自閉症児の母として(12):世界自閉症啓発デーによせて2013年04月02日

皆さん、いつも長男についてのエッセイをお読みくださり、自閉症に関心を持ってくださって、どうもありがとうございます。

 

毎年4月2日は、国連の定めた世界自閉症啓発デーです。
自閉症をはじめとする発達障害について、社会に知ってもらい、理解を広めていく。
そのことが、発達障害のある人のためだけでなく、誰もが幸せに暮らすことができる社会の実現につながるものと考えて、5年ほど前に制定されました。

 

とはいえ自閉症は、なかなかわかりにくいですね。 簡単に言うと……

 

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脳の発達の仕方の違いから、
「他の人の気持ちや感情を理解すること」
「言葉を適切に使うこと」
「新しいことを学習すること」
などが苦手であり、一般的な「常識」と思われることを身につけることも苦手です。
また、自閉症の人たちは、とても「純粋」で、自分の感じたままに話したり、行動したりすることがあり、感覚が過敏な人や記憶が抜群な人もいます。

 

自閉症者のなかには、会話が苦手な人が多くいます。
このため、その人の発達に応じたわかりやすい説明をお願いします。例えば、その人が理解している言葉を知り、その言葉を使うことや、写真や絵などを添えて説明する、抽象的な表現をさけて、短い表現で話すことなどで、理解しやすくなります。


 また、過敏で、人混みや大きな音、光といった刺激を苦手とする人が多くいます。
このような刺激による不快感を増幅させないよう安心できる環境を調整して作ってあげてください。

 

 新しい事や、いつもとやり方が違う時に、困って混乱することがあります。また、できない時、間違っていた時に叱って教えようとすると、本人が混乱して余計に理解できなくなったり、将来に悪影響を及ぼしたりすることもあります。
どうすればよいのか、正しい方法をできるだけ具体的に教えることを基本に、穏やかに根気よく接して、良い関係を作るようにしてください。

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以上は、世界自閉症啓発デーの公式サイトからお借りした文章の一部です。
わかりやすく書いてありますので、ご興味のある方はぜひ、のぞいてみてください。


 

3年ほど前に内閣府の政府インターネットテレビでも、「自閉症を知ってください」という番組を作りました。 9分足らずの動画で、わかりやすく説明しています。
じつは、息子の働く姿も登場します。
よろしければ、ご覧ください。


昨年4月2日のライトアップ。内閣府の写真をお借りしました。

 

また、イベントの一つとして、各地でブルーライトアップが行われます。
日本では、東京タワーをはじめ、横浜マリンタワー、通天閣、坂本竜馬像など約30カ所のランドマークがやさしく青い光に包まれるとのこと。
今夜はあいにくの雨模様ですが、もし、ライトアップが目に留まったら、自閉症に思いを寄せてくださいませんか。

 

そして、これからも、みなさんのあたたかいご理解とご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。


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ダイアリー・エッセイ:それぞれの春2013年04月03日


関東地方は暴風雨の朝。

次男は、夫と二人で大学の入学式に出かけた。
新生活のスタートが春の嵐とともに始まる。前途多難の前触れでないことを祈らずにはいられない。


 

長男は、もっか次の職場を求めて就活中。来週からクリーニング工場で実習をすることになった。
工場までの道順を覚えるため、この暴風雨の中、ひとりで出かけていく。
工場の最寄駅から35分も歩くのである。バス便はない。送迎バスは認可が下りなかったとか。息子は体力があるから、どんな天候でも通いとおせるだろう。
それにしても、障がい者の働く場所は、そういう環境にしかないのだろうか。
「お母さん、ぜいたくですよ」と言われるだろうか。


  二人の息子たち、それぞれの春。


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春のエッセイ:「桜の咲くころ」2013年04月05日



 桜が咲いて、かわいらしい新しい小学生が登校していく季節になると、いつも長男のときのことを思い出す。

 

3歳で自閉症の診断を受けた息子は、療育施設に4年間通ったあと、地元の小学校の普通学級に入ることにした。

入学式の翌日、息子の登校に、私もついていった。すると、学校に向かう道をわざとそれようとする。学校に着いても校門から入ろうとしない。挙句の果てに、しくしくと泣き始めてしまった。

新しい場所で、見知らぬ大勢の子どもたちがいて、彼には不安なのだ。

門の脇には桜の木が一本。はらはらと花びらが散る中で、ランドセルを背負ったまま寝そべって泣いている。なんと悲しい新入生なのだろう……。

なんとかなだめすかして、昇降口まで連れていき、クラス担任の三木先生に引き渡す。ベテランの先生は、気負いもなく、「心配いらないわ、お母さん!」と明るく言ってくれるのだった。

そんな日が1週間続いたある朝、息子は何の抵抗もなく校門を入り、昇降口に向かった。驚いていると、迎えに出てきた先生が種明かしをしてくれた。

「音楽室でアコーディオンを見せたら、目の色が変わったのよ」

どうやら、テレビで見たことのあるアコーディオンを実際に触らせてもらい、音を出してみたら、面白かったのだろう。その日からぴたりと、「学校には行かない」と口にしなくなった。それからしばらくのあいだ、音楽室に日参したらしい。

