映画『この国の空』を観る ― 2015年08月18日

新井晴彦監督の映画『この国の空』を観てきました。
戦闘シーンのない戦争映画。銃後の人々を静かに描いた作品です。
隣の席のオジサンは、退屈したのか寝息を立てて眠っていました。
エンドロールのときに、ヒロインの里子が茨木のり子さんの詩を読みます。
わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった
わたしが一番きれいだったとき
誰もやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差だけを残し皆発っていった
わたしが一番きれいだったとき わたしの国は戦争で負けた……
里子の周りから、子どもやお年寄りはみな疎開していき、若い男性は赤紙が来て戦争に行ってしまう。19歳の里子は、38歳の妻子ある男性に、青春の血を燃やすしかなかった。
ふと、私の母も彼女と同じ年頃だったことに気がつきました。母も22歳で終戦を迎えています。
もう、モンペじゃなくてスカートをはいていいんだ、ということがうれしかった。でも、はこうにもスカートは一着もない。オシャレをしたくても、何もなかった、と言います。
私は、きらびやかな物であふれかえっている都会の街を歩く気にもなれず、重い気持ちで帰宅しました。
