旅のエッセイ: 「トマム?」から「トマム!!」へ(2) ― 2012年09月05日
テレビをつけると、いきなり、大きな文字で速報が。
「現在、一部に雲海が発生しています」
身支度を整えている間に、画面は、「きれいに見えています」に変わった。
よし、行こう!
玄関には、おおぜいの宿泊客がバスを待っていた。
4棟もの高いタワーのあるこのホテル、星野リゾートトマムは、何百という客室があり、ウィンタースポーツはもちろんのこと、熱気球なども楽しめる大きな施設らしい。
バスを降り、ゴンドラに乗り込み、頂上へ向かう。冬はスキー客を乗せるのだろう。

ゴンドラが上昇するにつれて、見下ろす景色が広がっていく。
すでにホテルの玄関の辺りは白い雲に覆われていた。

そして、頂上に着く。しっとりとした心地よい風が吹いている。
テラスからの眺めに、ただただ息をのんだ。
確率50%といわれた雲海は、今、眼下の山あいを覆い、見事な景色を作り出していた。まるで、山の女神たちが白いうすぎぬをまとって、音もなくゆったりと舞いを続けているかような、たおやかで幻想的な眺め……。
天の国のようだけれど、2本のホテルタワーが雲の上に突き出ていて、現実だとわかる。





毎日、くよくよ、いらいらしていたことなんか、みんな大したことではない。
この場所で風に吹かれていると、そんなふうに思えてくる。

7時、山を下りるころには、雲海もはかなく消え始めた。
やがて、朝食を済ませて出発の時には、うそのように雲が晴れ、タワーの向こう、秋の空が広がっていた。
1週間前には名前すら知らなかったトマムで、運よく雲海を見て、素敵な朝のひとときを過ごせた。これからは、「トマム!! 最高!!」である。

アキアカネが飛び交っている。文句なしのドライブ日和だ。今日は、ここから北上して、富良野へ向かう。
〈続く〉
☆日本ブログ村のランキングに参加しています。

ぽちっとクリックしてください。
コメント
_ suzuking ― 2012/09/06 07:49
_ hitomi ― 2012/09/06 10:01
写真のチカラを大いに借りて、北海道の素晴らしさをお伝えしていきます。
忙しさに紛れて、感動を忘れてしまわないうちに。
_ 村上 好 ― 2014/11/29 16:06
トマムの雲海の写真、すばらしいです。
拡大写真ならもっといいでしょう。
現実は筆舌につくしがたいことでしょう。
ありがとうございます。
<まるで、山の女神たちが白いうすぎぬをまとって、音もなくゆったりと舞いを続けているかような、たおやかで幻想的な眺め……。>
胸がすくような、文句なしの名文。
「たおやかな」という言葉。いい言葉です。まだ私の語彙になっていません。語感の認識を図りたいと思います。
星野さんのホテルもよかったのではないでしょうか。
仲良し母娘の旅、最高でしょうね。
父娘、父息子の旅の話はききませんね。
次は富良野。たのしみです。
村上 好
_ hitomi ― 2014/12/23 13:54
拡大写真は、テンプレートを変えたら、写真が大きくなりすぎるのでやめました。
私が名文を書けるのではなく、絶景を前にすると、だれでも詩人になれるのではないでしょうか。書かされているのでしょう、きっと。
残念ながら、星野さんのホテルは、スキー宿として使われるようで、あまりよくはなかったです。朝食が美味しくなかったですね。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://hitomis-essay.asablo.jp/blog/2012/09/05/6565462/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
まさに平成の弥次喜多!
カーナビの画面にヒトが現れるなんて、初めて見ました。
そして、雲海には感動、実際に見たらどんなでしょうね。
行ってみたくなりました。
次回が楽しみです。
ひとみ母さん、お忙しいでしょうけれど、急いで更新お願いします!!