、一緒に旅行しない?」と誘ってくれた。

 

昨年の11月にも夫と上海の娘を訪ねている。まったく言葉の通じない中国で、右も左もわからない2人のために、娘は休みをとり、5日間の計画を立てて、連れ歩いてくれた。初中国は予想どおり何もかも刺激的だった。

中国料理は大いに期待していった。娘がたくさんの情報を集めては、ここぞという店に出かける。ちょうどシーズンだった上海蟹に始まって、北京ダック、ちょっと高級な広東料理から庶民の朝食の小籠包まで、ひとつとしてハズレはなく、大満足だった。 

 

さて、今年は何を食べようか。去年食べ逃したものに、麺類がある。

「今度こそ本場のラーメンを食べよう」と、麺キチの夫もうれしそうだ。

着いた翌日は、上海から新幹線で小1時間の蘇州へ出かけた。どこもかしこも聞きしに勝る中国国慶節の混雑に出合う。今頃日本にも中国人観光客があふれていることだろう。

ここには有名な蘇州麺がある。古い街道沿いに何軒も店が並ぶ。老舗風の店に入った。テーブルには、皿やコップ、箸などを一人分ずつラップに包んで置いてある。これも70円ほどの料金がかかるのだ。

さっそく娘がメニューを読み解き、麺とトッピングを適当に選んでくれた。運ばれてきた麺は、日本のラーメンのように縮れてはいない。まっすぐな麺の束を丸めた形で丼に入れてある。野菜炒めとカニの卵とじを麺にのせ、さらに別添えのスープをかけていただく。

こちらの箸は先端でも五ミリほどの太さがあって、扱いにくい。1杯の麺を娘と2人で分けようとしたけれど、ひと苦労だった。

私は顎関節炎になって以来、硬い物が食べにくくなった。しこしこした麺の歯ごたえは苦手だが、この蘇州麺は食べやすい。

「ラーメンとそうめんを足して2で割ったような食感ね」

スープも辛くない。どろっとしたカニみそ風のトッピングもおいしかった。

記念に持ち帰った赤い箸袋の裏面には「一人一箸・健康新理念」と書いてある。「食器は消毒済みですので、安心してお使いください」とも。コロナ禍の教訓なのかもしれない。


▲水郷のある蘇州の街並み。赤い提灯が映える。

 

そして上海を去る日にも、空港内の有名チェーン店で最後の麺を味わった。娘の一押しの牛肉麺だ。これは、蒸した牛肉の薄切りが何枚も麺の上にのっていて、さらに好みでパクチーをどさっと入れる。蘇州麺の教訓から、1人1丼にした。

はて、箸がない。店の人に尋ねてみて気づいた。テーブルの下に、学習机のように引き出しがある。開けると、何本もの箸がむき出しのままケースに入っていた。一瞬だけ衛生面が気になったけれど、中国も2度目ともなれば、「まあいっか」と食べてしまえる。

ほど良い辛さと、お肉のだしのまろやかさ。これでほぼ600円なりの安さにも感激。

さすがは中国3000年の味でした。


▲牛肉麺を食べた陳香貴という店舗。上海の浦東国際空港内にある。



 


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