南フランスの旅のフォトエッセイ:⑮アビニョンの橋で♪ ― 2025年05月13日

フランスに来て4日目、ニースは早朝から真っ青な空が広がっていました。
郊外にある閑散としたサン・オーガスティン駅から電車に乗ります。


車両のドアまでが、まるで梯子段のようなステップなので、とてもスーツケースは持って上れない。どうしようかと迷う間もなく、後ろにいた男性が軽々と持って運び上げてくれました。Merci beaucoup!!



この駅は大きくて、混雑していました。朝ごはんを食べずに出発してきたので、おなかが空いて空いて……。でもお昼時で売店はどこも人がいっぱい。仕方なく自販機で、コインの投入がわからなくて、もたもたしながら、ワッフルを買ってみました。
これがまた、美味しい! さすがフランス! と感激。▼

途中マルセイユで乗り換え、4時間半ほどの長旅でようやくアビニョン中央駅に到着。駅ビルも売店もない、田舎の駅。
それでもすぐ目の前には、立派な城壁が続いています。並木や花壇が整備されていて、気持ちがいい。ホテルは駅からすぐなので、スーツケースを預け、さっそく城壁の内側へと広い道路を渡っていきました。


城壁の中には、古い街並みが今も残されています。▲
広場には、きれいな回転木馬も置かれていました。▼

その広場を抜けて、目的地の教皇庁宮殿へ。▼

時代は14世紀にさかのぼります。ローマ教皇庁が、いろいろとごたごたがあって、約70年間にわたってイタリアからアビニョンに移されていました。
その立派な教皇庁宮殿を見学します。世界遺産にもなっている建築物で、チケットを買うと、まずタブレットを渡されて首からかけます。それを見れば地図や見学ルートがわかるのだけれど、いかんせん広い敷地で、迷路のように入り組んでいて、工事中の場所もあったりして、階段を上ったり下りたり、重いタブレットは役に立たず、迷子になりました。
どうしても出口が見当たらず、入り口にたどり着いてしまうのです。こっそり出ようとすれば、係員に「出口に行きなさい!」と叱られる。ほかにも迷子の人たちがいて、一緒にうろうろしているうちに、何とか出口を見つけました。

こんな工事現場の通路も歩かされて……。 ▲
古めかしい石造りの建物にも、ラベンダーやアーティチョークなどなど、花や野菜の畑があって、ほっとできました。▼



やれやれ、と気を取り直して、さらに城壁を越えていくと、滔々と流れるローヌ川に、サン・ベネゼ橋が架かっています。これがあのアビニョンの橋。

アビニョンの橋で 踊るよ 踊るよ
アビニョンの橋で 輪になって 踊ろう
アビニョンという地名は、この童謡で、子どもの時から知っていたような気がします。
橋は、途中までしかないのです。ローヌ川が氾濫するたびに橋は壊れ、修復に大金がかかり、財政を圧迫。とうとう17世紀には修復を諦めてしまいます。
そんな哀れな橋ですが、今では教皇の宮殿とともに世界遺産となって、町を潤していることでしょう。




橋の上で、
「アビニョンの橋で、踊るよ、踊るよ♪」
と歌いながら、軽くステップを踏みました。
すると、近くにいたグループの女性たちも、
「ランランラー、ランランラー♪」
と、声を合わせて歌い始める。腰に手を当て、リズムに乗ってスキップする人まで現れて……。
ほんの30秒ほどだったけれど、同じオバサンどうし、言葉は違っても、子どもの頃の懐かしい歌で、ひとつになりました。そのことをだれもがわかったかのように、みんなで笑い合いました。
こういう瞬間が何よりもうれしくて、私は海外旅行が好きなのです。

南フランスの旅のフォトエッセイ:⑯エッセイ:ピカッと降りてきた ― 2025年05月19日
ピカッと降りてきた!
アビニョンからはバスで、旅の最後の目的地、リル・シュル・ラ・ソルグへと向かう。バスターミナルの906番から13時20分発のバスに乗って、約1時間だ。
駅の周りにはたくさんのバス停もあるし、乗り場もすぐにわかるだろうと、高をくくっていた。ところが、いくらバス停の時刻表を調べても行き先は見つからないし、行きかう人に尋ねても英語が通じなかったりで、またしても迷子になった。
「さっき、バスがそこの角を曲がったから、行ってみよう」
スーツケースをゴロゴロ引きずりながら歩いていったけれど、結局、駅をぐるりと一周してしまっただけで、それらしきものはどこにもない。
時刻は午後1時を過ぎている。20分発を逃すと、次のバスまで2時間待たなくてはならない。
その時、ピカッとひらめいて、思い出した。さっきのバスが消えた角に、倉庫のような建物があったはず……!
もう一度行ってみると、果たしてフランス語で「テルミネ」と書いてあるではないか。この建物内こそがバスターミナルだったのだ。バス停はバスターミナルにあらず。思い込みは恐ろしいのだと悟る。
薄暗い建物に入っていくと、いくつものホームが斜めに並んでおり、バスも何台か止まっていた。
窓口に駆け寄る。目的地まで大人2枚の料金を払って、係員に確認した。
「906番のバス、まだ出発5分前ですよね」
彼は時刻表を確認しながら、厳しい顔で「ノー」と言うではないか。もう出てしまったのだろうか。
「5分前ではない。10分前だ」。そう答えて、彼はニコッと笑った。
焦ってやって来た乗客はちょっとからわれて、ほっと力が抜けたのでありました。
やれやれ……

▼アビニョンで人気のジェラート屋さん、アモリーノ。ステキな薔薇の形に仕上げてくれます。

