エッセイの書き方のコツ(5)「結びは結ばない!?」2012年02月16日


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昨日に引き続き、文章の結びについて、考えてみましょう。

子どもたちの書く作文には、
「遠足はとても楽しかったです」
なんていう結びの文が、たいてい付いています。
エッセイは、いわば大人の作文。子どもの作文とは一線を画したいところです。
たとえば、紀行文。きれいな景色に感動したことや、おいしい郷土料理に舌鼓を打った話、あるいは一緒に行った仲間との珍道中……。いろいろと書いたあとで、最後に、
「とても楽しい旅行だった」と書きますか。
「忘れられない旅行になった」と結びますか。
どちらも書かなくていいのです。
楽しかったことを具体的に書いた後で、総まとめのように「楽しかった」と書くのは、よけいですね。つまり、蛇足。
忘れられないからこそ、書き残したくて、あるいはだれかに伝えたくて、そのエッセイを書いたのではありませんか。これも蛇足です。
学術論文ではないのですから、結論やまとめはいりません。
それを書かなくてとも、読み手は十分に作者の思いを感じ取ることができるはずです。
たとえば、「おみやげをたくさん抱えて帰った」と書いてあったら、楽しかったんだな、と感じられませんか。
「今でも春が来るたびに思い出す」と書いてあれば、忘れられない旅行だったことが伝わるでしょう。
まとめを書くより、余韻を残すこと。
それはつまり、読み手に文章を味わう余裕を与えること、といえるかもしれません。

書いた後で、文章の結びをもう一度チェックしてみてください。
なくてもいいことを、わざわざ書き足していませんか。


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コメント

_ 松 ― 2012/02/17 11:45

なるほど!

_ アメリカののろまな通信生 ― 2012/02/23 07:36

参考になりました。はい、私はSFです。早く、ひとみ先生のどきっとする過去の話を読みたいでーす!というのも、私も書いている最中で。。。エッセイは基本的には事実を書かねばなりませんが、素敵な文章にするために、どのくらいの色づけが許されるのでしょうか? いつかそのことについてのコツを教えてください。

_ hitomi ― 2012/02/25 22:15

SFさん、そうでした。「今だから書けるあの頃のエッセイ」を載せるという宣言をしたのでしたね。どきっとさせることはできないかもしれませんが……。でも、書きますね。SFさんの最新作も楽しみに待っています。ドキッとするのかしら?
エッセイの色付けは、読みやすくするためには多少必要な場合もあるでしょうね。

_ 西村弘之 ― 2012/04/13 16:20

私は69歳の中年?バックパッカーです。毎年世界各地を放浪してまわり、日本に戻り旅日記をまとめて紀行文として通っているエッセイ教室へ提出したり、同人誌に寄稿したりしております。今回のエッセイの書き方のこつ「結びは結ばない」多いに参考になりました。まとめを書いておりました。まとめを書くより余韻を残す文章にしたいと考えております。私の紀行文の書き方の小型ノートに転記させていただきました。ありがとうございます。

_ hitomi ― 2012/04/13 17:38

西村さま、うれしいコメントをどうもありがとうございます。
エッセイを書かれる方のお役にたてれば幸いです。いただいたコメントを励みにして、これからもコツシリーズを続けていこうと思います。

_ 村上 好 ― 2014/11/10 18:37

hitomi 先生

<文章の最後、つまり結びがとても大事です。明るく終わっていれば、読み手の読後感も明るくなって、気分がいいですね。>

<まとめを書くより、余韻を残すこと。
それはつまり、読み手に文章を味わう余裕を与えること>

とても大切なことを教わりました。ノートに書き込みました。
エッセイを書くときに心掛けたいと思います。

ありがとうございます。

村上 好

_ hitomi ― 2014/11/11 19:35

村上さん、
以前にコメントをいただいた西村さん同様、私の見解をおわかりいただけてうれしいかぎりです。お役にたてたようで、次の「コツ」を書く励みになりました。こちらこそありがとうございます。

_ (未記入) ― 2014/11/11 20:46

hitomi 先生

西村弘之様のコメントに

<私の紀行文の書き方の小型ノートに転記させていただきました。>

とありますね。気が付きませんでした。

69歳のエッセイストが2年半前にノートしたことを
64歳のエッセイストが同じように ノートしています。

感動するシーンです。

人生はこういうときのためにある、と思います。

石渡先生、ありがとうございます。

村上 好

_ hitomi ― 2014/11/11 21:14

村上さん、
ささやかな私のブログのコメント欄で、二人の紳士の偶然の一致。こういう神様のいたずらがあるから、人生は面白いのでしょう。ブログの主として、とてもうれしいハプニングですね。

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