自閉症児の母として(62):息子の子育てについて話しました。 ― 2019年12月14日
12月11日(水)に、東京都発達障害者支援センターで行われた支援員研修のなかで、自閉症児の母として、お話をさせていただきました。この講演も、ここ数年の恒例となっています。
このセンターは、息子が成人しても通い続けて療育を受けてきた「嬉泉」という社会福祉法人が、都の委嘱を受けて運営しています。まさに息子は療育のモデルそのものなのです。
お話しするテーマは、「子育てを通して親が学んだこと」。
つまり、私としては、この施設で受けた療育のおかげで息子がどのように成長したか、親は何を教わったかをお話することになります。
毎年、私がいの一番に伝えたいことは、子どもをあるがままに受け入れる「受容的交流方法」という障害児との関わり方。当時は、まるでイソップ童話の「北風と太陽」のようだと思いました。
息子は、入園したばかりの頃は、朝、登園しても、母親と離れることを嫌がりました。「それなら、お母さんも一緒にお部屋に張りましょう」と先生。
やがて何日もたってから、私は頃合いを見て部屋から出て、窓からのぞいています。「ほら、お母さんはあそこにいるから大丈夫」と、先生は泣いている息子をなだめます。また何日もかけて、その時間を短くしていって、母親と離れられるようになっていったのです。
たくさん安心させて、母親や先生に関心を持ってくれた頃に、ようやく声掛けが生きてくる。こちらの言うことに耳を傾けるようになる。言われたことをやってみて、新しい経験をする。自分からその行動ができるようになる。自発的にプライドを持って行動できるようになる。
安心→経験→プライド。その後30年に及ぶ子育てにおいて、この3つのキーワードを実践することが基本であり、何より大切だったのではないかと思っています。
前回の講演の直後に、息子は自立という大きな節目を迎えることができました。
2年間、月に一度の宿泊体験を積んだ後、グループホームに入所して、約10か月がたちました。小さな問題はあるにしても、息子本人は、プライドを持って毎日の生活を楽しく送っているようです。
3歳の時からの療育が、実を結んだのです。
今回、そのお話をしました。まさに「三つ子の魂百まで」ですね。
後日、研修を受けた支援者の方々の感想が送られてきました。その中で、2、3歳のお子さんを担当している方が次のように書かれていました。
「お子さまも保護者も、自ら考え選択して生きていくこと、そしてそれを見守る支援者の存在の大切さを学びました」
「発達の土台となる時期でもあり、とても大事な時期に携わっていることを改めて強く意識しました」
私の思いが伝わったのだと思います。
いつかきっと、私の子育て経験が、支援者を通して生かされる日が来ることを心から願っています。


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