三木先生は、40人もの子どもたちを抱えながら、息子とも上手に関わってくれた。本当は大変だっただろうに、私にはそんなそぶりも見せなかった。

 

その後、息子は5年生のときにエレクトーンを習い始める。そして、26歳の今でも毎週レッスンに通っている。腕も上がり、レパートリーも増えた。

障がい者の息子が音楽の趣味を持てたのも、あのときの三木先生のおかげ……と今さらながら思っている。



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私の著書、楽天koboで読めます!2013年04月06日


昨年、再版して、電子本にもなった私のエッセイ集
『歌おうか、モト君。~自閉症児とともに歩む子育てエッセイ~』
メディア・サーカス発行

が、このたび、楽天koboイーブックストアでも販売されることになりました。
当サイトを開いて、【歌おうか、モト君】で検索してくださればOKです。

 

これまでどおり、Pubookでもお求めいただけます。

 

いずれも、お持ちの端末に合わせて無料アプリをご利用になれますので、ぜひご購読いただければ幸いです。 よろしくお願いいたします。

 

ちなみに私自身は、スマホも持っていません。
メールと電話は、従来の携帯電話で十分なので、小型のタブレット端末を買ってみようかと思っているところです。

今読んでいる宮部みゆき著『ソロモンの偽証』は重さが700g以上もある。しかも3冊に及ぶ長編小説! 出かけるときにバッグに入れるのは勇気がいるし、ベッドで読むときには、関節炎の痛む手で支え持つのも至難のわざ。
これが軽量のタブレットで読めたらいいのに、といつも考えるのです。

おススメやアドバイスがあったら、教えてくださいね。


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春のエッセイ:「八重桜の咲くころ」2013年04月18日


大阪造幣局の桜の通り抜けが始まったというニュースを聞いて、私も近所の八重桜の名所を訪ねてみようと思い立った。なんのことはない、3人の子どもたちが入れ替わり立ち代わり、13年間通った地元の小学校だ。
学校の正門を真ん中にして、両袖を広げるように植えられた八重桜の木々は、開花すると濃淡のピンク色が波打つようで、それはそれは美しい光景になる。やがて桜吹雪になり、ピンクのじゅうたんを敷きつめて、緑の木陰に変わっていくのだ。
わが家から歩いて15分とはいえ、駅とは反対方向で、わざわざ見にいくこともないまま、ここ何年か八重桜ともご無沙汰だった。

しかし、いそいそと出かけて行ったのに、今年の八重桜はとっくに盛りを過ぎていた。
子どもたちが通学したころと同じ真っ青な制帽をかぶった児童たちが、ピンクの花びらを踏んで、三々五々と下校する。
新学期が始まって2週間。新しい生活にも慣れてきたころだろうか。

新作小の八重桜



もう19年も前、最初の春のことは、今でも忘れることができない。
長男が入学して、最初のクラス懇談会。私はコチコチだった。
自己紹介の順番が回ってくる。立ち上がって準備しておいたとおりにしゃべった。
「うちの子は、自閉症という障がいを持っています。皆さんにご迷惑をおかけすると思いますが、どうぞよろしくお願いします……」
言い終わらないうちに、緊張のあまり、おいおいと泣き出してしまったのだ。
「今のお母さんの気持ち、みんなに伝わったね」
と、担任の先生が言うと、誰もがやさしい笑顔でうなずいてくれた。
その日から、私たち親子は、みんなのあたたかいまなざしに支えられてきた。
そして、卒業までずっと、普通学級で過ごすことができた。

19年も前には、私にも〈新米のお母さん〉のころがあったのだな……。
今でも、あの日のことを思い出すと、おいおいと泣けてくる。




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ダイアリー・エッセイ:心と体2013年04月22日

23日前から、新たな腰痛に悩まされている。
股関節がゆがんでいるらしい。以前は左が悪く、カイロプラクティックに通い、ようやく治ってきた矢先、今度は右だ。
手の関節炎もますますひどくなるし、顎関節まで痛んで、固いものは食べられない。
骨格年齢というものがあるとするなら、私のは80代ぐらいだろうか。

朝から痛かった。めざましテレビの占いも、いて座最下位だ……
それでも、今日はコーラスの練習日。腰にサロンパスを貼り、ペタンコの靴を履き、腰をさすりながら、車で出かけた。この座る姿勢というのも意外と痛む。

下手の横好きのコーラス。私にとっては、唯一の健康法といっても過言ではない。
おなかの底から思い切り声を出すことの心地よさといったら……!
今日はステージさながらの立ち練習だ。
もっか練習中なのは、「瑠璃色の地球」。あの松田聖子ちゃんの持ち歌が、感動的なコーラスバージョンに編曲されている。
ほかにも英語の歌や、聖母マリアの歌も歌って、2時間。気分のいい疲労感で、喉はガラガラ、おなかはペコペコになる。

とそのとき、うれしいハプニングが。
2014年新春、みなとみらい大ホールで歌う「第九」の大合唱に、お仲間が誘ってくれたのである。
いつか第九を歌いたい……コーラスを始めたときからの夢だった。
文字どおりの歓喜の歌だ!!


