自閉症児の母として(11):こだわりバトル!2013年03月19日

 

皆さんのご家庭では、子どもが両親のことを何と呼んでいますか。
お父さん、お母さん。パパ、ママ。おやじ、おふくろ……。

 

わが家は、長男モトの言葉の発達が遅くて、3歳になっても何とも呼んではくれなかったので、せめて簡単に「パパ、ママ」と言ってほしくて、親みずから、「ママにちょうだい」「パパとお手てつないで」のように使っていました。
そして、当然のようにそれが子どもたち3人の呼び方となりました。

 

やがて、下の娘が中学生ぐらいになると大人びて、「ママ」は照れ臭いのか、「お母さん」と言うようになりました。私もまた、いつまでも子ども扱いではなく、だんだんと友達感覚になってきていたので、自然と「母さん」と名乗るようになりました。

 

同じように、夫のことも、「パパ」と呼んでいたのがいつの間にか「お父さん」と呼ぶようになる。家庭での呼称は子どもが基準になっていて、成長とともに変化するものですね。

 

そのことにこだわりを持ったのが、自閉症のモトでした。
もうかれこれ45年前になるでしょうか。モトが何か気に入らないことがあって、ご機嫌斜めのときでした。
私が、夫に「お父さん!」と声をかけました。
すると、モトが、
「お父さんじゃないよ、パパだよ!」 と怒るように言ったのです。
それからというもの、私が「お父さん」というたびに、そばで「お父さんじゃないでしょ、パパ!」
と独り言のようにつぶやくようになりました。

自分を指して「母さん」という時も同様で、「違うよ、ママだよ」とダメ出しがある。しかも、私が不機嫌なときに限って。敏感な彼にはそれがわかるのでしょう。何かこごとを言おうとしているのを察知したかのように。
真剣な話をしようとしているときにでさえ、私が不機嫌なのだと受け取られ、彼のチェックが入るのはたまりません。
そのたびに、私はイラッとする。なおさら「パパ」なんて口が曲がっても言えないと思う。さらに私の不機嫌はエスカレートする……という具合。
現在も、それは続いていて、たびたび私の神経は逆なでされています。とくに、家族がそろう休みの日は最悪……。

 

しかし、何事にも変化を嫌うモトにとっては、一度覚えた名前が変わるのはおかしい。
自分が何歳になろうと、ママはいくつになってもママで、パパは死んでもパパ。

 

私が彼のこだわりに合わせて、「パパ、ママ」と呼べば波風は立たないはずです。わかってはいても、それはできない相談。いい年をした中年夫婦が互いをパパ、ママと呼ぶなんて、少なくともわが家ではありえない。
呼び方の変化は、単なる言葉というより、うちに含まれる感情の変化でもあるのです。
たかが言葉、されど言葉。「パパ、ママ」とは言わない。これは、私のこだわりです。

 

モトのこだわりと、私のこだわりのぶつかり合い。
母親が譲らないでどうする、おとなげない、とも思います。
でも、気持ち的にとっくに子離れしている私には、もう我慢をする気になれない。くつろぐはずの家庭で、四六時中我慢を強いられるのはもう御免。
モトも不快だろうけど、私もすごくいやだな……。
意地っ張りどうし、さてどうしたらいいのでしょうね。
家族はみな互いに名前で呼ぶ、というルールにでもしましょうか。



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コメント

_ suzuking ― 2013/03/19 13:11

以前に療育で一緒になったおかあさんから、
おもしろい話を聞いたことを思い出しました。

ひとみ母さんと同じ経験をしているその方は
「ママとパパは種ポケ、お父さんとお母さんは最終進化形」と
教えていました。中学生の娘さんのこだわりがポケモンカードだったのが
ラッキーだったようです。

育児書や医学のサイトにはない様々な工夫と苦労で育てられてるモトくん。
いろいろ発信してくださることが、新米ママ(!)の励みになることでしょうね。

へたるな!ひとみ母さん!!

_ hitomi ― 2013/03/19 21:36

suzukingさん、なるほど、進化形ですね! もっと早いうちに、きちんと説明しておけばよかったんですよね。普通の子どものように、なんとなく移行するということができないのでした。
はい、へたりません! いかにお互いが不幸にならずに、私のこだわりもキープできるか。その道を探っていきます。

_ Pecora ― 2013/03/19 23:24

夫の両親と同居しているので複雑です。お父さん、お母さんは義父母のことで私が自分のことをお母さんと呼ぶには年長の2人を私がおじいちゃん、おばあちゃんと呼ばねばならず・・・と面倒くさく結局私は自分を『わたし』と称しています。
で、子どもたちはパパ・ママの次になぜか『おじち』『おばち』と私たちを呼びます。
いったい何それ~~と最初は抵抗していましたが、すっかり定着してしまいました。
変でしょ(--;)

_ hitomi ― 2013/03/20 22:39

Pecoraさんのお宅も、複雑ですね~。なにより、お子さんたちが「おじち」「おばち」というのがおもしろい! おじちゃん、おばちゃんの略かしら。結局お子さんたちも「パパ・ママ」は卒業して、照れ隠しにふざけちゃったのかもしれませんね。
日本の呼称は本当に複雑で、暗黙のうちに変化していく。それが自閉症の息子には理解を超えているのだと思います。

_ Pecora ― 2013/03/20 23:19

変化を理解したくない、というのが何となくわかる気がします。
長男だけは、どうしても呼称を変えられないようです。
よって今は‘‘呼ばない‘‘、という手を使ってます。

_ hitomi ― 2013/03/20 23:46

Pecoraさん、
ねえ、とか、あのさあ、とか……? 
それもご長男の親離れの一つの形でしょうね。

_ 片割れ月 ― 2013/03/22 07:51

モト君のこだわりは解ります。なにも急に変えなくてもね~
70歳前後になる女房の姉夫婦もパパママと呼び合ってます。
子離れできてないのかも~
ちなみに、不肖私もいまだにパパと呼ばれてます。(*゚.゚)ゞポリポリ
次に呼び方が変わるとすれば、ジージとバーバかな(^_^;)

_ hitomi ― 2013/03/22 16:36

片割れ月さん、
今でもパパと呼ばれているとしたら、きっと若々しいお父様なのでしょうね!
でも、お孫さんができたら、翌日から「ジージ」になるかも……。案外喜んで受け入れてしまうものでしょうか。
私は、どうかしら……当分先のようで、想像がつきませんね。

_ kattupa ― 2013/03/25 09:30

外では「かあさん」家では「おまえ」。家内は外では
「おとうさん」家では「あんた」です。娘は「おとうさん、
おかあさん」ですね。
「パパ、ママ」は元々ありません。
なお、エッセイの表記は、いろいろでしたがこのごろ
は「妻」にしています。

_ hitomi ― 2013/03/26 10:04

kattupaさん、私たちは、状況によって、いろいろと使い分けができるものですが、自閉症者は、その状況判断、臨機応変ということが苦手なようです。

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