エッセイの書き方のコツ(12):敬語は控えめに2012年10月27日


前回の「敬語の話」を受けて、エッセイを書くときの敬語について考えてみましょう。

例えば、エッセイのなかの次の文。
Aさんは、傘を貸してくださった。
書き手にとっては、とても親切なAさんだから、思わず感謝と敬意を表したにちがいありません。あるいは目上の人だったのかもしれませんね。
Aさんは、傘を貸してくださった。ご自分は雨の中を走って帰られた。おやさしい方でいらっしゃった。
ここまで来ると、もやもやとした読みづらさを感じませんか。
敬語がくどいだけではありません。敬意という書き手の気持ちが、読み手に向いているのではなく、Aさんに向いているからです。読むうえでじゃまな情報なのです。
Aさんは、傘を貸してくれた。自分は雨の中を走って帰った。やさしい人だった。
これなら読みやすいですね。

ときどき、年配の生徒さんのエッセイに登場するのが、恩師のエピソード。
B先生も一緒に校歌を歌われたとき、目に涙を浮かべておいでだった。
一般に、年配の方ほど、敬語がなじんでいます。まして、先生のことを書くのに、敬語を使わずにはいられないのでしょう。いけないと決めつけるつもりはありません。
それでも、読み手がもやもやとしないために、工夫が必要になってきます。
せめて1か所だけにする。
軽く受身形の敬語にとどめる。
などなど、控えめにする方法はありそうですね。
B先生も一緒に校歌を歌ったとき、目に涙を浮かべておいでだった。
B先生も一緒に校歌を歌ったとき、目に涙を浮かべておられた。

文は人なり。文体からも、書き手の年齢や人となりが表れる。
それもまたエッセイのおもしろさですね。






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