その後、青空の見えるお店で、気の合う友人たちとおしゃべりをしながら、サラダランチを食べ、コーヒーを飲み、夕飯の買い物をして帰宅。
気がつくと、腰痛は収まっていた。

心と体は、1本のロープの両端についているおもりのようなものだ。体が悪くなれば、心も引きずられて落ちてくるし、心がうきうきと浮上すれば、体もつられて軽くなる。
あたりまえのことを、あらためて実感した。
どちらもふわふわ雲の上だったら一番いいのだけどね。

そして、いて座最下位の日には、うれしいことが起きる。ジンクスを打ち立てよう。





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エッセイクラスin銀座、満員御礼!2013年04月26日

11月のエッセイサロン



お知らせしてまいりました528日(火)に銀座三越デンマーク・ザ・ロイヤルカフェで開催のエッセイクラスは、おかげさまで定員を超えるお申込みをいただきました。
どうもありがとうございます。
まだ1ヵ月前ですが、早くも締め切らせていただきます。

次回は、7月30日(水)に開催予定です。
ご参加ご希望の方は、お早めにご予約くださいますように。

お問い合わせ・お申し込みは、コメント欄にお書きいただくか(その場合は公開しません)、
または、hitomi3kawasaki@gmail.com まで。

~☆
 爽やかな朝の銀座で、エッセイをたしなみ、女性同士の語らいを楽しむ。
   そして、おいしいランチのひとときを、あなたもご一緒にいかがでしょうか。
   お待ちしております。






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エッセイの書き方のコツ(14):いつ書くの? 今でしょ!2013年04月29日

このタイトルで、ゼッタイ書きたかったんです。
 使うならやっぱり、今でしょ!

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エッセイは、内容にもよりますが、賞味期限があります。
ニュース性のある題材はとくに、“生もの“と呼ばれたりします。目まぐるしい現代社会のなかで、書くタイミングを逃したら、面白さも半減です。
例えば、川にアザラシが現れた話、パンダの赤ちゃんが死んだ話、スカイツリーが完成した話、レディー・ガガが来日した話……。
そんなこともあったわね、でもなぜ今ごろになって? と思われかねません。

季節限定というのもありますね。
雪の話題は冬に、桜の話題は春に。季節感は大事にしたいものです。
かき氷の話を冬に読むのは、ちょっとつらいかも。
焚火の話を夏に読んだら、ますます汗が吹き出しそうですね。

書き手にとっても、「今書く」ことは大切なはずです。
3人の子どもを育てた私は、それぞれの記憶がどの子のことだったか、あいまいになってしまっています。
おんぶが好きだったのはだれ? セロリが嫌いだったのは? 心配になるほどトイレが遠かったのは……?
でも、大丈夫。走り書きのように育児日記をつけていたので、きっと読み返せば答えが見つかるでしょう。
自閉症の長男についての本を書き上げることができたのも、育児日記のおかげなのです。

育児中のお母さん、かわいいわが子の日々の成長を、小さな出来事を、そして、ご自分の気持ちを、今、書き記しておいてくださいね。
写真では残せないものが、かならず残っていくはずです。




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エッセイの書き方のコツ(15):なぜ今ごろ書くの?2013年04月30日


前回の「いつ書くの? 今でしょ!」を受けて、その続きです。
今書くことが大事。それだけで終わったのでは、中途半端でしたね。
書き残せなかったこと、書き記さなかったことは、永久にエッセイにはならないことになってしまいます。もちろん、そんなことはありません。

思い出は、エッセイの大事な題材のはず。

過去のことをなぜ、今書くのか。その動機づけをはっきりさせておくことが必要です。

例えば、こんな思い出のエッセイ。

私は、公立中学校に入ると、母が制服を仕立ててくれた。
紺色の襟なしダブルの4つボタン。皆と同じスタイルのはずなのに、ちょっと気取って、 ウェストが絞ってある。学生かばんも、紺ではなく赤い色の軽い合成皮革のバッグ。
その少しおしゃれで、みんなと違うところが、なんとなく恥ずかしかった。


これだけでは、なぜ、今ごろそんなことを思い出して書くの、と思われてしまいますね。
次のような前置きをしてみます。

4月の新学期になると、家の前を真新しい制服を着た中学生が通っていく。
彼らを見るといつも、私の中学生の時のことを思い出す。

それから、最後にも、こう書き足します。

今では、洋服を買うとき、「よく売れていますよ」と店員に言われると、かえってほしくなくなってしまう。皆と違うものがいい。それは、あの制服を通して、母が私に教えてくれたおしゃれの仕方なのだ。いつの間にか染み込んでいたのである。

これで、過去のことを書く動機が伝わると思いますが、いかがですか。

現在に始まって

過去を振り返り

現在に戻って結ぶ
過去が現在に挟まれたサンドイッチのような構成は、作者の思い出語りが、自然な流れで読み手の心に届く効果があるようです。
一度お試しください。




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