ダイアリーエッセイ:WBC準決勝を見て2023年03月21日

 

WBCの頂点を目指す侍ジャパンの戦いを、1次ラウンドからすべて、テレビの前に貼りついて見てきた。

大谷選手も、一躍人気者になったヌートバー選手も、もちろん目が離せないのだけれど、中でも気になったのは、絶不調に苦しむ村上選手の姿だった。

彼を見ていて、ある記憶がよみがえってきたのだ。

 

小学6年の時のことだ。学年全員で横浜市の体育大会に出場することになって、その練習を続けていた。競争ではなく演技のひとつに、4段の跳び箱を跳び越えていく種目がある。どのグループも一人ずつ同じ速さで進んでいけばいいのだ。

それが、なぜか急に跳べなくなった。

お転婆の私は、4段どころか5段も6段も跳べていたのに、跳び板まで走っていって手をつくと、ふっと固まってしまう。何度やってもどうしても跳べない。

「そのうち、また跳べるようになるから」と、先生は苦笑いでスルーしてくれて、跳び箱の横を走りぬけるしかなかった。

そして大会当日、私はどうなったか。

ないのだ、その日の記憶が。ないところを見ると、きっと跳べなかったのだろう。屈辱の記憶だからこそ、抹消してしまったのだと思う。

 

さて、本日の侍ジャパンVSメキシコの戦い。あいにく家族もいないし、朝からビール片手にというわけにもいかない。それでもドキドキしながら孤独な応援を続けた。

4回表に3点も先制点を取られて、なかなか返せない。ようやく吉田選手の3ランホームランで同点に持ち込んでも、次の回でまた1点取られてしまう。

村上選手の不調は、準々決勝で2回のヒットを放ち、復調したかに見えた。が、今日もやはり不調気味で三振が続く。

彼がわが子のようでもあり、遠い日の自分のようでもあり、バッターボックスに立つたびに、今度こそ、今度こそと祈り続けた。

1点差で迎えた9回裏、もう後がない。彼は日本中のファンの祈りを受けて、ついにタイムリーにヒットを放ち、サヨナラ勝利を決めることができたのだ。

その瞬間、滂沱の涙が止まらなくなる。よかったね~、村上選手!

打順が回ってきたことも、その時に打てたことも、村神様はいたのかもしれない。でも、彼を信じた監督、不調な彼を支えてきたチームメンバー全員、応援し続けてきたファンのすべてが、神様となったのだと思う。



 

「岸田首相、本日ウクライナ電撃訪問」のニュース速報も入るなか、侍ジャパンの勝利と村神様の復活に酔いしれたひとときだった。

明日の決勝もがんばれ、侍ジャパン! 




copyright © 2011-2021 hitomi kawasaki